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アイルランド芝平地競馬が「無観客」で開幕

  • 2020年03月25日(水) 12時00分
※編集部注:本記事は、無観客競馬が開催されていた時期を前提に構成しており、本記事公開後に発表されたアイルランド競馬の開催休止と執筆時期との関係上、一部で齟齬が生じております。ご了承ください。

世代初の2歳戦も同時にスタート


 イギリスやフランスの競馬が完全にストップしている中、23日(月曜日)にアイルランドのネース競馬場では開催が行われ、アイルランドにおける今季の芝平地競馬シーズンが開幕した。

 残念ながらファンを競馬場に迎えることが出来ない「無観客」であるだけでなく、馬主さんの入場も原則としては認めず、メディアも入れるのは1社につき記者1名とカメラマン1名のみとした。この他、騎手ルームのサウナは使用禁止とし、ドアノブ、手すり、エレベーターのボタンなど、複数の人間が触る可能性がある場所は、定期的に消毒を行うなどの処置が講じられた。

 また出走馬はアイルランド国内を拠点としている馬のみとし、イギリスやフランスからの遠征は認めていない。

 アイルランドでも、例えば21日、22日のポイント・トゥ・ポイント競走は、開催中止となったが、芝の平地競馬については、業界内の雇用を守り、従事者の収入を確保するためにも、1日1開催に限って施行を継続する方針を、主催者であるホース・レーシング・アイルランド(HRI)は示している。

 馬場状態は、Soft to Heavy、Heavy in Places (重と不良の間、場所によって不良)という生憎のものとなったが、予定されていた7競走はすべてつつがなく施行された。

 第1競走に組まれていたのが、2歳馬によるメイドン(芝5F)だ。

 芝の平地競馬が開幕すると同時に、2歳戦がスタートするのが欧州で、すなわちこのレースが、2018年生まれのサラブレッドに組まれた最初のレースということになる。

 勝ったのはJ・ボルジャー厩舎のポエティックフレア(牡2、父ドーンアプローチ)だった。LRシルヴァーS(芝10F)勝ち馬グラマラスアプローチの3/4弟で、今後の成長が楽しみな1頭である。

 そして、テレビ観戦となったファンが大きな注目を寄せたのが、第5競走に組まれていたLRデヴォイS(芝10F)だった。と言うのもここに、エイダン・オブライエン厩舎のサードラゴネット(牡4、父キャメロット)が出走してきたのだ。

 この馬名を目にして、競馬ファンなら「あぁ、あの馬」と思ったはずだ。昨年4月にデビューし、ティッペラリーのメイドン(芝12F100y)、チェスターのG3チェスターヴァーズ(芝12F63y)を連勝。G1英国ダービー(芝12F6y)で堂々1番人気(3.75倍)に推された馬である。

 エイダン・オブライエン厩舎7頭出しだった中、主戦のライアン・ムーアが乗ったサードラゴネットは、残り2Fで一旦は先頭に立ちかける場面があったものの、ゴール前の詰めを欠き、勝ち馬アンソニーヴァンダイクにわずか3/4馬身遅れをとる5着に終わっている。

 シーズン後半も、G3ロイヤルホイップS(芝10F)4着、G1セントレジャーS(芝14F115y)4着と、歯がゆい競馬が続いた同馬が、ひと冬越して、4歳シーズン初戦を迎えたのだ。3歳時から、完成するのは古馬になってから、と言われていた馬で、それだけに、どんな競馬をするかが注目されていた。

 シーミー・ヘファーナンが騎乗したサードラゴネットは、中団内ラチ沿いを追走した後、直線残り2F辺りで先頭に立ちかけたが、そこから伸びたのが、ジョセフ・オブライエンの管理馬で、G3ダイアモンドS(AW10.5F)2着の実績があったヌメリアン(セン4、父ホーリーローマンエンペラー)で、同馬がサードラゴネットに2.3/4馬身差をつけて勝利を手にした。

 この日のエイダン・オブライエン厩舎は全部で6頭を出走させていたが、勝ち星は3歳未勝利戦に出走したラシアンエンペラー(牡3、父ガリレオ)が挙げた1つのみに終わり、2着が2頭、3着が1頭、着外2頭という成績に終わった。総じて8分の出来で、ここを使われて次走良くなるパターンであったようだ。

 そして、この日の開催のメイン競走として行われたのが、第6競走に組まれた3歳以上の牝馬によるG3パークエクスプレスS(芝8F)だった。

 この時季の3歳と古馬の混合戦だけあって、斤量には大きな差が付けられており、3歳馬が8ストーン11ポンド(=約55.8キロ)であるのに対し、4歳以上は9ストーン13ポンド(=約63.05キロ)。さらに、過去2年間に重賞競走を制している馬は3ポンド増という規定もあるため、昨年5月にG3デリンズタウンスタッド愛千ギニートライアル(芝8F)を制しているハマリーナ(牝4、父シーザムーン)は、10ストーン2ポンド(=約64.4キロ)という、日本ではまず見られることのない斤量を背負っての出走となった。

 レースは3番手での競馬になったルミスタ(牝3、父レイヴンズパス)が、残り450m付近で先頭へ。そこから馬場外目を伸びてきたのが、道中は中団にいたハマリーナだったが、さすがに8.6キロの斤量差があると一気に交わすことは出来ず、結局ルミスタがハマリーナに3/4馬身差をつけて優勝を飾った。

 ゴフス11月当歳市場にて1万6千ユーロ(当時のレートで約214万円)という廉価で購入されたルミスタは、2歳8月にデビュー。10月にゴウランパークで行われたメイドン(芝8F)を制し、デビュー3戦目で初勝利を挙げていた。

 同馬を管理するG・リヨンズ調教師は、今後はオークスを目標にするということで、数あるオークストライアルの中から次走を選択したいとしている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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