ダービーを上回る好タイム圧勝で1番人気に急浮上
4日(土曜日)にイギリスのエプソムでG1オークス(芝12F6y)とG1ダービー(芝12F6y)、5日(日曜日)にフランスのシャンティイでG1ジョッケクルブ賞(=仏国版ダービー、芝2100m)とG1ディアヌ賞(=仏国版オークス、芝2100m)、さらにイギリスのサンダウンで古馬のG1エクリプスS(芝9F209y)が行われた先週末、秋のG1凱旋門賞(芝2400m)を巡る絵図が大きく塗り替わった。
前売りマーケットの上位にジャンプインしたのが、土曜日の日本時間23時40分に発走したG1英オークスで超絶パフォーマンスを見せたラヴ(牝3、父ガリレオ)だ。
クールモアの自家生産馬で、G3スターネラS(芝14F)勝ち馬ピーチツリー、G3ミュンスターオークス(芝12F)勝ち馬フラッタリングらの全妹にあたる同馬。2歳時は7戦し、G1モイグレアスタッドS(芝7F)、G3シルヴァーフラッシュS(芝7F)の2重賞を含む3勝をマーク。3歳緒戦となったのがニューマーケットのG1英1000ギニー(芝8F)で、ここを4.1/2馬身差で快勝して、2冠目のG1英オークスに参戦していた。
血統背景もさることながら、管理するエイダン・オブライエン調教師が「もとよりオークス向き」とコメントしていたこともあって、前走から一気に4Fも距離が延びるにもかかわらず、ファンは同馬をオッズ2.1倍の1番人気に支持することになった。道中5〜6番手に位置したラヴは、直線に向くと抜群の手応えで追撃を開始し、残り2Fで先頭へ。そこからは独走になり、最後は後続に9馬身もの差をつける圧勝。勝ち時計の2分34秒06は、17年にエネイブルが作った記録を0.07秒更新する、オークスのステークスレコードだった。ちなみにこの勝ち時計は、同日に行なわれた牡馬のダービーも上回っている。
この段階でブックメーカー各社は、ラヴを凱旋門賞へ向けた前売りの2番人気に浮上させた。1番人気は、凱旋門賞3度目の優勝を目指すエネイブルだった。だが、この序列は24時間後に早くも変動することになった。
5日(日曜日)の日本時間23時35分に発走したのが、古馬のG1エクリプスSだ。昨年同様、エネイブル(牝6、父ナサニエル)がこのレースをシーズンの始動戦に選択。ここに、前走G1コロネーションC(芝12F)をトラックレコードで制し2度目のG1制覇を果たしての参戦となったガイヤース、3歳だった昨年、G1パリ大賞(芝2400m)、G1インターナショナルS(芝10F56y)という2つのG1を制した実績のあるジャパン(牡4、父ガリレオ)が参戦。7頭立ての少頭数ながら、この路線の古馬の大物が顔を揃えたハイレベルの一戦となった。
そんな中、ファンはエネイブルをオッズ2倍の1番人気に支持。女王に健在ぶりを示して欲しいという、地元競馬ファンの熱い思いを反映した人気となった。だが結果は、オッズ3.25倍の2番人気に推されたガイヤースが逃げ切り勝ち。並べば無類の強さを発揮するエネイブルだが、4番手から追い込んだ同馬はガイヤースに馬体を並べるところまで追い込めず、2.1/4馬身差の2着に敗退。エネイブルに頭差遅れた3着がジャパンだった。
この結果を受け、エネイブルは凱旋門賞1番人気の座から陥落。多くのブックメーカーが、ラヴに5倍前後のオッズを提示して1番人気とし、中には2頭横並びの社もあるものの、多くはエネイブルに5.5〜6倍のオッズを提示して2番人気としている。エクリプスSで3度目のG1制覇を果たしたガイヤースは、8〜9倍のオッズで3番人気。そして、4番人気以下は社によってまちまちだ。スカイベットやベットヴィクターは、日本の3歳2冠馬コントレイルをオッズ11倍の4番人気にしている。
大手のラドブロークスやコーラルは、4日に行なわれたG1英ダービー勝ち馬サーペンタイン(牡3、父ガリレオ)と、5日に行なわれたG1ジョッケクルブ賞(=仏ダービー)勝ち馬ミシュリフ(牡3、父メイクビリーヴ)の2頭を、いずれもオッズ11倍で横並びの4番人気としている。一方、こちらも大手のウィリアムヒルは、G1エクリプスS3着のジャパンを、オッズ13倍の4番人気としている。
5日に行なわれたG1ディアヌ賞(=仏オークス)を制したアイルランド産ディープインパクト産駒のファンシーブルー(牝3)は、各社21〜26倍と、それほど高く評価をしていない。この路線は今後、7月18日にラヴが出走を予定しているカラのG1愛オークス(芝12F)、7月25日にエネイブルが出走を予定しているアスコットのG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)が組まれている。レースの結果とともに、凱旋門賞の前売りマーケットの動向にも注意しながらフォローしていきたい。