
ヴェルトライゼンデを管理する池江泰寿調教師を直撃!(C)netkeiba.com
昨年末のホープフルSでコントレイルに1馬身半差まで迫ったヴェルトライゼンデ。半兄には菊花賞馬ワールドプレミアや重賞2勝のワールドエースなどがいる良血馬で、日本ダービーでは3着と、素質の高さを見せました。
しかし実は皐月賞の頃、ちょっとした蹄の形の崩れから、全身に影響が及んでいたとか。日本ダービーを前に状態は改善しましたが、「『蹄なくして馬はなし』ということわざがあるくらいツメは大事」と話す池江泰寿調教師が分かりやすく説明してくださいました。秋の飛躍に向けて、ヴェルトライゼンデを徹底解剖します。
(取材・構成:大恵陽子)
※お忙しい中、電話取材にご協力いただき、この場をお借りして改めて感謝申し上げます。
いい頃の状態に近づいた日本ダービー
――父はドリームジャーニー、半兄ワールドエースと、ヴェルトライゼンデは池江厩舎ゆかりの血統ですね。第一印象はどうでしたか?
池江泰寿調教師(以下、池江師) ドリームジャーニーもワールドエースも、2頭ともどちらかというと体高が低くて、ちょっと胴も詰まっているような馬でした。ヴェルトライゼンデに関しては手脚も胴も長くて、どちらにも似ていないなという印象でした。
――デビュー戦は夏の小倉の最終週。さらに雨で重馬場になりましたが、力を発揮してデビュー勝ちを決めました。
池江師 わりとパワーも持っていますし、バランスのいい馬なのであまり心配していませんでした。調教通り走れば、結果はついてくるかなと思っていました。

人気に応え重馬場の新馬戦を快勝した(写真は19年9月新馬戦勝利時、(C)netkeiba.com)
――バランスの整った馬だから、荒れた馬場でも走れたということでしょうか?
池江師 もちろん良馬場の方が走りやすいですけど、体幹がしっかりしている馬っていうのは、重馬場でもバランスを崩せず走れます。
その一番いい例がオルフェーヴルですね。決して道悪が得意な、かき込むような走りではないんですけど、バランスがいいので重馬場でもバランスを崩さず真っ直ぐ走れるという感じでした。

重い芝で知られるフランスでも結果を残したオルフェーヴル(写真は13年凱旋門賞出走時、撮影:高橋正和)
――2戦目の萩Sも勝ち、続くGI・ホープフルSは2着。直線ではコントレイルに一瞬並びかけそうな場面もありました。
池江師 ホープフルSの時はすごく状態が良かったですね。レースではちょっとキレ負けした感じはあったんですが、力を出し切って、いい競馬でした。
――それだけに春のクラシック戦線での活躍が期待されましたが、スプリングS2着、皐月賞は8着。振り返ってみていかがですか?
池江師 ツメの形がちょっと崩れてしまって、それで肩の出が悪くなり、対角線上のトモの入りも悪くなって、背中も痛くなって、全身のバランスが変わってしまう、という負のスパイラルに春2戦は入っていました。
「蹄なくして馬はなし」ってことわざがあるくらいですからツメは大事ですよね。一番大事な器官で、致命的でした。皐月賞の後、ツメの形もしっかり整ってきて、歩様も戻り、状態がだいぶ上向きになってきたなって感じでした。
――日本ダービーの頃に、再び力を出せる状態へと戻っていったんですね。
池江師 暖かくなったらツメの伸びも良くなります。ツメの形は一気には変えられないので、装蹄師さんが徐々にミリ単位で形を整えていってくれて、それで肩の出が良くなり、そうなるとトモの入りも良くなって、体が使えるようになって、全身のバランスが良くなっていきました。ダービーの時はまだ完璧ではなかったんですけど、いい頃には近づいてきたなって手応えはありました。
――状態が上向いて臨んだ日本ダービーは3着で、自分の走りができるようになると世代トップレベルの素質を持っていることを改めて示しました。
池江師 またキレ負けして、コントレイルにはさらに差をつけられましたけど、それでもよく頑張ってくれたかなとは思いました。

世代トップレベルの素質を改めて示した(写真は19年ホープフルS出走時、撮影:下野雄規)
他のダービー組は“夏休み”、こちらは“治療中”
――しかし残念だったのは、レース後に右後肢外側の副管骨骨折が判明したことです。
池江師 3コーナーで横の馬に乗っかけられた時のケガで、しょうがないですね。
――全治3か月以上という診断でした。競走馬としてケガの程度はどのようなものだったのでしょうか?
池江師 副管骨というのは、