▲2人の証言から杉山厩舎の快進撃の訳を探ります (撮影:桂伸也)
デアリングタクトがJRA史上初となる無敗での牝馬三冠を達成! そして、16番人気ながら怒涛の追い込みで5着に食い込んだミスニューヨーク。秋華賞をにぎわせた2頭は、どちらも杉山晴紀調教師(栗東)の管理馬です。
そこで今回、デアリングタクトの松山弘平騎手とミスニューヨークの長岡禎仁騎手がそろって登場。後半では、開業5年目で三冠トレーナーとなった杉山師について、2人の証言から快進撃の訳を探ります。さらに、松山騎手が“脅威”と語る、長岡騎手ブレイクの秘密も!
(取材・構成=不破由妃子)
1勝クラスまではあえて担当を変える
──杉山調教師は、開業5年目で三冠トレーナーに。おふたりから見て、どんな先生ですか?
松山 馬のことも人のことも、本当によく見ていらっしゃるなと思いますね。デアリングタクトでいえば、競馬に乗っている僕しかわからないような些細な変化も気づいていらして、言われたときには驚きました。
──どういった変化ですか?
松山 すごく細かいことなのですが、秋華賞前の調教のときから、馬が左に流れているような感覚があって。それまではどちらかというと右にモタれることが多かったのですが、秋華賞前は左だったんです。
本当によく見ていないとわからない微妙な変化なのに、先生はちゃんと気づいていらした。あとは、馬や人のせいにしない。すごく男らしい先生だなと思いますね。
長岡 調教でも競馬でも、僕たちの意見をすごく尊重してくださいますよね。
松山 うん、そうだね。
長岡 その上で調教メニューを組んでくれたり。意見を取り入れてくださるのですごく遣り甲斐がありますし、そのぶん馬もよくなっていって、それが好循環を生んでいるように思います。
松山 コミュニケーションが取りやすい先生だよね。自分の思っていることを言いやすいし、先生もちゃんと伝えてくれる。
長岡 そうですね。受け入れてくださることがわかっているので、先生の顔色をうかがうことなく、悪いときは悪いって言えます。そのうえで、どうすればいいかというコミュニケーションが取れるので、すごく気持ちよく仕事をさせていただいてます。
▲三冠のポーズをとる松山騎手と杉山調教師 (C)netkeiba.com
──厩舎全体を通して、年々勝ち星を伸ばしている源といいますか、どういったところに杉山厩舎ならでは厩舎力を感じますか?
松山 僕は長岡ほど知らないのですが、厩舎の雰囲気がいいなぁというのはいつも感じます。
長岡 それはありますね。ひとりひとりが責任を持って仕事をしていらっしゃる感じがすごくしますし。杉山厩舎は持ち乗り助手さんが多くて、厩務員さんが少ないので、ほとんどの人が馬に乗ってるんですよ。だからみなさんモチベーションが高いですし、ひとりひとりが自分の馬を走らせようという気持ちが強い気がします。
あとは、厩務員さんにしても持ち乗り助手さんにしても、1勝クラスくらいまではコロコロ担当が変わるんです。それは杉山厩舎の特徴だと思いますね。