今年は一段と一流馬が揃った印象を受ける種牡馬展示会
2月の初旬から、北海道内の各スタリオンで行われる種牡馬展示会。レイデオロやブリックスアンドモルタル、ロジャーバローズにカリフォルニアクローム(種牡馬展示会は欠場)といった、今シーズンからスタッド入りした新種牡馬のお披露目も兼ねていることもあってか、連日のように多くの生産関係者が集まっただけでなく、スポーツ紙やグリーンチャンネルといった取材陣も数多く駆けつけていた。
その際、顔を合わせた生産者の方からよく言われるのは、「今年はどの種牡馬がいいと思う?」と、「今年、産駒がデビューする種牡馬で何かいい情報入っていない?」との言葉。
今年の新種牡馬は輸入種牡馬が6頭もスタッドインしただけでなく、日本で競馬をした馬たちも競走成績、血統共に一流馬が揃った印象を受ける。改めて昨年に亡くなった「ポストディープインパクト」、そして「ポストキングカメハメハ」争いがこの瞬間から始まっているのを感じずにはいられない。
一方、その争いの前に初年度産駒をデビューさせるとも言えそうな、現2歳世代がデビューを迎える種牡馬の産駒たち。3年前の種牡馬展示会で姿を見た種牡馬たちだが、一昨年の当歳セリ、そして昨年の1歳セリと産駒を送り出しているだけでなく、より種牡馬らしい風格と逞しさを増した馬体を見る度に、生産界の時間は実際の時間よりも早く動いていることを実感する。
今年、デビューする新種牡馬情報だが、まだ2歳馬の取材が本格的には始まっていないので、話しかけてきた生産者の方に対して、こちらから逆に、「どれがいいですかねえ?」と質問を向けて見たところ、「社台スタリオンで繋養されているドゥラメンテとモーリスは間違いなさそうだけど、日高の繋養馬ではアジアエクスプレスが面白そうだよ」との言葉が返ってきた。
近年のフレッシュサイアーだが、上位にランキングする種牡馬は種付け頭数からも一目瞭然である。ちなみにドゥラメンテは284頭で、モーリスは265頭。その上、社台グループの名牝が数多く配合されていることからしても、今年のフレッシュサイアー争いはこの2頭の争いと見てもいいだろう。
一方、昨年のフレッシュサイアーだが、2歳戦の動き出しの良さで注目を集めた種牡馬にリアルインパクトがいる。自身も2歳時から重賞戦線を沸かす活躍を見せ、次の年にはグレード制が施行されてから、3歳馬としては初めて安田記念を優勝。ディープインパクトらしい仕上がりの良さとスピード能力の高さを証明しただけでなく、古馬となってからもオーストラリアのGIジョージライダーSを制するなど、息の長い活躍を見せた。
生産者の方の話にも出たアジアエクスプレスだが、種牡馬入り初年度の種付け頭数は175頭。この数字は日高地区のスタリオンで繋養されたこの年の新種牡馬では、リオンディーズの191頭に続く人気でもあった。
やはり、生産界が評価したのは朝日杯FS勝利にも証明された仕上がりの良さであり、そして芝、ダートを問わない競走成績。何よりもサンデーサイレンスやキングカメハメハを持たない血統背景が、配合のしやすさに繋がった感もある。
その上、父のヘニーヒューズよりも低く設定された種付け料も、人気の後押しとなった。次の年に誕生した初年度産駒の評価も高く、2シーズン目には前年を上回る205頭の繁殖牝馬を集めて見せた。これはその年の日高地区で繋養される種牡馬では最多の数字となる。
アジアエクスプレスを推してくれた生産者の方は、「見た目の良さ通りというのか、しっかりしている馬も多いし、順調に調整されているとも聞いている。距離はそれほど長くは無いと思うけど、ダートなら確実だろうし、配合によっては芝でもやれる馬が出てきてもいいよね」と話す。
2歳戦で確実に勝ち上がってくれそうなだけでなく、3歳以降はダートで堅実にレースをしてくれそうなアジアエクスプレスの産駒は、生産界では安心して配合できるだけで無く、POGにおいても安心して指名できる存在となっていきそうだ。
また、種牡馬入りする産駒が増えてくるにつれて、激しさを増してきた感もある「ポストディープインパクト」争いだが、今年、初年度産駒を送り出す種牡馬ではエイシンヒカリとミッキーアイルに注目したい。2頭共にディープインパクト産駒のGI勝ち馬だが、リアルインパクト産駒の活躍からしても、スピード色の強いディープインパクトの後継種牡馬は、産駒に伝えていくスピードも確実に伝わっていく印象を受ける。
特にエイシンヒカリは、当時のワールドベストレースホースランキングにおいて、世界1位となる129ポンドの評価が与えられた程の競走馬。繋養初年度の種付け頭数は86頭と決して多くは無いものの、その中に父のようなスーパーホースがいるようなしてならない。