少しずつ変化しつつある種牡馬勢力図
昨日の川崎競馬のメインは、「全日本2歳優駿」(JpnI)であった。1着賞金4200万円は地方競馬の2歳ダート重賞としては最高峰で、中央勢5頭を含む全14頭が参戦してきた。我がホッカイドウ競馬からも、11月3日のJBC2歳優駿を制したラッキードリームを筆頭に、同レース2着のトランセンデンス、10月14日の鎌倉記念に遠征し勝利を収めた実績のあるリーチ、11月15日に盛岡・南部駒賞を勝ったギガキングの4頭がエントリーした。
人気の中心は中央勢であった。1番人気に支持されたのは、デュアリスト。今年デビューを迎えたミッキーアイルの初年度産駒で、目下3連勝中だ。12月2日には園田に遠征し、兵庫ジュニアグランプリを1番人気で制しており、ここでは1.9倍と本命視されていた。
続く2番人気は、船橋所属のアランバローズ。この馬も4連勝中で、前走のハイセイコー記念(大井)、前々走ゴールドジュニア(大井)と地元南関東の重賞を連破してここに臨んできた実力馬で5.6倍。3番人気には中央のバクシンで6.1倍。4番人気に中央のタイセイアゲインで7.9倍、次にホッカイドウ競馬のラッキードリームが5番人気で12.6倍と続いた。
デュアリストに人気が集中し、以下はやや支持が散らばる予想の難しいレースとなった。ここに至る路線はそれぞれ異なり、対戦実績のない馬同士の実力の比較は難解なのだ。
デュアリストは川崎と同じ左回りの中京ダート1400mヤマボウシ賞をレコードで制したスピードが評価され、断然の主役に抜擢されたものと思われる。距離は200m延長になるが、コーナー4つの小回りコースならば息が持つだろうと大方が予想したのである。
だが、いざゲートが開くと、まずアランバローズが飛び出し、その後をランリョウオーが追う。そして、中央馬のルーチェドーロ、デュアリストと続き、1コーナーから2コーナーにさしかかるあたりで、レースは縦長の展開となった。
デュアリストは好位で先行する2頭を追ったものの、4コーナーから直線にかけて失速し、レースはアランバローズが独走態勢で完勝であった。2着にランリョウオー、3着にルーチェドーロと、先に行った馬がそのまま逃げ切る形で決着した。
アランバローズは父ヘニーヒューズ。船橋・林正人厩舎の管理馬で鞍上は左海誠二騎手。馬主は猪熊広次氏。これで5戦5勝、重賞3連勝で2歳ダート部門の頂点に立ったことになった。
一方、1番人気ながら7着に敗退したデュアリストは父ミッキーアイル。今回は直線で失速したものの、適距離ならば今後も活躍できるだろう。シニスターミニスター産駒のラッキードリームは初コースに戸惑ったのか、残念ながら10着に終わったが、まだ見限れない。
ところでこれら3頭(ヘニーヒューズ、ミッキーアイル、シニスターミニスター)の種牡馬は、産駒の活躍によって、生産地では人気が高く、すでに来シーズンの種付け権利が「満口」となっている。他にはアジアエクスプレス、エスポワールシチー、エピファネイア、カリフォルニアクローム、キズナ、コパノリッキー、シルバーステート、ダノンバラード、ドゥラメンテ、ドレフォン、ホッコータルマエ、リアルスティール、リオンディーズといったところが満口である。
来季の種付けは既に満口となっているヘニーヒューズ(撮影日:2018年2月)
また社台スタリオンで繋養されるルヴァンスレーヴも、すでに人気が高く満口だ。
ディープインパクト、キングカメハメハの両巨頭亡き後、種牡馬の勢力図も少しずつ様変わりしており、ダート競走や地方競馬の主要レースも、種牡馬の評価を決める大きな基準になってきている。ダート寄りの産駒成績ながらアジアエクスプレス、エスポワールシチー、ホッコータルマエなどの人気の高さは、好調な地方競馬の実情も反映していそうだ。
因みに昨日の川崎競馬は1日の売り上げが29億4562万円で、前年比126.8%となり、コロナ禍にありながら、依然として馬券は売れ続けている。