血統構成からも引退後の期待が大きいダノンキングリー
先週の血統ピックアップ
・6/6 安田記念(GI・東京・芝1600m)
中団を追走したダノンキングリーが直線で大外から伸び、内を突いたグランアレグリアの追撃をアタマ差しのいでGI初制覇をなしとげました。7ヵ月ぶりの実戦で、休養前は7着、12着と掲示板を外しており、ここは14頭立ての8番人気(単勝47.6倍)でした。3歳から4歳前半にかけて芝1800mで3戦全勝とパーフェクトの成績を残し、マイル戦は1ハロン短い印象もあったのですが、ディープインパクト産駒の牡馬は年齢を重ねると、距離適性が母方の特徴に寄る傾向が見られるので、ひょっとしたら現状はマイル戦がベストなのかもしれません。
2代母カレシングは米2歳牝馬チャンピオンで、母マイグッドネスはウェストコースト(米G1トラヴァーズS)の半姉という良血。母は繁殖牝馬として優秀で、マッチョウノを父に持つダノンレジェンドはJBCスプリントなどダート短距離重賞9勝し、ダートのスピード型種牡馬として成功しています。「ディープインパクト×ストームキャット」は、キズナ、アユサン、ラキシス、リアルスティール、エイシンヒカリ、ラヴズオンリーユー、サトノアラジン、スタディオブマン、そして本馬と、国内外で9頭目のGIホースとなります。前述のとおり半兄ダノンレジェンドが種牡馬として好成績を挙げており、なおかつ血統構成もおもしろいので、本馬も引退後に大きな期待が掛けられます。
・6/5 鳴尾記念(GIII・中京・芝2000m)
超スローペースで逃げたユニコーンライオンが最後の直線で後続を突き放し、初の重賞タイトルを獲得しました。前後半1000mのラップが62秒9ー57秒8。その差5秒1という記録的な後傾ラップとなり、逃げたユニコーンライオンが1着、2番手につけたショウナンバルディが2着という、位置取りだけの競馬となりました。坂井瑠星騎手の手綱さばきが光ったレースです。モルニ賞(仏G1・芝1200m)、コヴェントリーS(英G2・芝6ハロン)を勝って仏2歳牡馬チャンピオンとなったザワウシグナル(父スタースパングルドバナー)の半弟。
父ノーネイネヴァーは名種牡馬スキャットダディの後継種牡馬で、現役時代にモルニ賞(仏G1)など重賞を3勝し、種牡馬としても成功しています。産駒はスピード型で早熟傾向が見て取れますが、本馬は母の父がスタミナと成長力に定評のあるハイシャパラル。このあたりが弱点を補っているものと思われます。これまでの成績を見ると洋芝や直線平坦コースでより力を発揮しているので、北海道シリーズへ転戦するなら目が離せません。
今週の血統注目馬は?
・6/13 十勝岳特別(1勝クラス・札幌・芝1800m)
札幌芝1800mと相性のいい種牡馬はディープインパクト。連対率32.4%は2011年以降、当コースで産駒が20走以上した27頭の種牡馬のなかで第1位。2位キングカメハメハに3ポイントの大差をつけています。当レースにはパイネが登録しています。まだ未勝利馬ですが、ダービー馬ワグネリアンの全妹にあたる良血で、2、3走前に連続3着しているように1勝クラスでも差はありません。
今週の血統Tips
6月4日、スノーフォールが英オークスを制覇したニュースは、ディープインパクト産駒であることに加え、英オークス史上最大着差となる「16馬身差」で圧勝した点も衝撃的でした。これまでの記録は1983年のSun Princessが記録した12馬身差。それを更新し、なおかつ英クラシック史上の最大着差である20馬身差(1859年の英1000ギニーでMayonaiseが記録)に迫るものでした。2歳時は7戦1勝と目立たなかったのですが、2歳シーズンが終わって3歳シーズンが開幕するまでに大きく成長し、なおかつ距離延長が吉と出たのでしょう。
ディープインパクト産駒はヨーロッパのクラシックレースで通算5勝目。欧米以外で繋養される種牡馬としては空前絶後の記録です。イギリスのクラシックホースは2018年の英2000ギニー馬サクソンウォリアーに次いで2頭目。同馬とスノーフォールはクールモアグループの所有馬なので、母の父はいずれも同グループのエース種牡馬ガリレオです。ディープインパクトは、母方の血によって、日本とヨーロッパ双方の活躍馬を出せる高い汎用性があり、それこそが同馬の卓越した能力といえるでしょう。ガリレオは英愛リーディングサイアー12回の大種牡馬ですが、産駒は日本で38頭出走して重賞では一度も馬券圏内に入ったことがありません。