前哨戦を制して桜花賞へ挑むシゲルピンクルビーと和田竜二騎手(C)netkeiba.com
一昨年の桜花賞はシゲルピンクダイヤに騎乗し2着だった和田竜二騎手。今年はその半妹、シゲルピンクルビーとともに桜の舞台へ臨みます。姉の雪辱もかかった今週末の桜花賞への意気込みや、今回タッグを組む、盟友である渡辺薫彦調教師について伺いました。
(取材・文=不破由妃子)
自分で乗りたがって、全然乗せてくれへん(笑)。
──フィリーズレビューでは、8番人気シゲルピンクルビーで人気馬たちを撃破。初騎乗でしたが、どんなレースをイメージしていましたか?
和田 いい枠(3枠5番)に入ったので、スタートだけ決めて、あとは新馬を勝ったときのような乗り方をしようかなと思っていました。新馬戦は僕が乗ったわけではないけどね。
──新馬戦の鞍上は幸騎手でしたね。先に抜け出した和田さん(2着ゼリア)をゴール手前で差し切って。
和田 そうでしたね。すごくいい勝ち方だったし、いい決め手を持っている馬だなと。
──フィリーズレビューでは、イメージ通り、スタートが決まって。
和田 うん、ゲートは上手ですね。お姉ちゃん(シゲルピンクダイヤ)もゲートに入らないだけで、スタート自体は速いんですよ。
──最初のコーナーまで、すごく姿勢を低くして誘導されていたのが印象的です。
和田 思ったより出てくれたので、一番いいところで流れに乗せたかったし、そのためには下げ過ぎたらアカンなと思って、周りを見ながら位置を取りにいきました。あの馬は、ちょいちょい小出しができる脚を持っているから、レースが作りやすいんです。だから、行き過ぎでもなく、タメ過ぎでもなく、理想的な形で運べましたね。
初コンビのフィリーズレビューは「理想的な形で運べた」(C)netkeiba.com
──直線は、最後にもう一段階、ギアが切り替わったような走りに見えました。
和田 ヨカヨカ(2着)が内から抜けてきそうなタイミングで、こっちはまだ進路を探していて。外に出すためにワンテンポくらい遅れたので、どうかな…と思ったんですけど、そこからすぐに加速してくれて、ゴール直前にもう一回グイっと伸びた感じでしたね。
──お話を伺っていると、乗りやすそうな馬ですね。
和田 乗りやすいです。調教でもコントロールが利くし、普段から優等生みたいですよ。
──最終追い切りは、いつも渡辺調教師自ら騎乗されていますね。
和田 自分で乗りたがって、全然乗せてくれへん(笑)。
追い切りでシゲルピンクルビーに騎乗する渡辺調教師(撮影:井内利彰)
──ピンクダイヤも、渡辺調教師が付きっ切りで調教をつけていますよね。
和田 そう、あの馬は大変なので、あんまりほかの人が乗らないほうがいいんです。
“ナベちゃん”の厩舎は人も馬もハッピー!
──そうなんですね(笑)。渡辺調教師とは気心の知れた間柄かと思いますが、調教師と騎手という立場でタッグを組んでの重賞制覇は感慨深いものがあるのでは?
和田 そうですね。最近は年下の調教師もいっぱいいて、子供の頃から知っているような人でも、僕らからしたら「先生」ですからね。だから、ちょっとこっぱずかしさがあるというか。渡辺先生もそうなんじゃないですかね。
──普段の呼び方も「先生」?
和田 いいえ、ナベちゃんです(笑)。
──ですよね(笑)。意思の疎通も図りやすいでしょうし、何よりファンとしては、おふたりのタッグが見られるだけでもうれしいです。
和田 ナベちゃんは癖しか言うてこないんですけど、しっかり管理しているから、だいたい言われた通りの感じで。自分で乗っているから、よくわかっているんだと思います。厩舎スタッフもしっかりしているし、渡辺厩舎自体、すごく雰囲気がいいですよ。みんな楽しそうに仕事をしているし、馬もハッピーな感じがします。
──姉妹の共通点と相違点は、どんなところに感じますか?
和田 共通点は、やっぱり決め手があるところかな。ダイヤはGIでも見劣らないくらい迫力のある馬なので、ルビーもそうなればいいなと思います。ただ、ルビーはちょっと喉というか、息遣いが気になる感じですね。まだ1400mを2回と1600mを1回しか走っていないから何とも言えないですけど、違いはその点くらいですかね。
姉・シゲルピンクダイヤとの共通点は決め手があるところ(ユーザー提供:モエロウエクラさん)
──フィリーズレビューのあと、「まだ課題もあるけど…」とおっしゃっていましたが、具体的にはどういった点が課題ですか?
和田 やっぱり距離がもつかどうかでしょうね。外回りの1600mと内回りの1400mは、流れも含めて全然違いますから。折り合いはつくので上手には走れると思いますが、本質的な距離適性という意味で、あと1ハロンがどうか。そのあたりを考慮して乗るかどうかは、ナベちゃんと相談ですね。
──今年の力関係についてはどう見ていますか?
和田 やっぱり上位の馬たちは強いと思いますよ。ただ、隙がないかというと、そうでもないような…。作戦は枠を見てからになりますが、どういう流れになるのか、メンバー的にちょっと読みづらい感じがしています。まぁ僕は僕で、自分の競馬をするだけですけどね。
──最後にシゲルピンクルビーの可能性と、桜花賞に向けた意気込みを。
和田 馬にとっては次が試金石ですね。ただ、前走はキャリアが浅いなかでも勝ってくれましたし、ポテンシャルは間違いなく高いので、GIの舞台でも見劣りはしないと思います。ここで距離の壁を超えていければ、その後の楽しみも広がっていきますしね。“森中オーナーにGIを”という気持ちは厩舎も僕も同じなので、ぜひともファンのみなさんの応援であと一押しを!
(※文中敬称略)