▲種牡馬引退となったクロフネ、タニノギムレットを管理していた松田国英調教師(C)netkeiba.com
芝・ダートを問わず数々の活躍馬を輩出したクロフネが先月13日、種牡馬を引退すると発表されました。さらに4日後には父娘ダービー制覇を成し遂げたタニノギムレットの種牡馬引退も明らかに。両馬は現役時代、NHKマイルCから日本ダービーという当時としては斬新なローテーションで結果を残しました。「マツクニローテ」とも呼ばれたこのレース選択。今から20年近く前、管理した松田国英調教師はどんな戦略を描いていたのでしょうか。
また、両馬の産駒も多く管理した松田調教師は産駒を「親戚や孫みたい」と話しますが、タニノギムレット産駒のウオッカが松田厩舎・ダイワスカーレットのライバルとして台頭。どんな心境でライバル・ウオッカを見つめていたのでしょうか。クロフネとタニノギムレットの現役時代の話なども含めて改めて振り返っていただきました。
(取材・文:大恵陽子)
※お忙しい中、電話取材に応じていただき、この場を借りて改めて感謝申し上げます。
クロフネ 東京マイルがダービーにつながる理由
――アメリカからやってきたクロフネは、そのネーミングと強さでも注目を集めました。アメリカのトレーニングセールで購買されましたが、初めて見た印象はいかがでしたか?
松田国英調教師(以下、松田師) サンデーレーシング代表の吉田俊介さんが当時、アメリカで研修をしていた牧場の馬で、ビデオを見せてもらった時に「次元が違う。年齢が違うんじゃないか」ってくらい、すごくパワフルな馬でした。ディープインパクトやキングカメハメハの産駒が活躍するいまと違って、当時は外国産馬には一目置くくらいの時代でしたから先入観もありましたが、それでもすごいなと感じました。
――デビュー戦こそ1600mで2着でしたが、初勝利を挙げた2戦目以降はずっと2000mを走っていました。そんな中、なぜ1600mのNHKマイルCを選んだのでしょうか?
松田師 どうやったらダービーを勝てるかという点と、金子オーナーとしても厩舎としてもGIをどうやったら勝てるかという点がありました。後者では、「NHKマイルCを使えば勝てるんじゃないか」と考え、オーナーから武豊騎手に提案しました。
前者に関しては、2000mのエリカ賞を速いタイムで勝ったので、「2000mで強いんだったら、1600mに短縮しないで2400mに近い距離のレースに行けば?」という声もありましたけど、私としては「まだ完成されていない馬には、東京の1600mの競馬がダービーを勝つためには必要」と発信していました。
――一般的なイメージとして、距離を短縮すると前半から一生懸命走るようになり、再びの距離延長は難しそう…と考えてしまいます。
松田師 実際にそうです。だけど、東京の1600mだけは違うんです。