重賞が波乱の決着となる傾向は秋も続くのか
夏のハンデ重賞らしく波乱はいつものこと。函館記念は馬連が発売開始された1992年から2001年までの10年間に、8回も馬連の万馬券が飛び出した荒れる重賞だが、1-2着馬ともに2ケタ人気の伏兵だったのは56回の歴史の中、さすがに初めてのことだった。3連単343万2870円はもちろんレース史上最高配当。3連複も、馬連も、馬単も、ワイド1通りも、単勝配当7730円もレース史上最高だった。
直後に行われた第68回「中京記念」の3連単もレース史上最高配当の330万2390円。最低18番人気メイケイダイハードの単勝配当1万6300円と、同馬の複勝、馬連、ワイド1通りが、レース史上最高配当だった。
今年は、ミライヘノツバサ(最低16番人気)が制した2月のダイヤモンドSが、3連単355万余円。ダイワキャグニーが勝ったエプソムC(18番人気のトーラスジェミニが3着)の3連単が421万余円。JRAの重賞レース3連単の高額配当ベスト15レース(約17年間)に、なんとこの半年間だけで「4レース」もが入り込むことになった。この流れは秋の重賞にも続くのだろうか。
これで最近10年、函館記念の馬券に関係した計30頭のうち、1-2番人気だった馬はわずか「2頭」だけ。上位人気ではなく、6番人気以下だった伏兵が「19頭」にも達したことになる。上位5番人気馬同士の組み合わせは、ワイドたった1例だけ。
レース検討で、最近10年間の勝ちタイム平均は「1分59秒67」。どの馬だって乗り切れる2000mなので難しいとしたが、今年は良馬場で1分59秒7。ホントに足りない馬などいなかった。重馬場でもないのに微妙にタイムがかかる。これが難解な結果を呼ぶ。といって、エリモハリアー(父ジェネラス)が3連勝した当時のタフな洋芝でもない。

写真提供:デイリースポーツ、撮影:三好信也
勝った4歳アドマイヤジャスタ(父ジャスタウェイ)は、2歳末のホープフルSを2番人気でサートゥルナーリアの2着した期待馬。日本ダービー4番人気だった。ただし、3歳以降ここまで【0-1-0-8】。伏兵視するのは難しかったが、タフな馬場は苦にしないGI3勝馬ジャスタウェイ産駒で、GIIIダイヤモンドS、豪G1コーフィールドCのアドマイヤラクティの下。快走されて納得するしかないが、こういう底力の求められるタフなレースが合っていたのだろう。洋芝は初めてだった。高速レースには死角はあるが、4歳馬だけにこのあとの活躍は期待できる。4歳の勝ち馬は、この10年間で2013年のトウケイヘイロー(重賞4勝)に次いで2頭にすぎない。
2着に突っ込んだ7歳ドゥオーモ(父ディープインパクト)は、このレースで再三快走する巴賞の着外馬。といって、ひと叩きしてここが狙いともいえなかったが、3走前はハンデ52キロの小倉大賞典をカデナの0秒3差2着。2000mの最高時計は1分59秒8(新潟大賞典11着)。行き脚がつかず追走に苦心したが、インから巧みに馬群を割るコース取りが功を奏し、平凡な自身の最高時計でも通用するのが函館記念だった。今年は上昇中の4歳馬が過去20年で最多6頭も出走するので、ベテラン苦戦と思えたが、これで最近10年、買いにくい7歳以上馬が3分の1の「10頭」も馬券に絡んだことになった。
人気の1頭バイオスパーク(父オルフェーヴル)は、流れに乗って好位のイン。直線、一旦は先頭に並びかけるシーンもあったが、最後は力尽きて惜しい3着。ただ、一連のレースで示していた目下の充実は十分にみせた。今回が初重賞挑戦、これで函館の芝【1-1-1-1】。着実にパワーアップしているので、少し時計のかかるコンディションなら重賞レースでも通用する。
4歳の上がり馬トーラスジェミニ(父キングズベスト)は、自身の前後半「58秒8-61秒3」=2分00秒1。結果、心もちきついペース(前走の巴賞は前半1000m通過61秒0)になってしまったが、弱気に控える立場ではなく、果敢に行って0秒4差の4着なら内容は文句なしだろう。4歳の今年【3-0-1-4】。アッというまに重賞で通用する上がり馬となった。
一見、地味な血統にみえるが、3代母Queen Sucreeクイーンスクリー(父Ribotリボー)は、大種牡馬Haloの半姉。4代母Cosmahは、祖母の父に登場するNorthern Dancerの母Natalmaの半姉という超名門ファミリーの出身。まだ良くなる可能性を秘める。
人気のカウディーリョ(父キングカメハメハ)、レイエンダ(父キングカメハメハ)は、少々きつい展開になり、カウディーリョは直線で狭くなる不利もあったが、正攻法で進みながらともに案外の結果だった。決して壊れたレースではない。大波乱のハンデ戦だけにこういう結果はやむを得ないだろうが、相手を考えると、人馬、陣営ともにあまりにも物足りない結果だった。
伏兵レイホーロマンス(父ハービンジャー)、プレシャスブルー(父ディープインパクト)の2頭は、直前入厩が響いたか、ともにマイナス20キロ。もともとが小ぶりな馬体だけにこの大幅な馬体重減は痛かった。