人気にならなくても、リスクヘッジが効くのは…
赤本を作っているときに難しいのが、巻末リストのシルシ打ち。須田(社台グループ中心)、浅野(日高中心)、本誌(バランスを取る役割+世間の人気重視)と役割分担が決まっているので方向性は決まっているし、取材している時点で◎○▲はかなりの割合で決まってくる。問題は☆△で、これは他ライターの取材内容等のみを参考に打つこともあるし、それ以前にかなり限られた時間で打つことにもなる。
そのときにひとつ手がかりにしている(他の理由で打つシルシももちろんたくさんある)のが、コンスタントに産駒が走っている母を評価するということだ。産駒の1頭だけが劇的に走って他はいまひとつ+今年の2歳馬は走った馬の半兄弟というようなケースは本来だと警戒すべきなのだが、どうしても重いシルシがつきがち。一方で、上のほとんどが勝ち上がっているというような馬はさほど人気にならなくてもリスクヘッジが効いている。実際どれだけPOG上でポイント貢献するかはともかく、趣味的な△に向いていると思う。
現在入厩している、あるいは近日まで入っていた中から例を挙げてみよう。このイメージで△をつけてあった(ちなみに本誌も△)のが、23日の東京芝1600mでデビューを予定している(内田騎手)クローストゥミー(母マチカネチコウヨレ)。上に重賞勝ち馬が2頭いるだけでなく、勝ち上がりが7頭中6頭。重賞勝ち馬は2頭ともシンボリクリスエス産駒だが、配合だけで走っているわけではないことを意識しての△だった。
いったん出てしまったようだが、ロンギングフレンド(母シャルルヴォア)は、デビューした上3頭がすべて勝ち上がり。全兄が2勝している一方でまったく配合趣旨の異なるタートルボウル産駒の半兄も勝ち上がっているのでシルシを回した。
これを応用していって、「上のサンプル数・成功数」がもっと少ない母についてギャンブルすることもある。セコイア(母ミスベルツリー)は静内の産地馬体検査で見て好印象ということもあったが、上3頭のうち牝馬2頭が勝ち上がってセン馬になった兄だけ未勝利の2/3。本馬が牝馬ということでシルシを回した。函館に入っているようで、初戦からいけるかはともかく、先々も含めて期待している。
応用しすぎて、上が勝ち上がり1頭だけでもギャンブルすることさえある。先日美浦に戻ってきて早速時計を出したプントファイヤー(母プントバンコ)は上に1勝馬が1頭いるだけだが、勝つには勝っているということと、エピファネイア産駒には母方からスピード要素を補充したいという点から△を回した。なぜかエピファネイアの初年度産駒は母が中長距離タイプという馬が多く、その中で貴重な存在だったということもある。
こんな話は多分に作り手側の趣味的な話で多くの読者はマニアックな△馬に関心はないと思うのだが、やはり好きで2歳馬の本を作っている身としては、なんらかのこだわりを持ちつつ付けているわけである。そしてそのシルシの対象になった馬が勝ち上がると、それが500ポイント・700ポイントであったとしてもけっこう嬉しかったりもする。