前走で示した母系由来の抜群のダート適性
モズアスコット(父Frankelフランケル)のように初ダートで古馬重賞を制するのは至難の快走。フェブラリーS(フェブラリーH当時を含む)では、1991年ナリタハヤブサ、2005年メイショウボーラーが該当するが、この2頭、初ダートの古馬重賞を勝ったあと、たちまちフェブラリーSをレコードで勝っている。
チャンピオンズC(旧ジャパンCダート)では、初ダートの武蔵野Sを楽勝したクロフネが、やっぱりGIを大レコードで独走した。
モズアスコットの根岸Sの1分22秒7は、一見目立たないが、良馬場ではレース史上最速であり、58キロ、出負けのロスがありながら、最後11秒7(推定)で楽にまとめた。1600mに換算すると1分34秒5に相当する。安田記念を制しているのでそう無理な換算でもない。
種牡馬フランケルは英の芝で14戦不敗(うち12勝が8ハロン以下)のマイラータイプだった。産駒は芝のビッグレースを狙った配合が大半なので目立たないが、母方の特徴を前面に出す傾向がありそうに思える。
現6歳ソウルスターリングは、桜花賞は負けながら、オークスを勝った。その母スタセリタの仏GIヴェルメイユ賞(2400m)など全10勝中8勝は2000m以上だった。
モズアスコットは米国産。母India(インディア)の6勝はもちろんダート中心。その父ヘネシー(Storm Cat直仔)は、日本では2007年のフェブラリーSを制したサンライズバッカスの父であり、2016年の勝ち馬モーニンの父方祖父でもある。
モズアスコットの3代母の父は、大種牡馬Nijinsky。ニジンスキー直仔の輸入種牡馬群はダート向きで、1996年ホクトベガ、1999年メイセイオペラ、そして前出ナリタハヤブサなど、1990年代を中心にフェブラリーS(H当時を含む)を実に6勝もしている。
さらに、北米のダート中心に9勝したGraustark(グロウスターク)産駒の4代母Java Moon(ジャワムーン)は、高いダート適性を誇った名種牡馬ブライアンズタイムの母の、全姉にあたる。モズアスコットの抜群のダート適性は、母方の長所そのものと考えられる。
根岸Sのモズアスコットの中身は、「前半800m48秒0-上がり34秒7」=1分22秒7。先行したコパノキッキングが2着に粘ったように先行馬つぶれのハイペースではなかった。
ワイドファラオ、あるいはインティ(昨年の逃げ切りは前半1000m通過60秒2のスロー)などの先行では、そう速い流れにならない可能性もあるが、根岸Sが示すようにモズアスコットは先行タイプの崩れに乗じて差す馬ではない。展開不問だろう。芝スタートで、芝の部分を内枠のライバルより(もまれずに)長く走れる外枠12番は有利だ。
妙味ある相手は、3走前の武蔵野Sの1分34秒6が光るワンダーリーデル、東京のダート【5-1-0-0】のアルクトス。そして、上昇著しい公営のモジアナフレイバー。