▲今回も「〇×」でふたりのホンネに迫ります (撮影:桂伸也)
新人女性ジョッキーふたりの対談が実現。【レース】【騎手】【厩舎】【プライベート】というジャンルで、それぞれ3つの質問を投げかけます。それに「○」「×」で答えていただき、知られざるホンネに迫ろうというのが今回の企画。
第3回のテーマは【厩舎】です。古川騎手は矢作芳人厩舎(栗東)、永島騎手は高橋康之厩舎(栗東)にそれぞれ所属していますが、女性騎手が来たことで厩舎に変化はあった? 今回はそのあたりを、〇×トークで探っていきます!
(取材・構成=不破由妃子)
Q1「私は、厩舎の箱入り娘です!」
▲照れながらも「〇」をあげた古川騎手 (撮影:桂伸也)
古川 厩舎実習のときから、先生と厩舎のスタッフの方々にはいつも気にかけていただいています。晩御飯が用意されていないときは、いろんな方がご飯に連れて行ってくださったりして。仕事の面だけではなく、日常生活の面でも本当にお世話になっています。
──矢作先生、古川騎手のことをすごく大事にされていますものね。それは見ているだけで伝わってきます
古川 はい。先生は、私の今後の騎手人生のことを第一に考えたうえで、すごくいろいろなことを計画的に考えてくださっていて。本当にありがたいです。
▲一方の永島騎手は「×」、その理由とは? (撮影:桂伸也)
永島 私も厩舎スタッフの方々には、本当によくしていただいています。ただ、私の厩舎には、もともと女性のスタッフの方が3人もいるんです。
──それは珍しい。ということは、高橋康之厩舎にとって、厩舎に女性がいるのは至って日常なんですね。
永島 そうだと思います。だから、いい意味で私だけが特別という感じではなくて。女性とか男性とか関係なく、すごくよくしてくださいますし、みなさんと仲良くさせていただいています。
──女性スタッフのなかには、年齢が近い方もいらっしゃるのですか?
永島 一番年齢が近い方が30代前半なので少し離れていますが、馬も乗る方なので、騎乗面に関してもアドバイスをくださったりして、すごく心強いです。私にとって、お姉さんのような存在ですね。
Q2「私が所属したことで、新たに加わったor変わった厩舎のルールがある」
▲この質問にはそろって「×」を (撮影:桂伸也)
永島 私の厩舎では、そういうのはないです。
古川 私の場合も、特別なルールができたわけではないんですけど、助手さんが調教終わりに着替えるときに、「今から着替えるね」と一声を掛けられるようになりました。確認しておかないとって(笑)。
──ルールというより、デリカシーの強化ですね。高橋厩舎では、永島騎手のために先生が木馬を輸入されたとか。ルールではありませんが、変化のひとつですよね。
永島 はい。先生が厩舎の2階に木馬を用意してくださいました。それを使って、厩舎実習の頃からずっと指導していただいています。
──おふたりから見て、師匠はどんな方ですか?
古川 矢作先生は、あらゆることに造詣の深い方で、国内外を問わない競馬の知識量はもちろん、厩舎運営についても、やはりリーディングトレーナーは違うなと常々感じさせられます。
──矢作先生は、とてもバイタリティーのある方ですよね。
古川 そうですね。厩舎の雰囲気もとても明るいので、私も毎日楽しくお仕事をさせていただいています。
永島 高橋先生は普段からすごく優しい先生で、馬乗りに関しても、私が疑問に思ったことは細かく教えてくださいますし、私があまり上手く理解できないときは、わかるまで何度も説明してくださいます。(※高橋調教師は、池江泰郎厩舎所属としてデビューした元ジョッキー)
デビューしてからは、私が騎乗したレースはすべてチェックして、火曜日などに「ここはこうしたほうがよかったんじゃないか」など、ひとつひとつアドバイスをくださったり。とにかく馬乗りに関しては、すごく真っ直ぐな先生です。馬から離れると……ちょっと面白い先生です(笑)。
古川 高橋先生には、学校生の頃にまなみちゃんと一緒にご飯に連れていってもらったことがあります。優しくて、冗談とかもすごくおもしろくて。
永島 ツッコミもボケもおもしろいです(笑)。
▲ふたりが「面白い先生」と証言する高橋調教師 (C)netkeiba.com
古川 まなみちゃん、時々おもしろい呼ばれ方してるよね。
永島 あ、はい。“お主”って呼ばれます(笑)。
──オヌシ!?
永島 初めてお会いしたときから明るい先生でしたが、最初にそう呼ばれたときは、さすがに「えッ!?」と思いました(笑)。
──永島騎手の世代では、なかなか聞かない呼び方ですものね(笑)。
永島 はい(笑)。競馬学校時代に1週間の研修があったのですが、初対面でいきなり“お主”って呼ばれて。ビックリしすぎて、その日の夜、さっそく古川さんに報告しました(笑)。
ただ、私だけではなく、厩舎のスタッフさんのこともそう呼んでいるのを聞いたことがあるので、先生にとっては普通のことなんだと思います。
──高橋先生、おもしろい(笑)。ちなみに、師匠に怒られたことはありますか?
古川 あります。競馬で指示通りの騎乗ができなかったときなど、厳しい指導を受けることがあります。
先生がよくおっしゃっているのは、「見ている人が納得するようなレースをしなさい」ということ。馬主さんや厩舎関係者の方は、私の競馬を見て評価をしてくださるわけなので、そういった方たちが納得してくださるようなレースをするようにと常々言われています。
──怒られるときは、けっこうガツン! ときますか? それとも淡々と?
古川 けっこうガツンと(苦笑)。ただ、私もそのほうがいいんです。とはいえ、周りの方から見ると、(兄弟子の)坂井騎手に比べれば私への怒り方は甘いそうです(笑)。
──それは仕方がないような(笑)。永島騎手はどうですか?
永島 学校生の頃の実習中に、厩舎に新馬が入ってきたんです。先生が乗っていた馬が新馬だったのですが、新馬にとっては初めての環境なので誘導してあげる馬が必要で、本来であれば、私が誘導しなければいけない立場でした。
でも、私の考えが甘くて、新馬のことを考えずにスタスタ行ってしまって。そのときは「もうちょっと考えるように!」と怒られました。
Q3「厩舎のスタッフさんのなかに、保護者的な存在がいる」
▲この質問は迷わず「〇」を選んだふたり (撮影:桂伸也)
古川 特定の方というより、厩舎のみなさんが本当にかわいがってくださって。趣味の話や他愛のない話であっても、私に合わせた話題を振ってくださって、私が楽しく過ごせる環境を作ってくださっているのを感じます。みなさん本当に「お父さん」のような存在で、家族といるような感じで過ごすことができています。
永島 先ほどもお話したように、一番年齢の近い女性スタッフの方はお姉さん的な存在で、あとのおふたりの女性の方は母と年齢が近いので、お母さんのような存在です。
やはり女性にしか相談できないようなこともあるのですが、私から言い出す前に気にかけてくださったり、いつも助けていただいています。男性スタッフの方たちも、普段から「元気か!」とか声を掛けてくださって、みなさん本当に温かいです。
──今日、この取材の場にも、高橋先生が車で送ってくださったとか。まさに保護者のようだなぁと思ったのですが。
永島 そうですね。一番の保護者的存在は先生でした(笑)。
(文中敬称略、明日公開の第4回につづく)