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ばんえい競馬で更新・達成された記録

  • 2021年01月12日(火) 18時00分

売上最高額の更新と快記録の達成


 ばんえい競馬が盛り上がっている。高知競馬のどん底から売上10倍以上というV字回復には到底及ばないものの、ばんえい競馬の復活も奇跡的といえるほどだ。

 昨年末、ばんえいダービーが行われた12月29日の1日の売上6億9728万3400円は、1979年10月21日の記録だったばんえい競馬1日の売上最高額を41年ぶりに更新。それ以上に驚いたのは、ばんえいダービーの売上1億7943万5600円が、ばんえい競馬の1レースの売上最高額だった92年12月23日の農林水産大臣賞典(現・ばんえい記念)の記録(1億3891万4700円)を大幅に更新したこと。

 ご存知のとおり、ばんえい競馬は1トンの重量で争われるばんえい記念が最高峰。ばん馬はサラブレッドに比べ成長がゆっくりで、3歳馬によるばんえいダービーは格付こそBG1(ばんえいグレード1)ではあるものの、サラブレッドのダービーほど注目度は高くはない。たしかに年末で競馬全体が盛り上がる時期であったとはいえ、そのレースで1レースの売上レコード更新したのはすごい。

 ばんえい競馬は帯広市単独開催となった07年以降も売上が下がり続け、バブル以降でもっとも落ち込んだのは2011年度で、1日平均の売上は6728万円余り。当時、1日の売上が1億円を超えたのは1年のうち数日しかなく、1億円を超えただけでも喜んだのを記憶している。

 それが2019年度には1日平均で2億円を少し上回るまでに回復。さらに2020年度は、発表されている4月〜12月の1日平均で、前年同期比153.0%の3億円超となっているのには驚くばかり。どん底だった2011年の4.5倍ほどになった。

 他の地方競馬がJRA-PATによる売上の恩恵があるのに対して、ばんえい競馬だけはJRA-PATでの発売がない。それでいてこれほどの売上アップは、スマホがほとんどの国民に普及し、馬券を買って(投票して)レース映像の生配信を見るという行為が誰にでも容易になったことが大きな要因と思われる。さて、3月21日に行われるばんえい記念はどれほどの売上になるか楽しみだ。

 ばんえい競馬では、馬券の売上だけでなく、馬による快記録も達成されている。

 現役の絶対王者オレノココロは、今シーズンの重賞では2着3回、3着2回と勝ちきれないでいたが、1月2日の帯広記念を勝利。自身がもつばんえい競馬における重賞通算最多勝記録を更新する25勝目となった。

 オレノココロは明けて11歳。正式発表はないが、今シーズンのばんえい記念を最後に引退が噂されている。さらなる重賞最多勝記録更新に加え、最高峰のばんえい記念には、スーパーペガサスに並ぶ歴代最多の4勝目がかかる。

 翌3日に行われた天馬賞はメムロボブサップが勝利。同馬は3歳三冠に続いて、4歳シーズン三冠も制した(ばんえい競馬の1シーズンは4月から翌年3月)。

 ばんえい競馬は帯広市単独開催となった07年度から、それまでの3歳三冠に加え、2歳シーズン、4歳シーズンそれぞれの三冠が新たに設定された。以降、2歳から4歳シーズンまでの計九冠を制した馬はまだいないが、今年9歳になったセンゴクエースは最多の八冠を制している。唯一勝てなかった3歳一冠目のばんえい大賞典は、残念なことに競走除外だった。

 そして前述のとおり3歳と4歳シーズンの三冠を制したメムロボブサップは、2歳シーズン二冠目のヤングチャンピオンシップで3着に負けただけ。天馬賞の勝利で、センゴクエースの八冠に並んだ。

 現役最強のオレノココロは今シーズンのばんえい記念(3月21日)を最後に引退が噂され、同じ11歳のライバル、コウシュハウンカイはすでに今シーズン限りでの引退が発表されている。

 5歳になったメムロボブサップの来シーズンは古馬重賞戦線への本格参戦が期待され、世代交代が一気に進むばんえい競馬の古馬戦線をどの馬が引っ張っていくことになるのか、今から注目したい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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