今年に入って、競馬界では不祥事が相次いでいる。中央では厩舎関係者による持続化給付金集団受給問題に加えて、調教師と所属騎手の間で暴行やパワハラの有無が法廷で争われている。
地方の岐阜・笠松では、厩舎関係者が馬券で巨額の利益を上げていた事実が、税務当局の調査で発覚し、競馬法違反の捜査も進行。施行者の岐阜県地方競馬組合(管理者=古田聖人笠松町長)は4月21日、元職を含む調教師、騎手12人を競馬関与禁止または期限つき停止とする処分を発表した。翌22日、地方競馬全国協会(NAR)は現役8人の免許を取り消した。
岩手県競馬では2018年から19年にかけて、実に12頭もの所属馬から禁止薬物のボルデノンが検出された問題で、同県警は事件性を否定する形で捜査を終結したが、根拠となったシナリオを否定するニュアンスの見解が研究機関から示されるなど、疑惑が払拭されたとは言えない状態だ。
一連の問題は、競馬界のガバナンスが深刻な欠陥を抱えていることを示した。それぞれが重大な事態であり、今回は2本(※26日27日連続掲載)に分けて問題の所在を探っていきたい。
笠松 存廃問われる重大局面に
今回の笠松の処分で目を引くのは、不正を知りながら通報しなかった騎手9人(戒告)を含めて、全員の実名が公表された点だ。関心のある向きは組合のホームページを参照されたい。昨年8月で引退した4人(1人は騎手出身調教師)が最も重い「競馬関与禁止」となったほか、現役の調教師3人、騎手5人が5年から6カ月の「関与停止」となった。
また、調教師3人が併せて発覚した所得税の申告漏れについて、「戒告・賞典停止4日」となったほか、馬券購入に手を染めた騎手の所属先調教師9人は「戒告・賞典停止」となり、賞典停止期間は3人が30日、残る6人は20日。停止期間が30日となった調教師1人は、女性騎手や厩務員などへの常習的なセクハラの事実も発覚し、申告漏れと所属騎手の監督責任とは別に、「調教停止90日」の処分も加わり、厩舎貸付けも不承認となる見通しだ。
結局、何らかの処分を受けたのは調教師が12人、騎手が14人。昨年度、笠松所属で出走履歴のあった調教師は21人、騎手は短期免許の1人を除いて19人。ここから昨夏に調教師1人、騎手3人が今回の件で免許不更新の形で引退しており、残る36人から関与禁止・停止者が8人出たのだから、もはや存続の危機にほかならない。
▲全員の実名を公表、重大局面を迎えた笠松競馬 (C)netkeiba.com
本格調査は申告漏れ発覚後
問題は、事態を大きく動かしたのが国税当局だった点だ。昨夏に4人が引退したのは、先立つ6月20日に警察が家宅捜索を行ったためだが、組合側はその後、特別な措置をとらないまま年を越した。だが、1月中旬に名古屋国税局が今回の件で約20人に3億円を超える申告漏れを指摘していた事実が伝わると、ドタバタと動き出し、弁護士と税理士2人ずつの計4人で構成する第三者委員会を設置。本格的な調査に乗り出した。