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【安田記念】スピードに乗り切ってから…馬の動きに逆らわない川田将雅騎手の追い方

  • 2021年06月08日(火) 18時00分
哲三の眼

初コンビのダノンキングリーと安田記念を制した川田将雅騎手 (撮影:下野雄規)


安田記念は8番人気のダノンキングリーが勝利、悲願の初GI制覇を果たしました。哲三氏は「正直、びっくりなレース結果」と明かすも、その内容を絶賛。今回初コンビとなった川田将雅騎手の“無駄がない”騎乗や一見豪快に見えるフォームについて解説します。

(構成=赤見千尋)

「いいポジション」で出来ていたレース


 安田記念は8番人気ダノンキングリーが悲願の初GI制覇でした。初コンビだった川田(将雅)君の騎乗は一言で言うと巧かったなと。正直、びっくりなレース結果でしたが、川田君の良さがしっかり馬に伝わって、とてもいいレースだったと思います。レース後にじっくりとVTRを見直すと、いいポジションでレースが出来ていて、今年の高松宮記念(ダノンスマッシュで勝利)や中京競馬場で行われた京都新聞杯(レッドジェネシスで勝利)のレースとなんとなく似ているなと感じました。

 京都新聞杯のレース後コメントで、いろいろな状況判断からポジションを取りに行かずにレースをしたというニュアンスのことを話していました。川田君のレーススタイルの中で、基本の意識がちょっと違うというか、意識していいポジションを取りに行くというより、取ろうとし過ぎずに取っているように思います。

 「いいポジション」というのは前の方に行くことだけではなくて、中団・後方の中でもいいポジション、その馬の競馬が組み立てやすくなるポジションがあって、今回はそこにしっかりハマったなと。

哲三の眼

口取り式でのダノンキングリーの様子 (撮影:下野雄規)


 これまでダノンキングリーには戸崎(圭太)君と(横山)典さんという2人のトップジョッキーが乗ってきて、それぞれがこの馬を良くしたい、この馬にとっていいことをしてあげたいと、前に行ったり中団だったり後ろからだったり、いろいろな戦術を取ってきました。初騎乗だった川田君は戦術は違いますが、2人のジョッキーが模索してきたいいところを取ったというか、前に行き過ぎず、後ろに下げ過ぎず、真ん中を狙って乗っているんだなと感じました。

いかにトップスピードを持続させるかが重要


 そして、乗り方に無駄がないんですよね。「無駄がない」というと、ペースを落とすということも無駄をなくすことだと考える人もいるかもしれませんが、僕はいかにトップスピードを持続させるかが重要だと考えていて。今回のレースの中で、ダノンキングリーが一番長くいい脚を使っているわけです。

 スピードに乗り切ってから手綱の持ち替えをしていて、その時の拳の使い方が、馬の前に行こうとする筋肉の動きにまったく逆らっていない。実に川田君らしい追い方だなと思います。もちろんスピードに乗せる途中で手綱を持ち替えることが有効な場合もありますが、今回の場面では僕はスピードに乗り切ってからの方がいいと考えていて、そういうところも無駄がない騎乗だなと。

哲三の眼

「実に川田君らしい追い方」と話す哲三氏 (撮影:下野雄規)


 川田君の騎乗フォームは豪快に乗っているように見えますが、トップスピードに乗せる時、馬の後ろ脚から背中を使えて、前も出しやすくしている。例えていうなら、ちょこんと乗らないんです。ちょこんと乗ることがいい馬、いい場面もありますが、僕は川田君のように上でしっかりと土台を作ってあげる乗り方が好きですね。

 上位4頭は大接戦で、ゴール前の写真はそれぞれのジョッキーの追い方の個性が出ていて面白かったです。グランアレグリアはレース前から展開的に厳しいかなと思っていて、やっぱり厳しくなって内に行かざるを得なかったけれど、それでもあそこまで来たのはさすがだなと感じました。

 3着だったシュネルマイスターの(横山)武史君は、3コーナーくらいのペースが落ち着くところをどう乗り切るか難しいのではないかと思っていましたが、そこを上手く乗り切っていて、改めて巧いなと。上位3頭以外もそれぞれの良さを引き出しつつの騎乗で、見ごたえのある安田記念でした。

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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