▲「ウインブライトは僕らしい馬」パートナーへの思いを語る (撮影:高橋正和)
男気あふれる松岡正海騎手が、8カ月ぶりにターフへと戻ってきました。2月8日の東京6Rで落馬し、左大腿骨骨折で長期休養。復帰への道のりは険しく、万全とは言えないなかでも、「ウインブライトには僕しかいない」と、このタイミングでの復帰を決断しました。
「漫画に出てくるようなコンビっていいなと思いません?」と松岡騎手。いまやウインブライトは、そんな唯一無二の存在に。天皇賞・秋から、その先の夢へ――。松岡騎手の秘めたる思いに迫ります。
(取材・文=不破由妃子)
※このインタビューは電話取材で行いました。
寸分の狂いもなく調整してきた自負
──松岡騎手と時を同じくして、ウインブライトも中山記念(7着)を最後に蟻洞(ぎどう)により休養。天皇賞・秋で復帰となるわけですが、中間はずっと村田一誠騎手が騎乗されていました。状態についてはどのように聞いていましたか?
松岡 休み明けとしてはいいと思うと聞いていました。僕は明後日(10月22日)から乗るんですけど、とにかくあの馬は調整が大事。そこはずっとこだわってきたところです。
なんとか強い馬を負かしたいと思ったとき、競馬の上手さを生かすことと、中間の調整パターンだけは譲れなかった。ステイゴールドの産駒で、瞬発力では勝負できない。じゃあ、どうしたら瞬発力に優れた馬たちに勝てるのか。ずっと考えながら、ここまできましたからね。
──松岡さんが描く譲れない調整パターンがあるんですね。
松岡 はい。状態をつかむことはもちろんですが、自分の頭のなかにいくつか調整パターンを用意していまして。牧場から帰ってきたときの仕上がりに合わせて、3週前からの追い切りメニューを自分の頭のなかで描いて、そこから畠山先生と相談します。
香港も含め、これまで勝ってきたレースでは、寸分の狂いもなく持っていくことができた自負はありますね。
▲昨年暮れの香港C優勝時、春に続き香港のG1・2勝目 (撮影:高橋正和)
──生き物を相手に「寸分の狂いもなく」とは驚きです。それだけウインブライトを知り尽くしている証ですね。そこまでの濃密な仕事ができるというのは、やはりジョッキーとして最大のモチベーションですか?
松岡 そうですね。そういう仕事がしたいとずっと思ってきました。漫画に出てくるようなコンビっていいなと思いません? それこそ『ありゃ馬こりゃ馬』の氷室翔とシンケンのような。自分にもシンケンのような1頭がいたらいいなとずっと思っていたんです。
たとえば武豊さんであれば、そういう馬がいっぱいいるんでしょうけど、僕は豊さんのように馬に対してスマートには生きられない。そういう意味でも、ウインブライトは僕らしい馬なんじゃないですかね。走るときは走るし、走らないときは全然走らないみたいな。