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【横山武史騎手】父・横山典弘騎手の代打 弱冠二十歳でのダービー挑戦を終えて

  • 2019年06月02日(日) 18時01分
今週のface

▲ダービーでリオンリオンに騎乗した横山武史騎手 (C)netkeiba.com


ロジャーバローズの優勝で幕を閉じた“令和”最初の日本ダービー。戦前に大きな注目を集めていたのはサートゥルナーリアをはじめとする“3強”の動向のほか、父・横山典弘(51)の騎乗停止により、青葉賞馬リオンリオン(牡3、松永幹)のバトンが回ってきた息子・横山武史(20)についての話題だった。弱冠二十歳のダービー挑戦。レースを迎えるまでの心境から、騎乗を終えての感想、そして今後へ向けて…。胸の内に迫った。

(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)


何ごとにも挑戦することが大好き


――リオンリオンの騎乗依頼があったのは、ダービーのちょうど1週前にあたる日曜日(19日)でした。最初に聞いた時はどんな気持ちでしたか?

横山武 新潟競馬場で聞いたのですが、驚きが半分、うれしさが半分でしたね。最初はもちろんビックリしましたけど、だんだんニヤケが止まらなくなって…(笑)。

――ニヤケですか(笑)。

横山武 はい。だってダービーですから。いくら乗りたいと思っても、なかなか乗ることのできないレースです。そんな大舞台に依頼を頂いたことが、本当にうれしかった。

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▲青葉賞を横山典弘騎手の手綱で勝利したリオンリオン (撮影:下野雄規)


――すごいですね…。自分だったらプレッシャーで真っ青になってしまいます。

横山武 う〜ん…。僕はあまりそういう感覚はないんですよ。何ごとにも挑戦することが大好き。逆にやらずに後悔することは好きではないんです。

――度胸があるんですね。競馬学校に入る前は乗馬をしていたと聞きましたが、他にスポーツなどはやっていたのですか?

横山武 いいえ。小6で乗馬を始めるまでは遊んでばかりでした(笑)。まあ遊びにおいても負けず嫌いではありましたけど。

――なるほど。ではそのメンタルの強さは、天性のものなんですね。

横山武 どうなんでしょう? ただ周りの人からはよく「物怖じしない性格だな」とは言われます。あとは「お前は悩みがなさそうでいいな」とか(笑)。

――アハハ。週中のトレセンでは「楽しみが8割、緊張が2割」とおっしゃっていましたが、レースが近づくにつれて、その心境に変化はありましたか?

横山武 ありました。自分の想像では、おそらくゲート裏ではさすがに緊張が増すんだろうなぁと思っていたんです。でも反対でした。楽しみがどんどん増して、逆に緊張は1割くらいまで減っていたように思います。

 馬に乗る時はいつでもそれくらいの緊張はするので、本当に普段通りというか…。油断したらニヤケた表情になってしまいそうだったので、そうならないように気をつけたくらい(笑)。ワクワクしていましたね。

――ワクワク…。サイヤ人みたいですね(笑)。

横山武 「オラ、ワクワクすっぞ」ですか(笑)。でも強がりでも何でもなくて、そんな気持ちでしたよ。

――ただ周りの空気は、いつもとまるで違ったでしょう? ジョッキー同士が全く会話をしなくなるとか、聞いたことがありますけど。

横山武 確かに全然違う雰囲気でしたね。でも僕はそういう場にいられることが何だかうれしかったです。パドックでも自分の名前を呼んで下さる方がいました。反応してはいけないのでリアクションはしませんでしたが、しっかり聞こえていましたし、やっぱりうれしかったです。

――大観衆の前で行った返し馬は?

横山武 普段通りにできたと思います。これは(松永幹夫)先生に志願して、週中に1度乗せてもらっていたのも大きかったですね。

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▲今年のダービーは11万人の大観衆が詰めかけた (撮影:下野雄規)


レースを見て、父・横山典弘騎手からの言葉


――そしてむかえたレース本番。まずは強気に先手を主張していきました。

横山武 自分の中では思い描いていた通りです。1〜2コーナーでリードを作りたいと考えていたので。

――レース前は「小細工なしで馬のリズムを生かしたい」と話していましたね。

横山武 はい。瞬発力勝負ではリオンリオン以上の馬もいると思ったので、粘りやしぶとさを生かすような競馬をしたいと思っていました。

――そのまま直線で先頭に向かいましたが、最後は15着でのゴールとなりました。

横山武 前半に体力を使ったぶん最後は脚がなくなってしまいました。

――改めてレースを振り返って、どのような思いがありますか。

横山武 色々な声があると思います。「あんなにガンガン飛ばして…」とか。でも自分の中では悔いの残らない競馬はできました。確かに向正面でもう少しペースを抑えられれば…とは思いますが、全体的には自分のやりたかったことはできたので。

――お父さん(横山典弘騎手)はレース後、何と言ってましたか? 戦前は最小限のアドバイスだけだったと聞きましたが。

横山武 まずは「レース内容は悪くなかった」と言って頂けました。ただその後は…。シークレットですけど、細かいところをボロカスに言われました(苦笑)。

――ボロカスですか(苦笑)。

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▲競馬学校時代の横山武史騎手(左)と横山典弘騎手(右) (C)netkeiba.com


横山武 ええ(笑)。しかしダービーに乗るチャンスを頂けなければ、そういう機会すらなかったので。何より本当に楽しかったです。

 もちろん馬券を買って下さったお客さんには申し訳ありませんし、負けて悔しい思いもあります。でもそれ以上にジョッキーとして、ああいう舞台で乗れたことが楽しかった。それこそ毎年…いや、毎日乗りたいくらいに(笑)。

――毎日はともかく(笑)、毎年のように乗るために必要だと思ったことはありますか?

横山武 もっともっと努力が必要だと思います。今回は松永幹夫先生が「ローカルで頑張っていた」と言って下さり、オーナーが「若い人に…」と言って下さって実現したダービー騎乗でしたが、決して自分の力で掴みとったとは思っていません。小倉や新潟のリーディングは、あくまで関係者の方々のおかげだと思っていますし…。

――そう言えば以前と違って、最近の武史ジョッキーは馬を追う姿勢が変わりましたね。ヨーロピアン風というか…。これも“努力”のひとつでしょうか。

横山武 はい。それで結果が出ているかは分かりませんが、馬を追う姿勢は試行錯誤しているところです。あとは道中の折り合いだったり…。まだ改善点はたくさんあって、不満だらけですけど。

 でもいずれ減量の特典が取れて、トップジョッキーの方々と同じ斤量になるわけですから、もっともっと技術を身につけたい。戦えるジョッキーになりたいと思ってます。

――まだまだ騎手人生は始まったばかりだと思いますが、今後の目標を聞かせてください。

横山武 目標を挙げればキリがありませんが、与えられたチャンスをしっかりモノにできるジョッキーになりたいですね。今回は大きなチャンスを頂いたにも関わらず、残念ながらモノにすることはできませんでした。

 でも地道に努力を続けていれば、また必ずチャンスはやってくると思うんです。レースの大小に関係なく、その後のターニングポイントとなるような“チャンス”が。そういう機会を逃さないように、しっかりモノにしていきたいですね。

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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