芦毛特集の締めくくりはエイシンヒカリ(撮影:山中博喜)
大逃げを打ち、外ラチまで逸走しながらも勝利を収めたアイルランドトロフィーや、フランスに渡り10馬身差で圧勝したGI・イスパーン賞。レースぶりそのものが個性的だったエイシンヒカリを今回の芦毛特集ではピックアップします。ある時を境にすれ違う馬に突っ込んでいくようになったと言いますが、基本的には人懐っこかったというエイシンヒカリ。そんな彼との思い出を当時、父の坂口正則厩舎(解散)で調教助手として携わった坂口智康調教師に伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
※お忙しい中、電話取材にご協力いただき、この場をお借りして改めてお礼申し上げます。
すれ違いざまに突っ込んで行くヒカリ。でも、フランスでは…
――エイシンヒカリといえば、3歳秋のアイルランドトロフィーの直線で外ラチまで飛んでいきながらも勝った姿がとても印象的です。
坂口智康調教師(以下、坂口師) あの時期はまだ体がしっかりしていないところがあって、追い切りで少し右にモタれる面はあったんですけど、まさかあそこまで外に行くとは思っていませんでした。初めての左回りだったり、ジョッキーも無理に修正しなかったのかなとも思うんですけど、あれで勝つなんて「強いな」って改めて感じました。
外ラチに飛んでいった姿に「まさかあそこまで外に行くとは…」(撮影:下野雄規)
――そのレース後から坂口師も調教で跨るようになったということですが、乗ってみての感触はどうでしたか?
坂口師 パワーもありますし、エンジンが他の馬とは違うと感じました。何て言うんですかね、車で言うと排気量が違うみたいな感じです。
――それだけのモノがあると、乗っていて楽しそうですね。
坂口師 楽しいですけど、一歩間違えたら……ね(苦笑)。普段の調教でも行っちゃいそうな感じがあったので。
――馬房など普段から強い個性を持っていたんですか?
坂口師 普段はそんなにうるさい面はなくて、人懐っこかったです。どちらかというと、外に出たほうが元気になります。
レックススタッドにて、にんじんをもらうエイシンヒカリ(撮影:山中博喜)
――調教の行き帰りも元気いっぱいで?
坂口師 坂路で乗り終わった後、逍遥馬道を下って帰るんですけど、ある時から、上ってくる馬と対面ですれ違う時に体当たりするような感じで