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【皐月賞】求められるのは実際に2000mをこなした総合力

  • 2020年04月18日(土) 19時01分
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あの眼光でゴールに向かう馬はめったにいない


 土曜の関東地方は予測された以上の大雨になった。地域によって多少の違いはあるが、大雨注意報にとどまらず、洪水警報が発表された場所もある。

 もちろん、日曜の中山は回復するはずだが、スピード能力が明暗を分ける時計勝負の可能性は低い。土曜の2000mの3歳未勝利戦は2分02秒台の時計を持つ馬が2頭いて好走したが、勝ちタイムは2分09秒5に落ち込み、レース上がり39秒2。5Rの芝1600mは1分41秒1だった。

 今年の皐月賞の有力馬の秘めるレベルはきわめて高い。キャリアは浅いのに、サリオス(父ハーツクライ)は芝1600mに1分32秒7。コントレイル(父ディープインパクト)は1800mに1分44秒5。サトノフラッグ(父ディープインパクト)は2000mに1分59秒5のレコード記録を持っている。

 みんな地力を問われる東京の2歳コースレコードであり、コントレイルはJRA2歳レコードでもあった。軽いスピード能力だけでは不可能な記録であり、時計を要するコンディションになった中山2000mでもあまり評価は下げられない。

 近年の皐月賞は、前走で1800mのスピード決着をこなした馬の勝つケースが多いが、それは1分58秒前後の快時計の決着も珍しくないためで、時計がかかる馬場になったら、求められるのは実際に2000mをこなした総合力だろう。

 弥生賞2000mを制したサトノフラッグの時計(2分02秒9)は、東京の記録と比べ平凡だが、時計差の大きい重馬場のためで、むしろディープインパクト産駒ながら難なく渋馬場をこなした点に注目したい。最後の坂上の印象がすごかった。ああいう眼光でゴールに向かう馬はめったにいない。さらに広がる未来に向かうように首を伸ばした。あの身体全体を使った柔らかな姿勢(躍動)こそ、父の伝えたい最大の長所と思えた。

 快時計の決着だと、同じディープインパクト産駒のコントレイルの持つ圧倒的なスピード能力には及ばなかったかもしれない。また、1600mよりは明らかに2000m向きで、さらにスケール発揮のサリオスの迫力に見劣る危険もあった。

 だが、さまざまなコンディションの2000mで3連勝した経験と、順調な成長過程を歩み、弥生賞当時よりさらに鋭さを増したいまなら、仕上がりにも成長にも不安のない再鍛錬明けの2頭のライバルと比較するとき、こちらのほうが全能力発揮に死角は少ない。

 嫌いたい有力馬はいないが、時計がかかって怖いのはMデムーロのダーリントンホールだろう。父New Approachも、その父Galileoも英ダービーを制している。

 最近10年の日本ダービー連対馬20頭のうち、15頭までを皐月賞7着以内の馬が占めている。距離延長にほとんど心配のないサトノフラッグは、皐月賞で勝ち負けするとき、どのライバルより頂点の日本ダービー制覇が視界に入るはずだ。

 サトノフラッグのファミリーは、もう一世紀も南米アルゼンチンで発展してきた少し色彩の異なる牝系だが、これは2016年の日本ダービーを快走したマカヒキ、サトノダイヤモンド。今春の桜花賞を制したデアリングタクト(6-8代前の母)、2着したレシステンシア。4歳ダノンファンタジー、そして今年の新種牡馬ペルーサ…と同じであり、サンデーサイレンス系の、特にディープインパクトとの組み合わせに活躍馬が多い。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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