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コロナ禍における競馬中継番組の裏側

  • 2020年04月11日(土) 12時00分

巨大産業の動きを止めないために


 一部の都府県に緊急事態宣言が出たものの、競馬開催は続行されることになりました。ひと安心した方も多かったと思います。

 もちろん、私もその1人。それでも、JRAが新たな感染拡大防止策を打ち出したのに合わせて、競馬中継を放送しているわれわれも対応策を講じることになりました。

 「ウイニング競馬」では、すでに先週から出演者の間隔を空けて、近い距離で人が接触することをできる限り防ぐようにしました。さらに、出演者とスタッフの控室は複数に分け、全体打合せもテレビ東京専用の部屋より広い部屋で行うなど、狭い空間に多くの人が密集しないような工夫も施しました。

 とりあえずきょう11日の放送は先週とほぼ同じ態勢で行う予定。さらに来週は、その対策を強化する見込みです。

 今のところ、競馬場に行くのは私とごく少数のディレクター、それに音声担当のスタッフだけに限定します(ひょっとしたらもう1人、実況アナウンサーが“出動”するかもしれませんが)。番組としては「実況は現場で付けよう」という思いがあるからです。

 いや、もっと大事な役割がありました。馬体重やオッズ、レース結果、払戻金などの公式情報は、JRAから放送室にある専用のパソコンに送られてきます。これらの情報をいち早く入手してお伝えするには、競馬場に誰かがいて喋れる状態を確保しておかなければなりません。なので、競馬場の放送席を“無人”にするわけにはいかないのです。

 ただし、テレビ東京独自のカメラは、公式映像を使用するため、競馬場には設置しません。メインの出演者はテレビ東京のスタジオから番組をお送りすることにしています。

 こういう話を私が書いちゃっていいのかな、とも思いました。でも今は、政府から不要不急の外出を控えることが要請されているところ。加えて、騎手のみなさんにわれわれからウイルスを“感染”させてしまうことは絶対にあってはならない、という状況にあります。そんな非常時に、このようにして競馬中継の番組を作っているということを広くご理解いただく必要もあるだろうと考えました。

 とはいえ、毎週のことながら、このコラムを送稿した後に状況が変わることも大いにありえます。きょう11日の番組で無事にレースのもようがお伝えできるかどうか、先に書いたやり方のままで来週(18日)の番組をお送りできるかどうか、全く予断は許せません。

 競馬が中止になると、馬主さんは賞金や手当がもらえず、預託料などの経費が出て行くだけ。この状況ですから、競馬以外の本業で厳しい状況に置かれている馬主さんもいらっしゃるかもしれません。競馬中止のその先には、いったいどういうことが起きるのか・・・。

 競馬は国の財政に寄与しているだけでなく、多くの人たちの間で多額のお金を動かしている巨大産業です。その動きを止めないために、みんなで力を合わせたいと思います。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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