
ミライヘノツバサと伊藤大士調教師(撮影:藤井真俊)※2月下旬撮影
GIIIダイヤモンドSを勝った勢いで天皇賞・春に臨むミライヘノツバサ(牡7)。右前脚の屈腱炎で1年半もの休養を挟むなど苦しい時期もあったが、見事に復活を遂げた。厩舎にとってうれしい初重賞タイトルをもたらした同馬に対する思いや、復活までのエピソード、天皇賞へ向けての意気込みなど、管理する伊藤大士調教師(47)に話を聞いた。
(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)
※このインタビューは4/15(水)に、十分な距離を取りマスク着用で行いました。厩舎での写真はすべて2月下旬に撮影したものです。
結果は大波乱でも「驚きはなかった」
――まずは改めてお祝いの言葉を述べさせてください。初重賞制覇おめでとうございました。
伊藤大士調教師(以下、伊藤師) ありがとうございます。
――厩舎には立派な胡蝶蘭が飾ってありますね。重賞勝ちのお祝いですか?
伊藤師 はい。おかげさまで(笑)。他にもミライヘノツバサのファンの方から、たくさんのお手紙やお守りを頂きました。この場を借りて改めて皆さんに御礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

ファンの皆さん、本当にありがとうございました!(撮影:藤井真俊)※2月下旬撮影
――ダイヤモンドSはハナ差の接戦でした。勝ったと分かった時はどのようなお気持ちでしたか?
伊藤師 シンプルに“やったー!”って感じですね。厩舎にとって初めてだったし、ミライヘノツバサにとっても大ケガを乗り越えての勝利でしたから。
――下馬評では16番人気と出走馬で最も低い評価で、単オッズは325.5倍。正直、驚きもあったのでは?
伊藤師 いやいや。成績は確かに振るわなかったですが、厩舎としてはこれ以上ないくらいの仕上げで臨みましたからね。皆さんはあれを“偶然”と思われたかもしれませんけど、自分の中では驚きはなかった。必然と言ってもいいのかもしれない。別に勝ったから格好つけて言っているわけではないですよ(笑)。
――レース後は喜びを爆発させる調教師、木幡巧也騎手と対照的に、目に涙を浮かべる森藤重仁助手の姿がありました。
伊藤師 彼は厩舎が開業した時からのメンバーで、どんな馬でも可愛がってくれて、一生懸命に仕事をしてくれるんですよ。それでも思うようになかなか勝てないのがこの世界だけど、ようやく苦労が報われたというか…。本当に良かったと思います。
――翌週に行われた祝勝会では「重賞を勝つのに12年もかかっちゃった…」としみじみ話していました。
伊藤師 うん。長かったもん。開業2年目にルリニガナでGIII函館2歳Sを3着した時は、すぐに勝てると思ったんだけどなぁ(苦笑)。その後も2着、3着はあったものの、なかなか手が届かなくて…。でも本当に勝てて良かった。何だか厩舎に活気が出たというか、スタッフみんなが明るくなったような気がするので。

「やったー! という気持ち」口取り式ではガッツポーズも!(撮影:下野雄規)
――そんな喜びを厩舎にもたらしたミライヘノツバサですが、改めて出会いのきっかけを教えてください。2014年にセレクトセールで購買されたそうですが…。
伊藤師 正直、全くのノーマークだったんです(笑)。そのセリでは