▲小牧騎手が感じた、お客さんのいない競馬場での変化とは!?
新型コロナウイルスの影響により、ここ2週は無観客で施行されている中央競馬。はたしていつも通りに戦っているジョッキーたちのモチベーションが気になるところですが、小牧騎手いわく「めっちゃ違う」と感じるところがあるようで…。小牧騎手が感じた、お客さんのいない競馬場での変化とは!?(取材・文:不破由妃子)
お客さんがいない競馬場は寂しいけど、いつも通り必死やで!
──ここ2週、ジョッキーのみなさんは無観客のなかで普段通りに戦ってらっしゃるわけですが、やはり違和感のようなものがありますか?
小牧 まずは、当たり前やけど静かやねぇ。とにかく静か。とくに感じるのはパドックやね。誰もいないからか馬も気が立つようなところがなくて、すごくおとなしい。そのあたりの違いはめっちゃ感じるね。
──レース中も、蹄の音、鞭の音、ほかのジョッキーの息遣いなどがよく聞こえるのでは?
小牧 そうなんやろうけど、僕自身はあまり気にならない。レースに関しては、全然いつもと一緒です。
──ラデツキーに騎乗した3月1日の中京10R・茶臼山高原特別(4歳上1勝クラス・芝2200m)では、勝ち馬からハナ、アタマ差の3着。横一線でのゴールで、普段なら歓声が上がるところですが、観客の声が一切聞こえないというのはやはり寂しいものがありますか?
小牧 いや、普段から乗っているときはあんまり意識したことがないから。確かにお客さんがいない競馬場は寂しいものがあるけど、みんなテレビの前で応援してくれているはずやと思いながら乗ってます。お客さんが目の前にいなくても、いつも通り必死やで。みんな一生懸命や。
──それは十分に伝わっています。それにしても、ラデツキーは初芝で見せ場十分でしたね。逃げ切ったかと思いました。
小牧 ねぇ、あそこまでいったら勝ちたかった。これまでダートでは何度も乗せてもらってきた馬やけど、走りが全然違ったわ。芝のほうがよかった。ただ、次も中京を使うって言うてたから、タイミング的に乗れんかもしれなくて。ひとつ乗れんのは本当に残念やけど、戻ってきたらまた頑張りたいね。
──では、質問をひとつ。「小牧騎手がヤングジョッキーズシリーズ(ヤングジョッキーズワールドチャンピオンシップ)で中山に乗りに来た際、競馬場で観戦していた古くからの競馬ファンです。優勝はデットーリでしたが、小牧騎手も3着にきたレースがあったような…。中央初参戦だったかと思いますが、どんな思い出がありますか?」
小牧 1993年やから、古い話やねぇ(苦笑)。あのときは、なんせうれしかった。園田とはお客さんの数が全然違ってね。芝のレースはあのときに初めて乗ったんやけど、オーバーシードじゃない時代やから、思った以上にボコボコで。「芝でこんなにボコボコなんや…」って思った記憶があるわ。
──昔の映像を観ると、剥げているせいか緑というより茶色ですものね。
小牧 そうそう。芝の経験がないのに、野平先生とか二本柳先生とかが乗せてくれてねぇ。
──初騎乗は野平祐二厩舎の新馬、ナトルーンフラワーでしたね(8着)。ヤングジョッキーズ3戦目で3着に入ったのが、二本柳俊夫厩舎のベストダージリンという馬で。
小牧 覚えてるわ、その馬。懐かしいなぁ。とにかくあの土日のことはよーく覚えてる。前にも話したけど、園田との違いにショックを受けて、「園田を辞めよう!」と思ったもん。知らんかったからね、あんなに華やかな場所があるなんてことを。本当はね、その前の年にも行けてたはずなんやけど…。
──第1回の同シリーズですか?
小牧 うん。でも、金沢の渡辺壮(たけし)くんに先に行かれてしまった。本当は僕のほうが成績はよかったんやけど、なんせ僕は騎乗停止が多かったから(苦笑)。僕ら地方ジョッキーは外国人ジョッキーたちと同じ待遇で、むっちゃよくしてもらった。夢のような2日間やったよ。
──良くも悪くも世界が広いことを知ってしまったんですね。
小牧 そうやね。シリーズ4戦のうち、デットーリが3勝したんですわ。当時は狭い世界しか知らんかったから自信満々で行ったんやけど、初めて「世界には僕よりすごいジョッキーがおるんやな」と思って興奮したわ(笑)。
「芝でこんなにボコボコなんや…」って思った記憶があるわ