他の南関東の競馬場に比べて箱自体は小さいが、そのぶん馬場もパドックも、人と馬の距離が近いのが浦和の魅力だ。
史上初となる浦和競馬場でのJBC。浦和、船橋を主戦場とする場立ち(競馬場公認の予想屋)であり、netkeiba人気予想家のテイク氏は「浦和は馬券的に面白いコース」と豪語する。難解と呼び声高い浦和コースで、どのように予想を組み立てれば良いのだろうか? 浦和での予想歴20年というテイク氏に「浦和競馬場の距離別攻略法」について尋ねた。(取材・文=緒方きしん)
1400m戦と2000m戦、それぞれ見るべきポイントが異なるのが「浦和」の難しさ
コーナーの厳しい浦和競馬場では当日の馬場傾向、レース展開次第によって終始外を回された馬が苦戦することが少なくない。そのため必然的にポジション争いが激しくなるが、ポジション奪取のポイントは距離・条件によって変化するのだという。
「とくに先行馬にいえるのですが、1400m戦の場合、求められるのはスタートの速さです。さらにいえば1歩目、2歩目の速い馬。押してジワッと好位にいくタイプの馬の場合、馬場や展開などで苦戦するケースも目立ちます。ですから、ゲートが開いた瞬間にダッシュできる馬かどうかを、事前に映像でチェックしておく必要があるでしょう」
さらにコーナーに差し掛かってからもポジション争いが続く場合もあるため、繊細さのある馬や不器用さのある馬は不利になりやすい。500キロを超える大型馬であれば、窮屈な競馬になることもある。このように、1400m戦は“馬に求められる要素”が非常に多い。
一方、距離が延長された2000m戦になると、別の要素が浮上する。
「浦和の2000m戦はスローになることが多いです。ペースを見て、必要とあらば積極的に前を捕まえにいける判断のできる騎手でないと、強い馬でも取りこぼしてしまうことがあります。ひとつのミスが命取りになるコースですから、一瞬たりとも目が離せないレース展開になりますね。そういう意味で、浦和競馬場での騎乗経験が少ない騎手は非常に危険です」
短距離戦に比べて順当な結果になることが多い中距離戦だが、騎乗によっては浦和の落とし穴にハマってしまうことも少なくない。では、浦和での経験が豊富な騎手は、どこで差がつく騎乗をするのだろうか?
施行距離によって着眼点が異なることが、浦和コースにおける予想を難しくしている。
内枠先行馬狙いだけで勝てる時代は終わった! 浦和競馬場における馬場傾向の現在
「浦和競馬場=内枠・先行・前残り」というイメージを持っている馬券ファンは多いだろう。しかし、そうした傾向は「平成に入って植え付けられたものだ」と話す。実際、それ以前の浦和コースは「差しに加え、3〜4コーナーからのマクリも決まりやすいコースだった」そうだ。
「平成以降、前が有利の馬場傾向に変化し、長らくその傾向が続いてきたのですが、ここ最近でまた傾向が変わりつつあります。とくに台風に見舞われた先月などは顕著でしたが、令和の現在、浦和競馬場の馬場傾向は“日替わり”と考えるべきだと思います」
前が残りやすい日、後ろから差しが決まりやすい日。道中、イン追走がいい日、外目を追走するのがいい日。今の浦和競馬場は、その日によって馬場傾向がガラリと変わるようになった。だからこそ、前半のレース傾向をしっかり観察し把握することが、浦和攻略のカギを握る。
「馬券を買うファンもそうですが、ジョッキーも傾向を読めないとレースの組み立てが大変です。浦和で乗り慣れているクレバーな騎手は、その日の傾向にすぐ適応できるため後半のレースで好成績を出すことが多い一方で、逆のパターンも見られます。当日の前半のレースで、馬場傾向を確認するのがベストですね」
氏の印象に残っているのは、南関トップ騎手たちが口にした「好きな競馬場は、浦和」という言葉。その言葉の裏には「少し物足りない馬でも、経験と腕でカバーして勝たせられる競馬場」という、浦和競馬場のスリリングな魅力がある。
「浦和でのJBCは、いつも以上に地方勢にチャンスのあるJBCになるかもしれません。とくに1400m戦は枠順次第では面白そうです。今までにないJBC、浦和でしか見られないJBCを楽しんでいただけたらと思います!」
JBC当日はこの場内が、全国から集まってくる競馬ファンで埋め尽くされることを期待したい。
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