今年の宝塚記念はいつもと少し様相が違う。ファン投票で選ばれたものの、近年は事情によりレースを回避する傾向にあったが、今回は豪華メンバーが顔を揃えた。レイデオロ、アルアイン、スワーヴリチャード、キセキ、そしてリスグラシュー。いずれもGIを制した経歴を持つ5歳馬たち。
最近はアーモンドアイや、先日の安田記念でそのアーモンドアイを破ったインディチャンプ 、ダノンプレミアムらに代表されるように「最強世代」は4歳馬の呼び声が高い。だが5歳馬を侮ってはいけない。今回、春のグランプリ最終戦を席巻しているのは5歳馬なのだ。
(文:語楽ッケンローラー、netkeiba編集部)
上半期中央競馬を締めくくるサマーグランプリ宝塚記念のファン投票の最終結果は、回避した1位のアーモンドアイをのぞくと、2位レイデオロ、3位キセキ、4位アルアインと上位3頭はいずれも5歳馬たち。
復権をかけて挑む5歳世代の激突に注目が集まるが、果たして主役に躍り出るのはどの馬か。“最強世代”の逆襲を、過去のデータから読み解いていく。
過去10年間では5歳馬が6勝
まずは過去10年間の世代別優勝馬の馬齢はどうだったのか。
2014年から2018年まで、実は5歳馬が勝利している。
2013年のゴールドシップ、2012年のオルフェーヴル、2010年のナカヤマフェスタの4歳馬と、6歳馬で制した2011年のアーネストリーをのぞくと、頂点にはすべて5歳馬が立っている。
舞台となる阪神2,200mのコースは急坂などもあり、スタミナの消費を伴うため、牡馬が有利なのかもしれない。
過去の直接対決
では、実際に出走予定馬の過去の直接対決を見てみる。
◆第158回天皇賞・秋(2018年) 今回の該当馬で、もっとも多い“4強激突”が実現したのはこのレース。レイデオロ、キセキ、アルアイン、スワーヴリチャードが出走し、1番人気に支持されたのはスワーヴリチャードだった。
スタート直後、スワーヴリチャードはマカヒキと接触し出遅れた。先行争いはキセキが2コーナーのカーブで先頭に立ち、2馬身差でヴィブロスとアルアインが並んで追走。そしてステファノス、さらに2馬身差でミッキーロケット、レイデオロが続き、中団を形成した。
一番人気のスワーヴリチャードは、マカヒキらと後方集団で追走する展開に。
前半1000mの通過タイムは59秒4の平均ペース。先頭はキセキで2馬身ほどのリードをキープ。2番手を追走するのはアルアイン。レイデオロは4コーナー外から進出、後方集団のスワーヴリチャードとマカヒキは我慢の走りが続く。
残り400mを通過、アルアインが食い下がる。内からはヴィブロスも狙うが、差は縮まらない。スワーヴリチャードも追い出しにかかるが、反応が良くない。
残り200m。レイデオロが2番手に上がり、鋭く末脚を伸ばしてゴール手前で粘るキセキを差し切り先頭に立つと、そのままゴールに飛び込んだ。
この直接対決はC.ルメール騎手騎乗の2番人気レイデオロが制した。勝ちタイムは1分56秒8。2011年にトーセンジョーダンが記録した1分56秒1のレコードに次ぐ走破タイムだった。2着には4番人気のサングレーザー、3着には6番人気のキセキが入り、当時の4歳馬が上位を独占した。
一方、1番人気に支持されたスワーヴリチャードはスタート直後の他馬との接触で出遅れた影響で10着に敗れている。
◆第62回大阪杯(2018年) スワーヴリチャードとアルアインが対戦したこのレースは、ハイレベルな4歳馬(当時)が集結した。
皐月賞馬アルアインに、サトノダイヤモンド、ゴールドアクターのグランプリホース2頭、マイルチャンピオンシップを差し切り勝ちのペルシアンナイトといった面々。
実際、ハイレベルな一戦になった。スタートは互角。ヤマカツライデンが出て行き1コーナーへ。1馬身半差の2番手にダンビュライト。1馬身半差の3番手にスマートレイアー、半馬身差の外にウインブライト、サトノダイヤモンドと続き、アルアインは半馬身差。
スワーヴリチャードは後方2番手。前半1000メートル通過は61秒1のスローペース。依然として、スワーヴリチャードは後方待機。騎乗したM.デムーロ騎手の言葉を借りると、「スタートをゆっくり出て、ペースが落ち着いたら上がって行こうと考えていた」。
スワーヴリチャードは1000メートルあたりから進出を開始し、一気に先頭に並ぶ。アルアインも手が動き先団に、そのまま4コーナーをカーブした。スワーヴリチャードの反応は鋭く、しぶとく脚を伸ばす。2番手に追うアルアインも上がる。馬群から抜け出したペルシアンナイトと食い下がるアルアインを振り切りスワーヴリチャードが先頭でゴールした。
そのほかにも、優勝に絡んだ直接対決は下記のとおり。
・皐月賞(2017年)
アルアイン、レイデオロ、スワーヴリチャードが対決。9番人気のアルアインが勝利
・日本ダービー(2017年)
レイデオロ、スワーヴリチャード、アルアインが激突。2番人気のレイデオロが勝利
・菊花賞(2017年)
キセキとアルアインの対戦。1番人気のキセキが勝利
・大阪杯(2019年)
直近の直接対決はアルアイン、キセキのワンツーフィニッシュ
勝ち馬にみる有利な血統
過去10年の勝ち馬を血統面でみると、2014年ゴールドシップ以来勝っていないもののステイゴールド産駒が5勝と圧倒的。キングカメハメハ産駒の2勝、ディープインパクト産駒の1勝と続く。
今回名前を挙げた5頭の5歳馬に限ると、レイデオロがキングカメハメハ産駒。年齢を重ねるごとに真価を発揮し、パワー型の阪神競馬場は得意とみられる。
また、ディープインパクト産駒ではアルアイン。高速馬場は得意。本質はマイラーで、タフな芝コンディションで行われることが多い宝塚記念の相性は悪くない。ましてアルアインは阪神巧者、重馬場も苦にしない。ただ、古馬になると他の産駒に勝てなくなる傾向が気がかりではある。
いずれにせよ、血統面でも注目したい。
過去10年間の勝ち馬の前走は? そして人気馬の勝率は?
過去10年間の勝ち馬の前走は 天皇賞・春が5回と半分を占める。ほかは大阪杯 、目黒記念、鳴尾記念、金鯱賞、メトロポリタンSがそれぞれ1回ずつ。
今回では、大阪杯に出走し優勝したアルアインと2着のキセキが該当する。大阪杯に限ると、2017年のレースを制したサトノクラウン(大阪杯は6着)以来となるか。
過去10年間の人気馬を見てみると、1番人気が馬券に絡んだのは7回と最も多い。一方で、1番人気が1着になったのは2014年のゴールドシップと2012年のオルフェーヴルの2回のみ。むしろ8番人気や6番人気が勝っているケースが多く、今年の該当馬ではスワーヴリチャード辺りか。
今年の宝塚記念、“最強”5歳馬の行方に目が離せない。