背水の陣という思いだったのでしょうか、スイープトウショウは。宝塚記念で牡馬陣を一蹴し、秋の目標を天皇賞に置いたまでは当然の勢いの中のことと、ごく普通に見ていました。ところが、毎日王冠(6着)、天皇賞(5着)とスイープトウショウらしさが見られず、こういうケースの牝馬の巻き返しは少ないと、エリザベス女王杯ではやや軽視。3連覇を目指すアドマイヤグルーヴに至っては、更に気勢の上がらない成績で、到底上位に来ることすらムズカシイと見てしまっていました。
そう周囲が考える雰囲気を感じれば感じるほど、それをはねのけようとする思いは強いでしょう。牝馬同士ならいちばん強い、そういう信念はレースにあらわれるもので、スイープトウショウもアドマイヤグルーヴも、自分の戦い方をして、1、3着を占めました。2着のオースミハルカも自分の競馬に徹し切っていました。実績のある馬が、それに誇りを持ったときは、こんな風に走れるものかと改めて思い知らされたのですが、それにしてもスイープトウショウは、宝塚記念優勝が無駄にならず、これで今年の最優秀古牝馬のタイトルに、大きく近付くことができました。
さてこの次は、マイルCSにジャパンCと続きます。
この2つのGI戦は、現在の距離別レース体系にあってシンボリックな存在で、日本の競馬の方向付けに大きく貢献しているレースと言えます。
強い馬づくりを標榜して生まれたジャパンCは昭和56年から始まり、これを受けて更なる改革が必要と前進させた制度が、今のレース体系の整備された姿を生み、昭和59年からスタートしました。このとき、マイルCSは生まれました。秋のマイラーの目標ができたことで、タイキシャトルのような海外G1制覇を達成する名馬が輩出されたと言ってもいいでしょう。ビッグタイトルという目標は、馬を強くさせます。