秋華賞で悲願のGI制覇を達成したエアメサイア、府中牝馬Sを勝ったヤマニンアラバスタ、ともにエリザベス女王杯に向かうそうで、さらなるステップアップをめざす馬がはっきりいるのはうれしいことです。今年の秋はひとつひとつのGI戦にそれぞれのテーマが見えるレースが多く、とにかく充実しています。その話題の中心にいるのがディープインパクト。恐らく、これだけの盛り上がりはこれから先、しばらくはお目にかかることはないでしょう。
パートナーの武豊騎手は、1987年デビューですから来年が騎手生活20年目に入ります。この記念すべき年を迎えるにあたって、競馬史に残る金字塔を立てる、これこそ彼らしい姿ではありませんか。
かつて菊花賞で、単勝支持率83%を超える本命馬がいました。昭和38年のメイズイです。いささか古い話になりますが、ダービーで史上初めて2分30秒の壁を破った快速馬で、皐月賞、ダービーを連破した貴公子です。
絶対負ける筈がないと、それこそ衆目一致して3冠馬誕生のシーンを期待したのでしたが、その過信からか、オーバーペースになってしまい、6着と大敗してしまいました。
シンザンが3冠馬となった前年のことでした。ミスターシービー、シンボリルドルフ、そしてナリタブライアンと栄光のトリプルクラウン馬は生まれてきましたが、達成されてしまえばひとつの記録として、ごく当然の如く語られていることでも、そこまでに至らなかった名馬たちの、無念の物語も、こういうケースにはつきものです。
武豊騎手がいかなる心境なのか。誰しもが勝つことを当然視するケースで、どのように平常心を保とうとしていたのか、やがて、いろいろな場面で語られていくことになるのでしょう。歴史的瞬間に、私どもも自分なりの語れるものをつかみ、終生忘れることのない平成17年秋にしたいものです。