タイトル奪取間近を感じさせた迫力あるストライド
人気に応えて4歳ダノンキングリー(父ディープインパクト)が快勝。古馬の芝1800mの重要なレースは、秋の「毎日王冠」、そして春の「中山記念」がGIに匹敵の双璧の重賞として高い評価を受けるが、ダノンキングリーは2019年の毎日王冠に続いて中山記念を快勝し、3歳春の共同通信杯と合わせ、重要な1800m重賞【3-0-0-0】となった。
数ある重賞レースのなかではきわめて珍しいことに、関東の所属馬が2015年のヌーヴォレコルトから6年連続の勝利。また、ベテラン横山典弘騎手は1995年から「26年連続JRA重賞勝利」を記録すると同時に、中山記念は5回目の制覇【5-5-1-12】となり、単独トップの最多勝利ジョッキーとなった。
陣営は、4月5日の「GI大阪杯(阪神2000m)」への出走を予定している。ここまでGIは3戦【0-1-1-1】にとどまるが、今回は自身の最高馬体重458キロ以上に大きくみせ、ストライドにも迫力が加わっていた。皐月賞3着(微差1分58秒1)の内容から、そろそろビッグタイトルに手が届くことだろう。

1800m重賞3戦3勝となったダノンキングリー(撮影:下野雄規)
伏兵マルターズアポジー(父ゴスホークケン)が単騎で飛ばしたペースは、「前半47秒8→59秒3」。離れた2番手がソウルスターリング(父Frankel)。1コーナーでサッと3番手のインを確保したダノンキングリーは、先行馬のペース(1400m通過は1分22秒9)を測りつつ、後続のラッキーライラック(父オルフェーヴル)以下の追い上げを待っていたようにスパート。皐月賞でも、日本ダービーでもそうだったが、自分から動いて出られる自在性が最大の強み。阪神内回り2000mの大阪杯は合うだろう。
2番人気のラッキーライラックは、終始ダノンキングリーをマークする理想的な位置取り。3コーナー過ぎからの動きがもう一歩だったが、最後までしっかり脚を使っている。余裕残しの身体つきということはなく、勝負どころで多少もたつくのは快勝したエリザベス女王杯も、2着した香港ヴァーズも同じ。エンジンがかかると確実に伸びる。もう本物のGIホースであり、こちらも次走は大阪杯か。チャンスはある。
2戦連続して取り消し後のソウルスターリングは、人気もなく、引退予定のレース。気楽な立場というのも変だが、プレッシャーのないレースだった。ムリせず流れに乗って先行し、動きが思わしくないなら必死に追う状況でもない。ポツンと離れた2番手。後方も離れている。
こんな気分のいいレースは初めてだったかもしれない。マルターズアポジーを捕まえにいった1400m通過は1分23秒0前後。GI馬が失速するペースではない。これで1800m【2-0-2-2】となった。春の繁殖シーズン前に引退するクラブ所属の牝馬だが、5歳の昨年は1戦したのみ、今春もまだ1戦だけ。もし元気いっぱいなら、中山牝馬S(3月14日)への出走はありえる。
4着インディチャンプ(父ステイゴールド)は、巧みにインを衝いての追撃から、残り1ハロンのあたりでは2着に上がるのはこの馬と思えた。だが、初コースの中山での58キロが応えたのか、ゴール寸前に伸びが止まってしまった。
11月のマイルチャンピオンSではダノンキングリーを完封しているが、負担重量差があったとはいえ1800mの毎日王冠、中山記念では逆にダノンキングリーに完敗となった。確かに自身の1800mは【0-0-2-1】とはいえ、わずか200mの違いが明暗を分けるような、そんな微妙な力関係の2頭とは思えないのだが…。インディチャンプはこれで昨年と同じローテーション「マイラーズC→連覇のかかる安田記念」になるだろう。
気配の良さが目立ったペルシアンナイト(父ハービンジャー)は、出足が良くなく、後方追走になったのが痛い。レースの後半は速く「47秒0-35秒3」、抜け出したダノンキングリー、ラッキーライラックの上がり3ハロンはともに「34秒2」。
ペルシアンナイトのそれは34秒0ではあるが、あの位置からのロングスパートで中山1800mを勝ち負けは、今回の相手ではさすがにムリ。追いすがった地点で失速した。皐月賞のようなレースをしたかったが…。
ウインブライト(父ステイゴールド)は、未勝利戦こそ休養明けで勝ったが、それ以降の休み明けはコンビの松岡正海騎手でも「10、10、9」着。今回は12月8日以来で休養明けに近かった。仕上がってはいたが、ウインブライト自身が本気モードではないのだろう。この後の遠征予定の海外で一変したい。