春、秋と大レースでエース級の活躍を期待
11着に沈んだ凱旋門賞から約3カ月半ぶり。立て直しを図った5歳ブラストワンピース(父ハービンジャー)が、期待に応え力強く再起戦を飾った。
ただ1頭だけのGIホース(18年有馬記念)であることを考えれば、今回の相手では当然の結果ともいえるが、最後は止めていたとはいえ凱旋門賞を大差(5秒以上)の11着惨敗に終わったあとの一戦。この復帰戦を、また新たなチャンピオンロードを歩むために「順当に勝ち切った」ところに価値がある。
復調途上だった昨年の有馬記念を回避している。出直しの今回も中間の太め残りをささやかれていた。馬体重は546キロ。たくましく映っただけで仕上がりに不安はなかったにしても、ここが目標のGIではないから、必ずしも完調といえる状態ではなかった。快勝したのは底力の差だろう。
レースの流れは「62秒4-(12秒0)-60秒6」=2分15秒0(レース上がり36秒7)。きわめてタフな芝コンディションだったので、数字の印象ほどスローではない。ごく自然に好位4、5番手の外でスムーズに流れに乗ったのが好判断だった。
4コーナー手前でマイネルフロストが競走中止となる故障に見舞われたときブラストワンピースも接触しかかったが、余力ある手応えで外に進路を取りかけていたので、小さな進路変更だけで済んだ。道中の位置取りも万全なら、勝負どころのコース選択もベストだった。
大きな期待の中で凱旋門賞に挑戦し、打ちのめされるような結果に終わり、完全に立ち直ってGIを制した馬は思われるより少ない。近年では15年の天皇賞(春)を制したゴールドシップ、10年の有馬記念、11年のドバイWCを勝ったヴィクトワールピサが該当するくらいにとどまる。
自信を取り戻した5歳ブラストワンピースはまだ12戦【7-0-0-5】。春のビッグレースはもちろん、秋の大レースでもエース格の1頭として大活躍してくれるだろう。GIのタイトル1つだけでは周囲より、馬自身が物足りないはずだ。

凱旋門賞での敗戦から立ち直ったブラストワンピース(撮影:下野雄規)
2着した5歳ステイフーリッシュ(父ステイゴールド)は、勝ち馬とはキャラクターをまったく逆にしたような成績で、これで新馬勝ち以降、すべて重賞に挑戦し【1-4-4-7】となってしまった。今回のように巧みに先行しても、差す形を取っても勝ち切れないが、父は6歳春に覚醒するまで、もっと詰めが甘く【3-12-8-14】だった。ステイゴールドの事実上の最終世代らしく、本当に良くなるのはこれからかもしれない。
4コーナー手前で競走中止の9歳マイネルフロスト(父ブラックタイド)は、かわいそうなことに右第一指関節脱臼だった。前残りがありそうな流れを読んだ鞍上の絶妙なスパートで、好走パターンに入ったかと思えたが、こういうアクシデントだけは残念でも避けることができない。ブラストワンピースと同じように3歳春の毎日杯を制し、日本ダービーでも少差3着。ファンの多い馬だった。記録だけでなく、長く記憶に残るだろう。
そのマイネルフロストの故障が大きく影響したのは、3着ラストドラフト(父ノヴェリスト)と、4着ミッキースワロー(父トーセンホマレボシ)。あの不利(ロス)がなければ…となるのはやむを得ないが、斜行などではなく、あれはライバルのレース中の予測不可能な脚部故障のアクシデント。1番かわいそうなのはマイネルフロストであり、転倒はしなかったので、幸いラストドラフトにも、ミッキースワローにも脚部不安などは生じなかった。
ラストドラフトは非力な死角が解消し、外に大きく振られながらも上がり36秒3。通ったコースを考えれば勝ち馬の36秒1と互角の末脚を発揮した。馬体もデビューして以降、初めて460キロ台になっている。4歳になっての成長をたしかなものにした。
パドックでは最初のうちちょっと元気がないように映ったミッキースワローも、有利とはいえない芝コンディションのなか、最後まで懸命に伸びていた。これから春シーズンになって調子を上げてくるだろう。
単騎逃げに持ち込めたスティッフェリオ(父ステイゴールド)は、こういう芝コンディションは合っていると考えられたが、最近は休み明けで3連勝しているように、天皇賞(秋)→有馬記念→のローテーションはこの馬にはきつかったかもしれない。