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【菊花賞】世界でも歴史的大記録である無敗の父子3冠達成

  • 2020年10月26日(月) 18時00分

人馬に備わっていたキャリアによって培われた自信


 1週前の3冠牝馬デアリングタクト(父エピファネイア)につづき、無敗の3冠馬コントレイル(父ディープインパクト)が誕生した。

 これでコントレイルは史上8頭目の牡馬3冠馬となったが、ディープインパクトに次いでの父子3冠達成牡馬は初めてだった。もちろん、父子そろっての無敗の3冠達成は世界でも歴史的な大記録になる。 

 日本と似たような3冠の体系が残るイギリスには史上15頭の3冠馬がいる。もっとも近いところでは1970年のNijinskyニジンスキーは11戦11勝で3冠達成。その前は1935年のBahramバーラムも9戦9勝で無敗の3冠馬に輝いているが、長い歴代の中、3冠馬の父は3冠馬ではない。無敗の父子どころか、父子3冠馬が存在しない。

 アメリカには、2018年のJustifyジャスティファイまで13頭の3冠馬がいる。1977年のSeattle Slewシアトルスルー(9戦9勝で3冠達成)など無敗の3冠馬もいる。一例だけ父子3冠馬はいて、1935年のOmahaオマハの父は、1930年の3冠馬Gallant Foxギャラントフォックスだが、さすがに父子どちらも無敗の3冠馬ではない。

 そうそう楽に菊花賞3000mは勝てない。良馬場とはいえかなり時計のかかる芝コンディション(直前の古馬3勝クラスの芝1200mが1分09秒7)だった。スタミナロスを避けたいほとんどの人馬が1周目のスタンド前の直線で内ラチから大きく離れた。

 レース全体の3等分したバランスは「62秒2−62秒6−60秒7」=3分05秒5。この芝コンディションにしては中盤1000mのラップが落ちなかったため、3歳の現時点でスタミナ能力に自信の持てないグループには厳しい3000mとなり、最後、9着以下に沈んだ10頭は力尽きた。勝ち馬から2秒0以上も離される結果になったが、こんな大きな差がついたのは2013年、不良馬場でエピファネイア(福永祐一)の5馬身差独走になった年以来になる。

 父ディープインパクトの菊花賞は、レース前半で行きたがって心配されたが、コントレイルもちょうど中間地点「11秒9−13秒1−12秒4」とペースが変化したあたりで少し口を割って行きたがるシーンがあった。すぐに鞍上の指示に納得してリズムを崩さなかった。「皐月賞、日本ダービー、神戸新聞杯」を、それぞれ異なるレース運びで勝ってきた自信は、福永祐一騎手だけでなく、コントレイル自身の自信でもあった。

 4コーナーを回る地点で、道中からぴたっとマークしてきたC.ルメール騎手の上がり馬アリストテレス(父エピファネイア)に並ばれ、最後まで突き放せなかったが、前に出られる場面はなかった。着差は「クビ」とはいえ総合力で上回った結果だった。心配されていた距離適性(スタミナ)もこの馬場で3000mを乗り切ったから、大きな死角ではなくなった。そこで、無敗の3冠馬に対する期待は一段と大きくなる。

 同じように7戦無敗の3冠馬となった2005年の父ディープインパクトも、8戦無敗の3冠馬となった1984年のシンボリルドルフも、ディープインパクトは次走の有馬記念で、シンボリルドルフは次走のジャパンCで負けている。コントレイルの次走予定は発表されていないが、果たしてどのレースになるのだろう。コントレイルは、おそらく父ディープインパクトの送った牡馬の最高傑作であり、ディープインパクトの残した最強馬にも近い。

 ある新聞のレース前の関係者アンケートで、やがて目標にして欲しいのは父の負けた「凱旋門賞」という声が圧倒的に多かったと聞いたが、凱旋門賞に合うタイプかどうかは、父に良く似たタイプだからこそ、大きく見解が分かれる未来展望だろう。

重賞レース回顧

史上8頭目の牡馬3冠馬となったコントレイル(写真奥)(c)netkeiba.com


 きわどく食い下がったアリストテレスは、同じエピファネイア産駒のデアリングタクトと同様、サンデーサイレンスの「4×3」。Sadler's Wellsサドラーズウェルズの「4×4」でもあり、4代母は1983年の英オークスを未勝利馬ながら大差勝ちしたSun Princessサンプリンセス。トップクラスとの対戦は初めてだったが、絶賛されるコントレイルを最後まで追い詰めてのクビ差2着だから、すばらしい。最初、3代母バレークイーンの一族は早い時期にフサイチコンコルドなどがいきなり大仕事をする傾向があったが (サンプリンセスと同じように)、現在はそんなことはない。この秋の最大の上がり馬はまだまだ成長する。

 秋華賞2着のマジックキャッスルと同じように、大きく巻き返して3着した国枝厩舎のサトノフラッグ(父ディープインパクト)、4着ディープボンド(父キズナ)、さらに5着に突っ込んだブラックホール(父ゴールドシップ)は、春から連続したクラシック路線の注目馬らしく、厳しい内容の求められた菊花賞で人気以上の結果を残してみせた。逆転はならなかったが、それぞれ納得の結果だろう。

 2番人気ヴェルトライゼンデ(父ドリームジャーニー)はコントレイルをマークして進んだが、直線伸びず3冠すべて善戦止まりにとどまってしまった。古馬になってから宝塚記念、有馬記念を制した父と同様、これからの充実、活躍に期待したい。

 3番人気のバビット(父ナカヤマフェスタ)は、離れた2番手で流れに乗ったが、細くは映らなかったもののデビュー以来最少馬体重の450キロ。ちょっと元気がなかった。

 スタミナ型とされたヴァルコス(父ノヴェリスト)は、コースロスを避け、あえて前半は内寄りを進んだが、馬場の内側は予測以上にタフな状態だったのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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