先週の血統ピックアップ
・5/24 オークス(GI・東京・芝2400m)
中団を追走したデアリングタクトが直線で外から伸び、粘るウインマリリン、ウインマイティーを差し切りました。馬群をさばけず直線は苦労しましたが、進路が開いてエンジンが掛かると、一頭だけ違う伸び脚で突き抜けました。着差以上の完勝だったと思います。無敗の二冠達成。
父エピファネイアは名牝シーザリオの息子で、その兄弟にはリオンディーズやサートゥルナーリアがいます。現役時代に菊花賞とジャパンCを勝ったスタミナタイプで、それだけに晩成傾向も帯びており、2歳時から現在にいたるまで同じ新種牡馬のキズナに後れを取ってきました。とはいえ、世代別リーディングではディープインパクト、キズナに次ぐ第3位ですから、いずれは種牡馬ランキングの上位を争う種牡馬となることは間違いないでしょう。
ロベルト系らしく一発長打型で決め手の甘いところも見られますが、デアリングタクトはそうした欠点が見当たらない傑作。重厚なスタミナタイプの父を持つ名牝なので凱旋門賞を連覇したエネイブルやトレヴを連想させます。
・5/23 平安S(GIII・京都・ダ1900m)
中団につけたオメガパフュームが直線で鋭く伸びて快勝しました。59kgを背負って上がり35秒5ですから地力が違います。東京大賞典2連覇に加え帝王賞を制した実力は伊達ではありませんでした。
父スウェプトオーヴァーボードは基本的にはダートの短距離向きですが、母方にスタミナを添えると長丁場をこなす産駒が出ることもあります。芝3600mのステイヤーズSを勝ったリッジマンはその代表です。本馬の母オメガフレグランスは「ゴールドアリュール×リアルシャダイ」というスタミナ血統。
とくにリアルシャダイはライスシャワー(天皇賞・春2回、菊花賞)やステージチャンプ(ステイヤーズS)をはじめ多くのスタミナ自慢を出したロベルト系の名種牡馬。ここ数年、母方にリアルシャダイを持つダートの強豪が目立ち、コパノリッキー、ルヴァンスレーヴ、チュウワウィザード(ルヴァンスレーヴと同牝系です)などが大レースを勝ちまくっています。このトレンドは頭の片隅に留めておきたいところです。
今週の血統注目馬は?
・5/31 白百合S(L・京都・芝1800m)
京都芝1800mはディープインパクト産駒の庭、といってもいい条件です。2010年以降、当コースで産駒が20走以上した64頭の種牡馬のなかで連対率31.7%は第2位。1位のエンパイアメーカーは出走数が39回で連対率33.3%ですが、ディープインパクトは627回走った上でこの数字ですから桁違いです。最少レース機会数を100に上げると連対率22.2%のキングカメハメハが2位に浮上するので、ディープインパクトの数字がいかにずば抜けたものであるかご理解いただけると思います。
当レースにはプライムフェイズが出走します。ここまで3戦2勝。重賞好走馬に混じると成績的に見劣りは否めませんが、血統的には狙ってみたい馬です。もう1頭、エピファネイアは当コースで産駒が14走しかしていないので規定打席不足ですが、連対率は28.6%と好成績。メイショウボサツは侮れません。
今週の血統Tips
今年で87回目を迎える日本ダービー。今年は無事開催されることをまずは喜びたいです。長い歴史上、最も多くのダービー馬を出している種牡馬はトウルヌソルとサンデーサイレンス。いずれも6頭ずつ勝ち馬を出しています。
前者は第二次世界大戦前に活躍した名種牡馬で、第1回ダービー馬ワカタカ(1932)をはじめ、トクマサ(1936)、ヒサトモ(1937)、クモハタ(1939)、イエリュウ(1940)、クリフジ(1943)を出しています。クモハタは戦後、6年連続リーディングサイアーとなって父の血を伝えました。また、11戦全勝の女傑クリフジは牡馬を含めた戦前の最強馬という評価もあります。
この記録に並んだのはサンデーサイレンスで、タヤスツヨシ(1995)、スペシャルウィーク(1998)、アドマイヤベガ(1999)、アグネスフライト(2000)、ネオユニヴァース(2003)、ディープインパクト(2005)を出しました。
そのなかの最強馬であるディープインパクトは歴代2位の5頭のダービー馬を出しています。ディープブリランテ(2012)、キズナ(2013)、マカヒキ(2016)、ワグネリアン(2018)、ロジャーバローズ(2019)。今年、同産駒のコントレイルが大本命馬としてダービーに挑みますが、もし勝てばトウルヌソルとサンデーサイレンスに並びます。
種牡馬デビューから9世代で5頭のダービー馬を出すというハイアベレージで、12世代で6頭、という父のペースを上回っています。今年の当歳がラストクロップですが、残念ながら産駒数はわずか。したがって、トウルヌソルとサンデーサイレンスの記録を破るには、現1、2、3歳世代から2頭のダービー馬を出す必要があります。高い壁ですが、今後「6頭」という記録を破る種牡馬は当分現れないと思われるだけに期待したいところです。