▲怒涛の1か月を過ごしているモズアスコットと、一番近くで支える玉井助手 (撮影:大恵陽子)
競馬界でも新型コロナウィルスの影響が様々な所で出ています。モズアスコットもその渦中で翻弄された1頭。フェブラリーS制覇後、オーストラリアに渡りドンカスターマイル(4月4日、豪・ランドウィック競馬場、芝1600m)に出走予定でしたが、現地での調教環境や開催中止のリスクなどの理由により高松宮記念に目標を切り替えざるを得なくなりました。
一度は東京競馬場で検疫を受けながら、出国当日に栗東への引き返しが決定。ファンの知られざる舞台裏でどんな戦いがあったのでしょうか。担当する玉井俊峰調教助手に伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
出国予定の16日に豪遠征中止「神経は結構使いました」
――フェブラリーSを勝って芝・ダート両GI制覇、おめでとうございます。
玉井俊峰調教助手(以下、玉井助手) ありがとうございます。
――レース直後には矢作芳人調教師から「次走はドンカスターマイル」というお話がありました。レース後はどのように過ごしたのでしょうか?
玉井助手 フェブラリーSが2月23日で、その後すぐ3月2日に東京競馬場で検疫に入りました。
――同時期のオーストラリアにはマイスタイルとダノンプレミアム(クイーンエリザベスS)も出走を表明していました。検疫中の東京競馬場ではどんな調教メニューだったのでしょうか?
玉井助手 検疫厩舎の周りをその2頭と一緒に運動して、7時になって門が開いたら馬場に出る、という感じでした。
――普段と違って東京競馬場での調教はどうでしたか?
玉井助手 ダートと角馬場だけしかなくて、坂路がないのがこの馬にはちょっと向いていなかったかなと思います。一昨年、香港に行った時も感じたのですが、脚元への負担などを考えるとこの馬には坂路の方がいい気がします。
――そうなると、「ある程度速いタイムを出したいけど、脚元のことを考えると……」とセーブする状況になりそうですね。
玉井助手 そうですね。あんまり調教の強度を上げられなかったというのが実情です。バリバリやることはなくて、なんとか状態を維持する感じだったので、結構緩んだ状態でこちら(栗東)に帰ってきました。
――オーストラリアを断念して、栗東に帰って来るという話は、早い段階から検討されていたんですか?