三冠達成の単独インタビューと聞いて、取材現場に登場したコントレイルの金羅隆持ち乗り助手。しかし、これは厩舎のボスである矢作芳人調教師が仕掛ける壮大なドッキリ! 騎手とも調教師とも違う重圧の中で三冠達成に導いた金羅助手を労おう! というのが本当のテーマ。
最終回は、コントレイルを三冠に導いた金羅助手の仕事ぶりに迫ります。金羅助手の強みは、コントレイルをしっかりとコントロールする高い調教技術。その信念の強さに、矢作調教師から「自分もまた馬をやってみたくなった」と最高の誉め言葉も。そして最後に、“三冠調教助手”となった金羅さんへ、矢作調教師から熱い言葉が贈られます。
(取材・構成=不破由妃子)
「金ちゃんは簡単に楽な道を選ばない」
──金羅さんは、所属していた佐藤正雄厩舎が2018年2月いっぱいで解散となり、同年3月から矢作厩舎へ。現在のスタッフのなかでは一番厩舎歴が浅いそうですが、そんな金羅さんがコントレイルの担当になった経緯は?
矢作 金羅に合うと思ったから抜擢した……と言いたいところなんだけど、うちの厩舎の場合、そういうかっこいいエピソードがないんですよ。ホントに偶然なんでね。
金羅 僕が担当していた2頭がたまたま2頭とも勝った週があって、週明けから放牧に出るということで手が空いていたんです。そのタイミングでコントレイルが入ってきて。
矢作 基本的には、馬が放牧から帰ってきた時点で、手が空いている人間が担当する。なぜなら、矢作厩舎は全員がエースで4番だから。それがうちの強味だと思うし、俺の主義でもある。
どの厩舎にも、いわゆるエース厩務員といわれるベテランがいて、期待のディープインパクト産駒ともなれば、普通はそういう人が担当するんだろうけど、うちはそういうことが一切ない。だから、コントレイルにしても、うちの厩舎の自然な流れのなかで金ちゃんが担当になったというだけで。でもさ、記事になったときに「偶然です」ってかっこ悪くない(笑)?
▲矢作「記事になったときに“偶然です”ってかっこ悪くない(笑)?」 (C)netkeiba.com
──むしろかっこいいですよ。先生はいつも「全員がエースで4番」とおっしゃっていますが、なるほど、そうやってみんながエースになっていくんだなと改めて合点がいきました。
金羅 実際、矢作厩舎の持ち乗り助手と厩務員さんは、ほぼ全員が重賞を勝っていますよね。そんな厩舎、なかなかないですよ。
矢作 そういえばそうだな。ずっと攻め専(担当馬を持たない調教専門の助手)をやっていて、持ち乗りになって日が浅い渋ちゃん(渋田康弘調教助手)以外は全員が勝っているのか。
──本当にすごいことです。「全員がエースで4番」は理想ではなく、矢作厩舎では現実なんですから。そんななか、コントレイルの担当が金羅さんでよかったなと思うのはどんなところですか?