▲デアリングタクトの主戦、松山騎手 (撮影:桂伸也)
武豊騎手が手綱を取る2歳女王レシステンシア、自主隔離の明けるルメール騎手が騎乗するサンクテュエールなど、華やかなメンバーがそろった桜花賞。その中において“最強”との声が聞こえてくるのが、現在2戦2勝のデアリングタクトです。
エルフィンSからの直行ローテで、満を持してGIに挑む同馬。主戦の松山弘平騎手は、今年に入ってすでに重賞4勝と絶好調。桜花賞に向けて、手応えを語ります。
(取材・文=不破由妃子)
※このインタビューは4/1(水)に屋外で撮影のみを実施し、4/2(木)に電話取材を行いました。
実戦での変わり身、切れ味が素晴らしい
──いよいよ桜花賞ですね。ここにきて現場から“デアリングタクト最強説”がチラホラ聞こえてきますが、ここまで新馬戦、エルフィンSと2戦2勝。デビュー前から調教に騎乗されていましたが、当時はどんな手応えを感じていらっしゃいましたか?
松山 初めて跨ったときはCWだったんですが、これといって際立つものは感じなかったというのが正直なところです。ただ、実戦に行ったら、芝の走りがすごくよくて。
──好スタートから中団の馬群で折り合って、最後は一瞬にして突き放すというセンス溢れる競馬でしたよね。
松山 そうですね。直線で少し前が壁になったシーンがあったんですけど、追い出してからは一瞬で突き放してくれましたし、非常に強い競馬だったと思います。切れ味は素晴らしいものがあるなと感じましたね。
──調教では「これといって際立つものは感じなかった」とのことですが、実戦を経てイメージがガラッと変わった?
松山 はい。印象が変わりました。
──次走のエルフィンSは、1頭だけ次元の違う決め手で4馬身差の圧勝。強いの一言でした。
松山 強かったですね。ただ、レース間隔が空いていた割にはけっこうイレ込みがありまして、ゲートでも悪さをしてしまって。そのぶんスタートのタイミングが合いませんでした。
──とはいえ、まったく慌てる素振りもなく。
松山 初戦で素晴らしい脚があることはわかっていたので、もともと前半からポジションを取りにいこうとは思っていなかったんです。ポジションは意識せずに、とにかくリズムよく運んで、この馬のいい脚を引き出そうと思いながら乗っていました。
──結果的に、計時した上がりはレースの上がり35秒1を1秒以上上回る34秒フラット。狙い通りでしたね。
松山 はい。ゴール前は、まだ余裕がありましたから。ただ、前がけっこう流れていたので、展開も向いたところはあると思います。
▲エルフィンS優勝時のデアリングダクト (C)netkeiba.com
▲「ゴール前はまだ余裕がありました」と松山騎手 (C)netkeiba.com
エルフィンSからの直行ローテ、その狙いとは
──エルフィンSから桜花賞に直行というローテは、松山騎手の助言もあったのですか?
松山 ちょっとイレ込むところがあるので、間隔を空けたほうがいいかもしれないということで、先生と相談して決めました。初戦からエルフィンSまでも間(3カ月弱)がありましたが、休み明けを感じさせないしっかりした走りをしてくれたので、間隔が空いても問題ないことがわかりましたし。
──この中間も調教に騎乗されていますね。感触はいかがですか?
松山 ここ2週乗っていて、1日(水)は併せ馬でやったんですけど、ちょっと気負っているなという印象でしたね。右にモタれるような面もありました。それを踏まえても、チューリップ賞を使わなかったのは正解だったなと思います。多少気負いはありますけど、厩舎サイドが上手く調整してくださっている印象です。
──松山騎手ご自身、今年は京都金杯(サウンドキアラ)を皮切りに、東海S(エアアルマス)、きさらぎ賞(コルテジア)、京都牝馬S(サウンドキアラ)と早くも重賞4勝。リーディングも全国4位と充実一途といった感じですが、モチベーションがより高まっているのでは?
松山 そうですね。重賞を4つも勝たせていただいて。でも、競馬というのは、やっぱり負けることのほうが多いので、1レース1レース頑張っていかなければという気持ちに変わりはありません。とにかく、これだけ勝たせていただいていることには感謝の気持ちが大きいです。その気持ちを忘れずに、これからも次の1勝を目指していきたいです。
──1レース1レースとのことですが、ジョッキーとしてポジションが上がるにつれ、責任のあるレースが増えてきましたね。
松山 それはありますね。こうして人気の馬に乗せていただくことについては、もちろんプレッシャーもありますし、結果を出さなければという思いは当然強いです。結果を出し続けなければいけない、そう思っています。そのうえで、大きな舞台でしっかり結果を残せるジョッキーになりたいですね。
──では最後に、改めて桜花賞への意気込みを。
松山 GIとなると、強い馬がたくさん出てきますから、胸を借りるつもりで頑張りたいと思っています。本来ならば、ファンのみなさんの前で騎乗したいところではありますが、今こういう状況で競馬ができていること自体、本当にありがたいこと。一日も早い収束を願いつつ、感謝の気持ちを持って精一杯いいレースをしたいです。
▲「競馬ができていることに感謝の気持ちを持って、いいレースをしたい」 (撮影:桂伸也)