諦めかけた骨盤骨折。1年4カ月の休養を経て

――前走の新潟記念ではオープン昇級初戦ながらいきなり3着と、見せ場たっぷりでした。

高橋義忠調教師(以下、高橋師)　オープンに上がって不安はありましたけど、平坦な左回りの新潟で舞台は揃っていたかなと思います。この1戦で、オープンでもそれなりにはやっていけそうかな、という感触を持ちました。

――ここまで山あり谷ありの競走馬生活だったようですが、デビューの頃の印象はいかがでしたか？

高橋師　北海道から一旦、関東近郊の育成牧場さんでお世話になったんですけど、何回か様子を見に行った時にそこの責任者の方が「この馬はかなり良さそうですよ」って話をしてくださっていました。北海道でも「かなり良さそう」と聞いていて、デビュー前から「能力が高いんだろうな」という印象を持っていました。

――3歳の3月末にデビューし、2戦目で勝ち上がりましたが、4戦目の城崎特別(当時500万下、現1勝クラス)のレース中に競走中止となりました。

高橋師　能力は期待されていたんですけど、なかなか体が整わず、未勝利戦でのデビューになりました。結果的には「能力はあるけど体が伴わなかった」という状態で競馬に突入したものですから、勝った後も体がついてこず、4戦目で競走中止。その際に骨盤を骨折しました。一時期はもうダメかなって諦めかけたんですけど、オーナーさんの理解もあって、牧場さんと「一度、ダメ元で北海道に戻して、そこで様子を見ましょう」という話になりました。

――骨盤骨折というのはあまり聞くことはありませんが、人間に置き換えてみても重症であろうことが想像できます。

高橋師　ボルトで固定などは一切できないですし、人間のように「じっとしていて」と言っても馬はじっとしていられないので、治っていく過程で元通りの場所に同じような形で修復することはあんまり考えられませんでした。立てなくなったらもう終わりなんですが、幸いにも馬体重が500kgもなく、いろんなものが上手くかみ合いました。骨盤骨折からレースに復帰してもパッとしない競走馬も多い中、元あった場所にうまいこと修復しているわけではないと思うんですけど、それを補う筋肉とかいろんなものが上手くいったんだと思います。

――サンレイポケットの生命力を感じます。

高橋師　休んでいた間も北海道に行くたびに牧場さんに寄って、「どうなっているかな？」って覗いていたんですけど、諦めないで調整してくれていたので復帰できたということもあると思います。


――そうして1年4カ月にも及ぶ休養の末、復帰を果たしたんですね。ようやく復帰戦に漕ぎつけた時は、それまでの過程があるだけに慎重になりそうですね。

高橋師　だから、この馬の経緯を全部分かってくれている難波騎手を乗せました。本当は初勝利を挙げた幸騎手に乗ってもらいたかったですけど、