ロバートソンキーと菊花賞に挑む伊藤工真騎手(C)netkeiba.com
今年でデビュー13年目の伊藤工真(30=美浦・金成)が、大きなチャンスをむかえた。GII神戸新聞杯の3着馬・ロバートソンキーとのコンビで、菊花賞に挑むのだ。いまだ重賞タイトルとは無縁だけに、ジョッキーとして自身を売り出す絶好のチャンスにも思えるが、当の本人は「まずは恩返しを」と謙虚に語る。ロバートソンキーとの出会いや、オーナーや調教師との秘話など、話を聞いた。
(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)
※このインタビューは室内の換気を行いながら、十分な距離を取り最小限の人数で実施しました。
目の前にあったコントレイルのお尻が一瞬で…
――トライアルのGII神戸新聞杯では18頭立て14番人気という低評価を覆して3着に好走。レース前はどのようなお気持ちでしたか。
伊藤工 人気はあまり無かったですが、経験の浅い馬ですし、秘めた能力はあると思っていました。ですから自分なりに中京芝2200mで好走するためのポイントなどをしっかりと研究して臨みました。
――2走前の新潟戦は2着でしたね。
伊藤工 1番人気に推されていたので悔しい結果でした。ただ当日の新潟はドシャ降りの雨で、水が浮くような特殊な馬場だったんです。決してロバートソンキーにとって向いている感じではなかったですし、良馬場ならどうだったんだろう…と。
――距離についてはどう見ていましたか? 1800mから2200mへと2ハロン延びましたが。
伊藤工 折り合いに心配のないタイプですし、少しずつ良くはなってきていたものの、あまりゲートが上手ではなかったので、距離が短くなるよりは延びた方がいいと思っていました。
――レースではスタートは五分に見えましたが、直後に挟まれる場面がありましたね。
伊藤工 はい。でも馬自身は怯まずに、スピードを落とすことなく走ってくれました。
神戸新聞杯のスタート直後を振り返り「馬は怯まず走ってくれた」(C)netkeiba.com
――馬だけでなく工真ジョッキーも手綱を引かずに冷静に対処していたように見えました。
伊藤工 そこまで危険な場面ではなかったですから。あまり馬に負担をかけずにクリアできればと思っていました。
――そのまま中団のインで待機して4角を回り、直線では迷うことなく外へ進路を取りました。
伊藤工 前にコントレイルがいたので、そこについていけば進路ができると考えました。
――直線でもしっかり脚を使い、ゴール直前までは2番手。最後はヴェルトライゼンデにクビ差交わされましたが、菊花賞の権利は獲得しました。
伊藤工 もちろん勝ちたかったです。ただ最低限の目標だった“菊花賞の権利”は取れて、重賞の舞台でも乗せてくださった保坂和孝オーナーや林徹先生に対して、一応の役目は果たせたかなと思いました。
――馬上から見て、ライバルのコントレイルの走りはどう見ましたか?
伊藤工 すごかったですね…。4コーナーでは