マジカルが引退繁殖入り 英チャンピオンSなどG1を4勝
初年度産駒は早ければ2023年にデビュー
11月2日にサンタアニタ競馬場で行われるG1ブリーダーズCフィリー&メアターフ(芝10F)に出走を予定していたエイダン・オブライエン厩舎のマジカル(牝4、父ガリレオ)が、28日(月曜日)朝の調教後に熱発を発症。オブライエン厩舎からブリーダーズCに出走する馬はこの日、カリフォルニアに向けて出発したが、そのグループに加わることなくバリードイルに残留したマジカルは、このまま引退することになった。
熱発が発覚したのは、馬たちがバリードイルを出発するわずか15分前だった。この結果、昨年7月から北米のこの路線でG1を6連勝中のシスターチャーリー(牝5、父マイボーイチャーリー)との「欧米女王対決」は、幻に終わることになった。
G1愛千ギニー(芝8F)、G1ナッソーS(芝9F197y)、G1サンチャリオットS(芝8F)という3つのG1を制したハーフウェイトゥヘヴン(その父ピヴォタル)の5番仔で、G1フィリーズマイル(芝8F)、G1オペラ賞(芝2000m)、G1ロッキンジS(芝8F)と、同じく3つのG1を制したロードデンドロンの全妹にあたるという、超良血馬がマジカルだ。
2歳7月にデビューし、2歳時は6戦し、G2デビュータントS(芝7F)を含む2勝。G1モイグレアスタッドS(芝7F)2着、G1マルセルブーサック賞(芝1600m)4着、G1フィリーズマイル(芝8F)4着というのは立派な成績だが、後の大活躍を考えると物足りないことも確かで、そういう意味では本格化するのに時間を要したタイプであったと言えよう。
3歳時も6戦し、2戦目となったG2キルボーイエステイトS(芝9F)で2度目の重賞制覇。その後、G1メイトロンS(芝8F)4着、G1凱旋門賞(芝2400m)10着の後、G1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ(芝11F211y)を制し、待望のG1初制覇を果たしている。
その後、G1ブリーダーズCターフ(芝12F)に挑み、並み居る牡馬たちを蹴散らしたものの、エネイブルには3/4馬身及ばず、2着に敗れている。
対エネイブルという観点から見ると、凱旋門賞に続く連敗で、4歳時も直接対決の機会は3回あったものの、ついに一度も先着を果たすことは出来なかった。すなわち、生まれた時代が悪かったわけだが、しかし、エネイブルの陰に隠れたとはいえ、4歳時にマジカルが残した戦績は見事なものだった。
陣営は、牝馬同士の戦いなどハナから眼中になく、緒戦となったのがナースのG3アレッジドS(芝10F)で、前年のG1愛セントレジャー(芝14F)勝ち馬フラッグオブオナーに4.1/2馬身差をつける完勝。これを皮切りに重賞3連勝を果たしたが、2着はいずれもフラッグオブオナーで、ことに3連勝目となったG1タタソールズゴールドC(芝10F110y)では、2着フラッグオブオナーに7馬身の差をつける圧巻の競馬を見せている。
以降は、欧州10-12F路線の王道を歩み、ロイヤルアスコットのG1プリンスオブウェールズS(芝9F212y)が、クリスタルオーシャンの2着。G1エクリプスS(芝9F209y)が、エネイブルの2着。G1ヨークシャーオークス(芝11F188y)も、エネイブルの2着と、3連敗を喫した。逆に言えば、この3戦を通じて、現時点でワールドランキングの首位を分け合っているエネイブルとクリスタルオーシャン以外には負けていないという事実が、この馬が持つ極めて高い能力を実証している。そして、この2頭がいなかったG1愛チャンピオンS(芝10F)を楽勝したのは、当然の帰結と言えよう。
展開も馬場も向かなかったG1凱旋門賞こそ5着と崩れたが、マジカルの真骨頂が発揮されたのがG1英チャンピオンS(芝9F212y)で、消耗戦となった凱旋門賞から中1週というきついローテーションを克服して、アデイブ、ディアドラらを退けて優勝。通算4度目のG1制覇を果たした。
繁殖入りするマジカルの初年度の交配相手は、クールモア所有馬としてG1ジュライC(芝6F)を制したテンソヴリンズ(牡3)らを送り出している、ノーネイネヴァー(その父スキャットダディ)になる予定だ。ミスタープロスペクターとノーザンダンサーのインブリードを、何本も折り重なって持つことになるこの産駒は、早ければ2023年にデビューの運びとなる。