▲10月10日から始まった一般客の限定入場は約3カ月で幕を降ろした(写真は同日の東京競馬場、撮影:下野雄規)
コロナ禍で揺れた2020年が終わり、既に21年1月も下旬に入ったが、北半球が真冬を迎えて、各国の感染問題はさらに深刻化している。日本でも昨年11月後半から感染が確認される事例が目に見えて増え始め、政府・各自治体も対策強化に追い込まれている。昨年12月には菅義偉政権の看板政策だった「Go To Travel」キャンペーンが全面中断となり、年明けには首都圏1都3県知事の要請に押されて1月8日に政府は該当地域に緊急事態宣言を発令。13日には近畿・東海と栃木、福岡の計7府県に対象地域を拡大した。
これを受けて、中央競馬でもまず9-11日の中山開催が無観客に転換し、16日からは開催中の中京、同日の小倉も無観客態勢に入った。結局、10月10日の東京、京都、新潟から始まった一般客の限定入場は約3カ月で幕を降ろした。
これに先立ち、地方でも南関東で相次いで無観客態勢入りが発表され、名古屋も14日から無観客開催となった。ただ、13日から拡大された対象地域のうち、兵庫の姫路競馬場では観客入場が続くなど、20年春の緊急事態宣言発令時とはやや様相が異なるが、21年もコロナ禍の下での競馬はしばらくは続きそうだ。
人馬の移動制限には至らず
中央では昨年、2月末から無観客態勢に入り、4月7日の緊急事態宣言後は、4月18日を期して様々な感染防止措置が取られた。最も強い手段はいわゆる「自ブロック」限定出走で、オープンと障害以外は、美浦所属馬は原則として東日本のメイン開催場に、栗東所属馬は西日本のメイン開催場に出走するのが原則とされた。一方、ローカル場は東西とも参戦が可能だった。
また、騎手が同じ週に別な場で騎乗することも差し止めとなった。中央の競走編成上、GIシーズンは、GIのない側のメイン場の重賞を土曜に施行する形が取られていた。GIの同日に施行しても、売り上げが期待できないためで、騎手側からすれば土日連続で重賞騎乗が可能になる。
こうした組み方は、土曜の開催終了後、騎手が長距離移動することを前提としていたが、移動のリスクを考慮して差し止められた。また、調整ルームに騎手を集める従来の方式が、感染拡大につながる懸念を考慮し、「認定調整ルーム」として、事前に申請した場合、自宅やホテルからの競馬場入りが可能とされた。
今回は9カ月ぶりの緊急事態宣言発令となるが、JRAが取った措置は宣言対象地域の開催競馬場の無観客化と、現金発売施設の閉鎖のみで、人馬の移動制限はなかった。この点について、吉田正義・経営企画担当理事は「昨春は何が危険なのか、わかっていない部分が大きかった」と話した。