いよいよ今週日曜日に迫った凱旋門賞。日本馬3頭&武豊騎手が世界最高峰の舞台に挑みます。
迎え撃つは女王エネイブル(牝5、英・J.ゴスデン厩舎)。史上初の凱旋門賞3連覇がかかっています。
これがラストランとも言われている最強牝馬のこれまでの軌跡を振り返ります。
Part1では、2連覇中の凱旋門賞(2017年、2018年)をレース映像、L.デットーリ騎手、J.ゴスデン調教師のコメントとともに振り返ります。
(文=Netkeiba海外競馬スタッフ)
凱旋門賞の出馬表はこちら! ※これらのレース映像について、netkeibaでは一切のご質問にお応えいたしかねますのでご了承ください。
2017年凱旋門賞(G1)
〜The birth of the queen〜
(10/1・シャンティイ芝2400m・18頭)
■レース分析 降りしきる雨による重たい馬場コンディション。A.オブライエン厩舎のアイダホ(7番)が先手をとり、断然人気エネイブル(17番)は早々2番手。すると外からオーダーオブセントジョージ(12番)が前に出て、僚馬アイダホとともに集団を先導。
仏ダービー馬ブラムト(14番)も内から進出。日本馬サトノノブレス(10番)も先団をキープ。
5頭出しとなったオブライエン勢の中でR.ムーア騎手騎乗のウィンター(18番)は、昨年のファウンド同様インコース中団に待機。その外にユリシーズ(4番)、サトノノブレス(10番)、チンギスシークレット(8番)が並ぶように中団を形成。
ゴドルフィン勢から唯一の参戦となったクロスオブスターズ(5番)は終始馬群の中。対照的にサトノダイヤモンド(9番)は、C.ルメール騎手が揉まれるのを避けるよう、終始外を追走。
18頭が一団のままレースは展開されていく。3コーナーに差し掛かるあたりから少しずつペースがあがり、チンギスシークレットが外から早目に進出。
直線を向き全頭がスパートする中、エネイブルは満を持して追い出されると、アイダホ、オーダーオブセントジョージを交わしてあっという間に先頭。エネイブルの真後ろを追走していたユリシーズ、その外からクロスオブスターズも迫るが、エネイブルはまるで違う脚色で突き放した。
エネイブルの脚色は全く衰えず、リードを保ったまま、2着クロスオブスターズに2.1/2馬身差の完勝。新女王誕生の瞬間だった。
日本から参戦のサトノダイヤモンドは15着に惨敗。重い馬場コンディションも合わなかった印象。
L.デットーリ騎手「彼女はスーパースター。レース前のプランはたくさんあったけれど自信を持って騎乗しました。彼女の走りを心からたたえたい」
J.ゴスデン調教師「エネイブルは真の女王です。フランキーが上手にレースを運んでくれました。今年は6か月間走り続けてくれました。馬の状態をよく見て、順調であれば新ロンシャンでの開催となるこの舞台にぜひ戻ってきたい」
2018年凱旋門賞(G1)
〜She has a deep potential〜
(10/7・パリロンシャン芝2400m・19頭)
■レース分析 前夜の雨が影響し、良馬場発表でも柔らかい馬場コンディション。内からネルソン(17番)、外からカプリ(3番)が先手を主張。
内の日本馬クリンチャー(9番)と並ぶようにエネイブル(10番)が追走。馬群と離れた位置にいたデフォー(1番)が外から先団にとりつき、エネイブルは馬群に囲まれる形に。
エネイブルの直後をパタスコイ(12番)が追走し、その外に仏ダービー馬スタディオブマン(14番)。その後ろの集団には、好スタートを決めたタリスマニック(7番)や、クロスオブスターズ(6番)などゴドルフィンの2騎が追走。
後方馬群の中にヴァルトガイスト(5番)、そして追加登録料を支払っての参戦となった愛オークス馬シーオブクラス(19番)は最後方。
フォルスストレートに差し掛かると、ネルソンがピッチを上げて馬群を引っ張り、内からクリンチャー・エネイブルが進出。直線を向き全頭がスパートする中、昨年同様エネイブル一頭が際立つ手応え。
残り400mを過ぎて、ようやくスパートを開始したエネイブル。直線を向いてカプリが一旦先頭に立つが、残り300mで早くもエネイブルが先頭に。
後続からは、馬群を突いたシーオブクラス、ヴァルトガイストがいい伸び脚を見せ、特にシーオブクラスは馬群をさばいて外に持ち出されてからの伸びが強烈。エネイブルを一完歩ごとに追い詰める。
残り100m付近でエネイブルの勢いが止まり、シーオブクラスが猛然と追い詰め、最後の最後で2頭が馬体を併せてフィニッシュ。
結局エネイブルが短クビ差でシーオブクラスを抑え、凱旋門賞連覇を達成。昨年とは異なり、2018年は不安の残る仕上がりだったが、絶対女王の底力で押し切った。
とはいえエネイブルをここまで追い詰めたシーオブクラスも、鞍上のコース取り含め称賛される走りを見せた。地元フランスのヴァルトガイストが3/4馬身差で3着。
クリンチャーは勝負どころで伸びを見せず、17着に終わった。
L.デットーリ騎手「自分にとっては30回目の凱旋門賞で、なれたものだと思うかもしれないが、すごく緊張した。みんなエネイブルが勝つところを見たがっていたのを感じたんだ。最後の50ヤードは私も馬も必死で、エネイブルには全力を振り絞ってもらった」
J.ゴスデン調教師「馬の実力のおかげだし、フランキーのレース運びも見事だった。2着の馬(シーオブクラス)はとても素晴らしく、最後は猛追された。今日のエネイブルはベストの状態ではなかったが、しっかり結果を残したし、精神的な強さと能力を非常によく示してくれた」