▲2016年の安田記念をロゴタイプで制した田辺騎手 (C)netkeiba.com
実際にそのGIを勝ったことのある騎手に、コースの特徴や攻略方法を教えていただく、GI恒例の「コース解説」企画。安田記念編に登場するのは、2016年にロゴタイプで鮮やかな逃げ切り勝ちを見せた田辺騎手です。緻密な戦略で勝利をものにした田辺騎手が明かす、東京芝1600mコースのポイントとは。
(取材・文=佐々木祥恵)
「1600の芝だから」と思い込み過ぎるのは良くない
――ロゴタイプで安田記念に優勝していますが、振り返ってみていかがですか?
田辺 田中剛先生からは行ってもいいと言われていましたけど、安田記念前までは逃げたことはありませんでした。あの時も、前めのポジションで競馬をしようと考えていたのですけど、周りが引いてくれたというのもありますね。
――翌年の安田記念も逃げて2着でしたね。
田辺 年齢も重ねてきて成績にもムラがあって、レースに行ってからマークが薄かったというのも良かったと思います。馬の状態も良くて、競馬的にはあわよくばでしたけども、前年に勝った時よりも勝ち時計が速かったですからね。
馬は一生懸命走っていましたが、前年とは相手が違いましたから。勝った時は運が味方して、負けた時はもう一歩足りなかったなと。この馬に関してはあまりコースは関係ないと思います。
▲直線に入り、後続との差をぐんぐん広げ… (撮影:下野雄規)
▲してやったりのGI奪取に、こぶしを高く掲げた田辺騎手 (撮影:下野雄規)
――東京のマイルの特徴はありますか?
田辺 安田記念は東京開催が始まって時間がたってからのレースですし、その時の天候で馬場状態が変わってくるので、東京1600m芝だからこれがいいというのはないですね。逆に僕らが「1600の芝だからこうしたい」と思い込み過ぎるのは、視野を狭くするのであまり良くないと思っています。
――確かに安田記念の頃は、季節的に雨も多くなって馬場も悪くなりますね。枠順はどうですか?
田辺 枠順も馬場状態によります。すごく悪くなってくると、当然ですけど内枠は引きたくないです。通りたくない場所からスタートするのは、いやですからね。揉まれたくない馬もいますし、ゲートに難がある馬は後入れの偶数がいいですし、馬それぞれなので枠順もここがいいというのははっきりとないと思います。
もっと言うと。ポジションを取りたくても取れないので、自分よりちょっと速い馬が外側にいるといやだなというのもありますね。
――ロゴタイプで勝った時には5枠6番で逃げましたが?
田辺 ロゴタイプの時はあまり深くは考えてはいませんでしたが、自分が主張した時に周りがどうするかなというのもありました。それも駆け引きですよね。
あの時はモーリスが圧倒的に人気になっていて、周りの馬の意識はそちらに行っていましたしね。僕がもしモーリスに乗ってハナに行ってたら、皆ガシガシ来たと思いますし、ロゴタイプはハナに行けたということが必ずしも勝因ではなかったと思います。
――東京の芝1600mの傾向はありますか?
田辺 逃げる馬、ペースを作る馬によって競馬が変わってきますよね。例えば1200m、1400mで前めのポジションで走っていた馬が、安田記念に出走するとペース自体が速くなったりもしますから。
今年もそうですけど、ここ数年時計がすごく速いんで、こんな速いペースについていったら無理だろうというのが勝ってしまったりするのでね。今年のヴィクトリアマイルも逃げ馬が勝ったわけではないですけど、それなりに残っているじゃないですか。かなりの高速馬場でこれまでの概念が覆されている感じです。
負けたのは馬場の影響かなと僕もよく思いますけど、皆同じところで走るわけなので、馬場のせいにはしたくないですよね。これからはこの馬場に対応できる馬を厩舎が作っていかなければいけないですし、乗る方もそれを考えて乗らなければいけないとそう思っています。