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地方・新人騎手のここまで

  • 2020年05月19日(火) 18時00分

99期生のデビュー1カ月半を振り返る


 2月末以降、無観客の競馬が続いて、今年デビューした新人騎手は中央も地方もファンが見守る前での競馬をまだ経験していない。JRAの競馬学校ではサインを練習する時間があると聞いたことがあり(今でもあるのかはわかりません)、地方の騎手もおそらく一生懸命練習しているであろうサインを書く機会がないのはかわいそうにも思える。

 4月1日付で騎手免許を受けた地方の新人騎手は、早くにデビューした騎手はすでに約1カ月半、開催日程の関係で4月後半にデビューとなった騎手でも1カ月が過ぎた。その8名中すでに5名が勝利を挙げ、活躍を見せている。以下に、5月18日現在の成績をまとめてみた(騎乗数-1着-2着-3着/勝率)。

 魚住謙心(金沢) 85-8-7-6/9.4
 北島希望(浦和) 67-7-5-1/10.4
 篠谷 葵(船橋) 54-5-3-4/9.3
 深澤杏花(笠松) 102-4-7-7/3.9
 細川智史(愛知) 51-2-4-1/3.9
 古岡勇樹(川崎) 26-0-1-1/0.0
 池谷匠翔(川崎) 30-0-0-6/0.0
 田中洸多(大井) 10-0-0-0/0.0

 勝利数順に並べてみたが、上位3名は、リーディング上位騎手と同程度の勝率10%前後をマークしている。

 初勝利1号となったのは金沢の魚住騎手で、その勝ち方が印象的だった。4月7日の金沢第6レースで、騎乗したシオジレアは6番人気。1〜2コーナーでは9頭立ての最後方、大外を回ってきて4コーナーでもまだ5番手という位置から、直線単独先頭に立っていた馬をゴール前で差し切った。さらに魚住騎手はその日の第10レースで2勝目を挙げ、これは4番人気での逃げ切りだった。

 7勝を挙げて唯一勝率10%超えの北島騎手は、浦和・小久保智厩舎の所属ということでも注目だが、自厩舎の有力馬で勝利を重ねているというわけではない。ここまで小久保厩舎の所属馬ではわずかに6戦して1勝。小久保厩舎の有力馬にはトップジョッキーが騎乗するため、むしろ自厩舎の騎乗は少ないということはあるかもしれない。7勝のうち浦和所属馬での勝利が6勝だが、競馬場別では川崎4勝、浦和2勝、船橋1勝と、浦和所属馬で他場に遠征しての勝利が目立つ。船橋所属ながら小久保厩舎の主戦ともいえる左海誠二騎手が目標とあって、スタートから主張していく積極的な騎乗が目立ち、7勝のうち6勝を逃げか2番手からという戦法で挙げているのも特徴だ。

 船橋の篠谷騎手は佐藤賢二厩舎の所属としてデビューしたが、残念ながら佐藤調教師が5月1日に急逝されたため、その後は米谷康秀厩舎の所属となっている。5勝のうち4勝が地元船橋でものだが、他場での騎乗も目立っていて、川崎では17戦して2着1回、浦和で5戦1勝という成績を挙げている。

 激戦区・南関東で新人騎手が活躍できるかどうかは、近年の傾向を見ても、所属場以外での騎乗機会が得られるかどうかということがひとつポイントといえそうだ。

 そしてここまで唯一100戦を超え、もっとも多くの騎乗数を得ているのが笠松の深澤騎手。兵庫県の出身だが、笠松を希望したのは「多くの騎乗機会を得られそうだから」とのこと。ここまではその選択がうまくいっている。

 今年デビューした新人騎手で残念なのは、冒頭でも触れたとおり無観客の競馬場でのデビューとなったことと、もうひとつ、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)がいつ始まるのかということ。すでに、5月12日の川崎、6月9日の金沢は中止が発表されている。

 現状、JRAでは節内で騎手が競馬場を移動しての騎乗が禁止され、さらに6月いっぱいは重賞を除いて中央・地方の交流競走の取止め(もしくは交流としては実施しない)が発表されている。移動そのものに感染のリスクがあるということでは、当然の措置だろう。これが騎手交流となれば、10名程度の騎手が都道府県の境を越えて交わることになり、さらにリスクが高いことは容易に想像できる。

 YJSの日程はすでに発表されているが、NAR地方競馬全国協会のサイト内にあるYJSの公式サイトはまだ“2019”のまま。中央・地方の東日本・西日本でそれぞれ騎手ごとに騎乗数をできるだけ公平にするため、どこから始まるか決まらないと騎乗予定も決められないということだろう。

 YJSは、特に新人騎手には自分をアピールする場ともなっている。今年で4年目だが、昨年はJRAの小林凌大騎手がこのシリーズの船橋でデビュー以来の初勝利を挙げ、さらに浦和でも勝利を挙げ、トライアルラウンドはJRA東日本1位でファイナルに進出した。2017年のトライアルラウンド最終戦・浦和では、地元の赤津和希騎手が11番人気で勝利し、やはりデビュー以来の初勝利だった。

 そう考えると、今年の新人ではまだ初勝利に至っていない古岡騎手、池谷騎手の地元、川崎でのトライアルラウンドが中止となってしまったのはなんとも残念。

 今年、YJSは果たして開催できるのかどうか、気になるところだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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