1番人気タガノウィリアムは、ハナを奪うも残念ながら4着。最後に甘くなってしまったのは、「最初に気合いを入れていったぶん」と振り返った小牧騎手。被される競馬を避けたいこの馬にとって、内枠スタートの難しさを語ってくれました。
また、ユーザー質問で「プレッシャーの克服法」を問われ、最近心がけていることに言及。はたしてベテランが意識していることとは!?(取材・文:不破由妃子)
※このインタビューは電話取材で実施しました。
ベテランであっても、“平常心”を保つのはなかなか難しい
──まずは先週の競馬の回顧から。タガノウィリアム(日曜8R・3歳上1勝クラス・ダ1700m・1番人気4着)は、直線に入ったところでつかまってしまいました…。
小牧 残念やったね…。前回スタートでつまずいたから、慎重にゲートを出して、いいペースで行けたんやけどね。最初に気合いを入れてハナを取りにいったぶん、道中で噛んでしまった。終いが甘くなってしまったのは、その影響やね。完全には止まっていないし、頑張ってくれているんやけど。
──気合いを入れて出していったのは、内枠が影響している?
小牧 うん。被せられたらダメな馬やから。枠が出る前はハナか2番手と思っていたけど、内枠が当たってしまったとなると行かなアカンでしょ。なんせ揉まれたらダメなんでね。前回は後ろからになったけど、ケツからポツンと行けたから終いも伸びた。やっぱり外枠のほうがいいね。外枠やったら、それほど仕掛けなくても外をずーっと回ってこられるから。先週はホンマに残念やった。でも、この馬に対する期待は変わらない。
──ほかでは、日曜6R(3歳未勝利・ダ1000m)フチサンメルチャンも直線はいい脚でしたね(12番人気4着)。
小牧 あの馬もね、走るんちゃうかなと思ってた。小倉の最後の週に使う予定とのことで、もうひと絞りほしいのと、中間のゲート練習を厩舎にお願いしました。どうしてもゲートで突っかけるんでね。
──突っかけるとは?
小牧 前に顔を向けたら、出よう出ようとするんですわ。でも、ゲート練習をして、ひと絞りできたら、この馬はチャンスがあるよ。それに1000mはいいね。
──いい脚といえば、パッションチカ(日曜9R・西部スポニチ賞・芝1200m・17番人気7着)の直線の脚も見どころがありました。
小牧 5着かと思ったんやけどねぇ。残念やったわ。土曜日の競馬で、後ろから人気のない馬ばかりきていたでしょ? だから、それを目指して乗ったんですわ。ただ、距離に関係なく、ジックリ乗ったら直線はくるね。いい走りはしていたし、この馬も流れひとつやと思う。
──では、ユーザーからの質問をひとつ。「小牧さんは長いキャリアのなか、プレッシャーや緊張で自分の力が発揮できなかった経験はありますか? もしあるのであれば、どうやって克服してきたのでしょうか。対処法があれば教えてください」
小牧 常に「楽しく、平常心で」ということを心がけているけど…。ベテランであっても、実際にはなかなか難しいね。緊張というかね、競馬は人間の気が乗り過ぎていたらアカン。それが馬に伝わって、ゲートでつまずいたりするから。だから、「常に楽しく平常心で乗ろう」と、ちょうど先週も思ったところや。
──先週とはタイムリーですね。
小牧 タガノウィリアムは1番人気やったし、実際に勝てそうやなと思っていたから、ちょっとドキドキしながら乗ったんやわ。でも、あと何年乗れるのかわからんのやし、そういうときもとにかく楽しく乗っていこうと。まぁそれが難しいねん、なかなか。
──楽しく乗ろうと意識した時点で、完全な平常心ではないということですものね。
小牧 そうそう。なんせ笑顔やね。笑顔で乗っていきたい。だから、ふいにニコッとしたりしてるよ(笑)。緊張しているなと思うときは、僕もそうやっていろいろやってるよ。まぁどんな馬に乗るときも、常に緊張感は持っているからね。
──若い頃や中央に移籍したばかりの頃は、もっと力が入っていたのでは?
小牧 そうやね。常に力んでいた頃もあった。それが馬に伝わってしまって失敗したり、まぁいろいろ経験してきたよ。そんな僕でもまだ緊張するんやから、その都度、乗り越えていくしかないんちゃうかな。とにかく笑顔や。笑顔を心がけること。
──最後に話は変わりますが、船橋の騎手に新型コロナの陽性者が出て、川崎競馬が中止となるニュースがありました。
小牧 残念なニュースではあるけれど、これはもう仕方がないこと。どこでも感染する可能性はあるし、どんなに気をつけていてもなるときはなる。むしろ、これだけ拡大しているなかで、よう競馬界で出ないなと思ってた。中央競馬1号になりたくないのは、みんな一緒やからね。ホンマに全員が気をつけてるよ。だから、こういうニュースがあっても、これまで通りに気をつけるだけや。