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【ヴィクトリアマイル】アーモンドアイはなぜ楽しそうに走る? その秘密はルメール騎手にアリ!

  • 2020年05月21日(木) 18時02分
哲三の眼

歴代7頭目となるGI7勝を挙げたアーモンドアイ(提供:デイリースポーツ)


ヴィクトリアマイルは単勝1.4倍と断トツの1番人気に推されたアーモンドアイが圧勝。「ムチはいらなかった」というルメール騎手の言葉通り、終始馬なりのまま後続に4馬身差をつけてのゴール。歴代最多タイのGI7勝を達成しました。直線でも追う必要なく、余裕そう。アーモンドアイは楽しそうに走っているようにみえる…。その要因は、馬の力だけでなく、ルメール騎手の乗り方にもあった? 今回はルメール騎手の“らしい騎乗”と、競走馬の“手前”について解説します。

(構成=赤見千尋)

返し馬の一歩目から大切に―ルメール騎手の細やかな気配り


 ヴィクトリアマイルのアーモンドアイは素晴らしい走りでしたね。とにかく強いなと感じました。そして、鞍上のクリストフ(ルメール騎手)もいつもながらに馬のことをよくわかっているなと。さすがの騎乗ぶりでしたね。

 まずはゲートの出し方。アーモンドアイはゲートを自分から上手に出て行くというタイプではないですが、どうすればアーモンドアイが出やすいかということをわかっている。おそらくは秋華賞の時に掴んだのではないかと想像しています。

 もちろんたまには遅れることもありますが、今回もきっちりとゲートを決めて来た。あれだけの末脚を持っている馬ですから、他のジョッキーが乗ったら、スタートを出すことにそこまでこだわらず、後方からの決め手勝負に持ち込みたくなるのではないかと。そこをクリストフは、ゲートを決めて、いいポジションを取ってという競馬を選択している。

 なぜそういう選択なのかといえば、いつもこのコラムでもお話していますが、『効率がいい』ということではないでしょうか。道中の乗り方もクリストフらしくて、決して馬の重心を引き過ぎることがないんですよね。その馬その馬の走り方、特徴がよくわかっているなと。

 特にアーモンドアイは、乗り手の色が走りに強く出る馬だと感じていて。元ジョッキーとして乗ってみたいなというよりも、見ていて楽しいと感じることが多いです。クリストフが乗ることで、クリストフ色の走りになっている。クリストフ色、と言ってもわかりづらいかもしれませんが、今回の直線の走りを見ていて、皆さんはどう感じましたか?

 レース直後に競馬評論家の須田鷹雄さんから質問があって、「アーモンドアイは直線で何度も手前を替えて走っていて、それが楽しそうに替えているように見えるのですが、そんなに余裕があるのでしょうか?」というものでした。

 基本的に左回りでは、コーナーを左手前で走り、直線を向いて右手前に替えたら、そのままの手前で走り続けることが、伸びて行く条件の一つのように考えられています。だからレース後のジョッキーのコメントでも、「途中で苦しくなって手前を替えてしまった」というような敗因が語られることがあるわけです。

 でもアーモンドアイの走りを見ていただくと、直線で抜け出してから何度も手前を替えている。「苦しくて手前を替えている」ではなく、軽やかに、楽しそうに走っているように感じるわけです。実際、3ハロン32.9というとてつもない上がりで走っているわけで、馬の動きとしては同じ動作なのに、なぜこんなに違うのでしょうか?

哲三の眼

「手前を替える」動きとしては同じなのに、なぜ違く見える?(撮影:下野雄規)


 まず一つ目の要因として考えられるのは血統的なことです。お母さんのフサイチパンドラも東京では最後の直線で左手前に替わることがあった

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1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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