▲休養中に訪れたチャンピオンヒルズ(滋賀県)にて
一年前の12月3日、大井競馬の第6Rで3頭が落馬する事故が起こりました。前を走る馬が転倒。カズノセンヒメに騎乗していた達城騎手は、うまく回避したかに思えたが、後続の馬がぶつかり、左足の大腿骨骨折と左手の開放骨折という重傷を負いました。致死量に近い出血量で、一時は昏睡状態だったと言います。
それから一年。想像を絶する苦しみを乗り越え、今月7日の大井開催での復帰を控えている達城騎手が、直前の心境を語ってくれました。
(取材・文=赤見千尋、写真提供=達城龍次)
※このインタビューは電話取材で行いました。
地獄の2日間…うわごとのように「もう辞める」
――大きな怪我により約1年間の休養がありましたが、12月7日(月)からの大井開催でいよいよ復帰されると伺いました。今の心境はいかがですか?
達城 怪我をした時には「もう乗りたくない」と思いましたけど、時間と共に乗りたい気持ちが強くなっていって、今は復帰するのがすごく楽しみです。1年乗れなかったわけですから、その分楽しみが大きいですね。
――昨年12月3日の大井6レースで落馬して、相当大きな怪我だったそうですが、詳しく伺ってもいいでしょうか?
達城 前の馬が転んでしまって、その影響で落馬したんですけど、上手く落ちられたかなと思ったんです。でも次の瞬間激痛が走って…。後ろの馬が僕を避けきれずにぶつかられてしまいました。左足の大腿骨骨折と、左手の開放骨折だったんですけど、とにかく大腿骨の方が痛くて。
これまで40回くらい骨折していて、痛みには強い方だと思うんですが、相当痛かったです。救急隊員の方が来てくれた時には足が痛すぎて、「手の方は切り傷ですから大丈夫です」って言ってました。手も開放骨折だったのに(苦笑)。
――足も手も相当大変な怪我だったんですね。
達城 出血がものすごかったです。主に大腿骨の方からですけど、1.5リットルくらい出てしまって。輸血の承諾サインはしたんですけど、結果的にはドクターの判断で輸血はしなかったんです。輸血なしで1.5リットルって言ったら致死量に近いですから、しばらくめまいが続いて辛かったですね。左足はパンパンに腫れてしまって、競輪選手並みの太さくらいまで腫れていました。
▲大腿骨のCT画像
▲入院直後は昏睡状態にも
▲内出血でパンパンに腫れ上がった太もも
――すごい腫れ方ですね。写真を拝見すると、とても痛そうです…。
達城 怪我をした直後も、ものすごく痛かったんですけど、10分くらいすると痛みが引いて来て。おそらく脳内からホルモンが出て痛みの感覚が和らぐみたいです。
怪我をした直後に医務室に運ばれた時、救急車が来るまで何人ものジョッキーが様子を見に来てくれたんですけど、その中で和田譲治君が、「龍次さん、手術後の痛みは覚悟しといた方がいいですよ」って言っていて。和田君も大腿骨を怪我して長いこと休んでいたので、まったく同じではないですけど似たような境遇を経験していますから。手術して全身麻酔から起きた後の痛みは本当に地獄でした。
――その時間をどうやって耐えたんですか?
達城 本当に地獄だったのは2日間くらいで、ずっと叫んでいたら声が枯れました。その時、うわごとのように「もう辞める!」って言っていたみたいです。痛み止めもけっこう入れてもらったんですけど全然痛くて、体中思いっきり力を入れていないと我慢出来ないくらいの痛みでした。あまりに力み過ぎて、大胸筋とかが筋肉痛になりましたね。
でも術後は次の日からリハビリが始まるんです。今の医療の考え方では、動かさないと動かなくなってしまうという感じらしくて。これはもう経験した人にしかわからないと思いますが、とにかく痛かったです。