▲「with 佑」のホストを務める藤岡佑介騎手 (C)netkeiba.com
藤岡佑介騎手が“今”語り合いたい旬なゲストにお迎えし、競馬談義を繰り広げる『競馬対談 with佑』。この3月で5年目を迎えることができました。これもひとえに、これまでに登場してくださったホースマンの皆様、そして当コラムを応援してくださる読者の皆様のおかげです。いつもありがとうございます。
今回は連載開始5年目を記念しまして、ホストの佑介騎手自身がここまでを振り返ると共に、心に残った対談や裏話を披露します。その対談をすでに読んでくださった方も、まだ読んでいないという方も、ぜひ今一度振り返りながらお楽しみください!
(取材・文=不破由妃子)
この4年間で将雅の存在感は大きく変わった
よく「どうやってゲストを選んでいるの?」と聞かれるのですが、一番は僕自身の興味です。トップジョッキーに興味があるのはもちろんですが、一緒にレースに乗っていると、今年はいいリズムで乗れているなとか、このあとどんどん上がっていくだろうなとか何となくわかるもので、同じジョッキーとしては、当然そのきっかけや取り組みに興味が湧きます。
今後楽しみだなと思っているのは、以前出てもらったゲストの再登場です。連載も5年目となると、そういう機会も増えてくるかと思いますが、前回からどういう気持ちの変化があって、それがどう騎乗に影響しているのか、そういう変遷は僕もすごく興味深いです。
不変をよしとする仕事もあると思いますが、僕のなかでジョッキーとは、変化してこその仕事。変化を怖がらないというか、変わっていくことに対してポジティブなイメージを持っている人のほうが、より進化していける仕事だと思っています。
だから、以前のゲストが再登場となったとき、前回とまったく違う発言をしたとしても、それはそれですごく興味深い。むしろ、「前回と言ってること真逆やん!」くらいの変化を期待したいです(笑)。
そういう発言を通して、読者のみなさんにも「ああ、こんなふうに変わっていってるんだな」というのを感じてもらえれば、より競馬を楽しんでもらえるような気がしています。
実際、連載を始めてからの4年間で、たくさんの変化がありました。個々のゲストの変化でいうと、記念すべき第一回のゲストだった(川田)将雅。将雅ならではのルールやプライベートの話、リーディングに対するモチベーションの変化など、かなり将雅の本音に迫れた対談だったと思っていて、今読み返しても面白いなぁと思う回です。
▲2016年4月に初登場した川田将雅騎手 (C)netkeiba.com
(川田将雅騎手初登場の対談はこちらから) そのなかで凱旋門賞の話になり、「将雅がハープスターで負けたことで、日本人ジョッキーが日本の馬でヨーロッパの大きなレースを勝つということについて、少し扉が閉じてしまったように思う」と、そのときに僕が感じていたことを正直に伝えました。
さらに、「凱旋門賞の扉を開けるためには、もう一度、扉を閉めた本人がチャレンジするしかないと思うんだよね。すごく勝手な意見だけど、俺は扉を開くのは将雅なんじゃないかと思ってるから」なんて偉そうなことを言ったわけですが、実際に将雅はその後、2017年(サトノノブレス16着)、2019年(ブラストワンピース11着)と二度も乗りに行っている。これって本当にすごいことで、今や日本を代表するジョッキーになりましたからね。
この4年間で、将雅は存在感そのものが本当に大きく変わりました。同期として本当にすごいなぁと思っていて、またジックリと話を聞いてみたいひとりです。
クリストフの言葉が若手に響いたかな
4年のあいだに生じた変化といえば、若手ジョッキーの海外遠征が増えたことも、うれしい変化のひとつです。2016年の6月に出てくれたクリストフが、「日本人ジョッキーは誰一人、豊さんの後を追わない。『なんでなの?』ってすごく思う」と話していましたが、ちょうどその年の3月から減量期間が5年に延びたこともあって、若手がどんどん海外に出て行くようになりました。
今も「海外に行きたい」と話している子が何人もいて、すごくいい状況だなと思いますし、クリストフの言葉が少しでも若手に響いたのだとしたら、この対談の意味もあったかなと感じています。
▲2016年6月に登場したC.ルメール騎手 (C)netkeiba.com
(C.ルメール騎手との対談はこちらから) 読者のみなさんに対しては、この対談を通して、競馬の「プラスα」の魅力をもっと知ってほしいなという気持ちが根本にあります。トップジョッキーの素顔や、どんなことを考えて競馬をしているのかを知ることで、また新しい視点で競馬を楽しんでもらえたら、僕はそれが一番うれしいです。
僕自身でいうと、連載がスタートした頃に比べると、少しだけステージを上げられたかなという気はしていますが、まだまだ関西の上位層は厚く、GIで人気馬に乗ることは本当に狭き門。でも、その厚い壁に一歩二歩と食い込んでいきたいと思っていますし、そのためにはまだまだ進化が必要です。そのためにも、この対談を通して、ゲストからいろんなものを吸収していきたいと思っています。
今はまだ、トップジョッキーの名前を借りてアクセス数を稼いでいる現状ですが(笑)、いつかは「藤岡佑介のコラム」というだけで多くの人に見てもらえるような、そんな存在に成長していきたいです。
(文中敬称略、了)