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【地方の怪物、種牡馬へ】“使命”を果たしたハッピースプリントへ、たくさんの「ありがとう」

  • 2020年10月23日(金) 18時01分
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▲復帰を目指してきたが、年齢を考慮し引退が発表されたハッピースプリント


北海道と南関東に所属し、地方競馬所属馬たちにとって最高の栄誉NARグランプリ年度代表馬に2度輝いたハッピースプリント。北海道の田中淳司厩舎時代には全日本2歳優駿などを勝ち、南関東に移籍後は、大井の森下淳平厩舎に所属し、南関東二冠馬(羽田盃、東京ダービー)となり、翌年には浦和記念を制して古馬のダートグレード競走を初制覇。中央馬たちにも真っ向勝負に挑んでいく姿は、多くの地方競馬ファンの心を打ち、愛され続けた馬だった――

(取材・文・写真=高橋華代子)

※文末には、ハッピースプリントに騎乗経験のあるM.デムーロ騎手から、種牡馬になる同馬へのエールも!

史上8頭目の南関の三冠馬誕生なるか…


 2013年5月に門別競馬場の田中淳司厩舎からデビューしたハッピースプリント。新馬戦から連勝したのちに、函館2歳Sやコスモス賞という芝でも接戦を繰り広げ、その後は再びダートに戻り、北海道2歳優駿と全日本2歳優駿を圧勝した。北海道時代の主戦は宮崎光行騎手。NARグランプリ2013・年度代表馬と2歳最優秀牡馬の二冠を獲得。

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▲全日本2歳優駿優勝時、鞍上は宮崎光行騎手


 3歳になると、大井の森下淳平厩舎へ移籍。「北海道の田中淳司先生やスタッフの皆さん、その当時からのファンの皆さんの思いを引き継ぐ形で関わらせて頂いたので、感謝の気持ちと、恥ずかしくない競馬をして気持ちに応えたいという思いがとても強かったです」(森下師)

 すでに『怪物』という異名もあったハッピースプリントは、金沢の吉原寛人騎手とコンビを組み、大井競馬場で実施した南関東クラシックの前哨戦・京浜盃、一冠目の羽田盃、二冠目の東京ダービーではいずれも単勝オッズが1.1倍という中で危なげない走りで快勝。

 厩舎開業4年目で、プレティオラスとハッピースプリントという2頭の東京ダービー馬を誕生させた当時34歳の森下師は、当時をこう振り返っていた。

「ハッピーは全てにおいて総合力が高いですね。こういうレベルの馬にはなかなか出会えないので、今までとは違う感覚で経験したことのない領域です。レースへの向かい方や人間の心の持ち方など本当にいい経験をさせてもらっていて、この馬に関わることで、僕自身も厩舎のスタッフたちも成長させてもらっています」(森下師)

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▲東京ダービーのパドック、鞍上は吉原寛人騎手


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▲単勝1.1倍の断然人気に見事応え、二冠目を達成


 三冠目のダートグレード競走ジャパンダートダービー。トーシンブリザード以来13年振り、史上8頭目の南関東クラシック三冠馬が誕生するか大きな注目も集まったが、中央のカゼノコにハナ差で惜しくも敗れて2着に涙を呑んだ。この年はNARグランプリ2014・3歳最優秀牡馬を受賞。

 それ以降も中央古馬の一線級たちに立ち向かい、2015年のフェブラリーSは優勝したコパノリッキーから0.6秒差の11着、帝王賞はホッコータルマエから0.7秒差の3着。浦和記念は宮崎騎手を背にして勝利を飾り、古馬になって初めてダートグレード競走を制覇。2015年はNARグランプリ年度代表馬と4歳以上最優秀牡馬を受賞。

蹄が変形していく疾患、しかも特殊なケース


 4歳秋以降からは、蹄が変形していく疾患との戦いが始まった。装蹄師さんたちをはじめとした多くの関係者にとっても経験がない特殊なケースだったという。

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