▲2012年のキングジョージにディープブリランテで参戦 (撮影:山中博喜)
実際に勝ったことのある騎手や騎乗経験のある騎手に、コースの特徴を教えていただく、GI恒例の「コース解説」企画。今回は海外競馬編! シュヴァルグランが出走を予定しているキングジョージ6世&クイーンエリザベスについて、2012年にディープブリランテで参戦した岩田康誠騎手に解説いただきます。
このレースの舞台イギリスのアスコット競馬場は、日本では考えられない厳しい要素が随所にあると言います。高低差が約22mの難コース。経験者しか知りえない、このコースの真の姿とは!?
(取材・文=不破由妃子)
上って上ってまた上る…スタミナが奪われていくコース
──今月27日に行われるキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(アスコット競馬場、芝2390m)にシュヴァルグランが出走します。岩田さんは2012年にディープブリランテで参戦(8着)されていますが、まずはコースの印象を教えてください。
岩田 レースの前にコースを歩いてみたんですけど、フワフワした絨毯のような芝だなと。絨毯といっても整備された馬場じゃなくて、本当に自然のままですからね。コースの特徴についてはオリビエ(ペリエ)からいろいろ教えてもらったりしたんですけど、これはパワーが必要だなと思いましたね。
▲2012年のダービーを勝利、次なる戦いの舞台にキングジョージが選ばれた (撮影:下野雄規)
──しかも、高低差が約22m。日本の競馬場でいうと、急坂のある中山コースの高低差が約5.3mですから、その起伏の激しさたるや想像もつきません。しかも、2390mは一番標高の高い位置からスタートして、そこから700mも下りが続くとか。
岩田 そうそう、スタート後しばらくは下りなので、ジェットコースターみたいなコースだと聞いていたんですけど、実際に乗ってみた印象ではそこまでは感じなかったですね。それよりも、下ったあとの上りが…。上って上って、また上るみたいな(苦笑)。
──なるほど。700m下りが続くということは、当然そのぶん上るんですものね。
岩田 東京の直線もダラダラと上るけど、アスコットは下り切ってからゴールまでにあのダラダラが何段階もあって、直線でもう一度ボーン!やからね。「まだ上るん?」みたいな(笑)。上るたびにスタミナが奪われていくもんやから、最後はもうフラフラになってしまった。
▲「上るたびにスタミナが奪われていくもんやから、最後はもうフラフラに」(撮影:山中博喜)
──4コーナーまではいい感じで運んできたように見えましたが。
岩田 うん。でもそこからが全然。なんていうのか、馬の前脚がもう持ち上がらなくて。最後は脚がなくなっているデットーリの馬をちょっとかわすのが精一杯やった。向こうに着いてからの状態がすごく良かったから、なんかショックでしたね。
──矢作先生は、枠順的にも厳しかったとコメントされていましたね。やはり、内に入れられるかどうかもひとつのカギ?
岩田 そうですね。少しでもロスなく運びたいから。ただ、枠順よりも、やっぱりあのタフなコースが…。あのコースで結果を出せる馬ってどんな馬なんやろうと思ったりするけど、あのとき勝ったデインドリームなんかも小さい馬やしねぇ。やっぱり経験が必要なのかなぁと思ったり。
そう考えると、ハーツクライってすごかったんやなって思います(2006年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSでタイム差なしの3着)。もちろん、ディープブリランテも最後までよう頑張ってくれたんですけどね。2400mという距離以上にスタミナが要求されるあのコースは、ちょっと厳しかったかな。
▲「ディープブリランテも最後までよう頑張ってくれた」(撮影:山中博喜)
──今年参戦するシュヴァルグランの可能性についてはどう思われますか?
岩田 乗りやすそうやし、何しろスタミナがある。その点は大きいと思いますね。今話したように特殊なコースやけど、7歳で経験が豊富なぶん、チャンスはあるんじゃないかと思います。頑張ってほしいですね。
──岩田さんも、いつかリベンジしたいのでは?
岩田 そうですね。心が打ち砕かれましたから(苦笑)。凱旋門賞やキングジョージのコースは、やっぱりコースを熟知している人のほうが圧倒的に強い。経験を積むためにも、機会があればぜひまた挑戦したいですね。
▲「機会があればぜひまた挑戦したいです」と笑顔を見せた (撮影:山中博喜)
(文中敬称略)