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仏ダービー快勝セントマークスバシリカ 欧州10F路線で古馬に挑むか

  • 2021年06月09日(水) 12時00分

エクリプスSで待ち受けるミシュリフ


 欧州で3日間に4つのG1が行われただけでなく、北米でも5日にベルモントパークで8つのG1が組まれる開催が行われるという、超豪華な週末が終わった。

 白眉は言うまでもなく、G1英オークス(芝12F6y)で日本産ディープインパクト産駒のスノーフォール(牝3)が見せた驚異のパフォーマンスで、シーズン後半の欧州12F路線において同馬が、3歳世代の旗頭を務めることになるのは、ほぼ間違いなさそうである。

 同様に、欧州10F路線においては今後、6日にシャンティイで行われた仏国版ダービーのG1ジョッケクルブ賞(芝2100m)を快勝したセントマークスバシリカ(牡3、父シユーニ)が、3歳世代を代表する存在になりそうである。

 愛国のエイダン・オブライエンが管理するセントマークスバシリカだが、生まれたのは仏国だ。同馬は母キャバレーの7番仔となるが、キャバレーの初仔から5番仔は全て愛国産馬である。仏国供用馬シユーニを種付けするため、キャバレーは2017年の種付けシーズンを前にして仏国に移動したため、セントマークスバシリカの1歳年上の半姉コアラ(父コディアック)は、仏国で生まれている。

 さらに、セントマークスバシリカの1歳年下の弟も父シユーニで、すなわち、キャバレーはもう1年仏国に留まったため、2018年生まれのセントマークスバシリカも仏国産馬となったのである。

 昨年7月26日にカラのメイドン(芝6F)でデビューし、2着に敗れたにもかかわらず、次走はカラのG1フェニックスS(芝6F)に挑んでいるから、厩舎での期待は早くから高かったことがうかがえる。

 そのフェニックスSで5着に敗れた後、8月22日にカラで行われたメイドン(芝6F)で初勝利を挙げると、再びG1戦線に舞い戻り、愛国における2歳チャンピオン決定戦的位置付けにあるG1ヴィンセントオブライエンナショナルS(芝7F)に出走して3着に健闘。2歳最終戦となったのが、初めての遠征競馬となったニューマーケットのG1デューハーストS(芝7F)で、セントマークスバシリカはこのレースを快勝。

 このパフォーマンスでレイティング120を獲得し、ヨーロピアンランキング2歳部門で首位に立った。今季初戦となったのが、5月16日にパリロンシャンで行われた仏国版2000ギニーのG1プールデッセデプーラン(芝1600m)で、ここを白星で通過した後に臨んだのが、6日のG1ジョッケクルブ賞だった。

 母キャバレーはレパーズタウンのG3シルヴァーフラッシュS(芝7F)勝ち馬で、半兄マグナグレシア(父インヴィンシブルスピリット)はG1英2000ギニー(芝8F)を含むマイルG1・2勝馬。

 そして、叔父ドラムファイア(父デインヒルダンサー)はサンダウンのG3ソラリオS(芝7F)勝ち馬と、セントマークスバシリカの牝系には7〜8Fを活躍の場としていた馬たちが多く、2100mの距離をこなせるかどうかが、G1ジョッケクルブ賞における最大のポイントと見られていた。結論から言えば、同馬は500mの距離延長を易々と克服。仏国3歳2冠を勝ち取ったのである。

 セントマークスバシリカはここまで4勝を挙げているが、それぞれのレースにおける馬場状態を英語表記にすると、Soft, Soft,Very Soft, Softとなる。

 すなわち、道悪でしか勝っていないのだ。良馬場で、時計の速い決着になった時、果たして対応できるのか?

 周囲から訝る声も挙がっているが、そんな懸念を一蹴するのがエイダン・オブライエン師だ。

「彼のアクションを見れば一目瞭然、彼は良馬場でこそ真価が発揮される馬です。良馬場なら、パフォーマンスはもっと上がります」と、きっぱり断言している。

 仏ダービーの結果を受けてブックメーカー各社は同馬を、G1凱旋門賞(芝2400m)の前売りで上位人気に浮上させたが、どうやら、セントマークスバシリカは今後、10F(2000m)路線を歩むことになりそうだ。

 というのも、同馬の次走についてオブライエン師は、7月3日にサンダウン競馬場で行われるG1エクリプスS(芝9F209y)を、“Strong possibility(おおいに可能性あり)”とコメントしたのである。調教師の言葉通りになれば、4週間後には早くも、セントマークスバシリカは10F路線における世代間を越えた戦いに挑むことになる。

 そして、そこに待ち受ける古馬の代表格が、1歳年上の仏ダービー優勝馬ミシュリフ(牡4)だ。

 今季ここまでのミシュリフの活躍は、競馬ファンの皆様には改めてご説明するまでもないかもしれない。初戦となったのが、2月20日にリヤドのキングアブドゥルアジーズで行われたサウジC(d1800m)で、北米や日本を代表するダートホースたちを相手に快勝。

 3月27日のドバイワールドCナイトでは再び芝に転じ、クロノジェネシス(牝5)、ラヴズオンリーユー(牝5)という、日本が誇るこの路線の精鋭に競り勝って優勝と、無双ぶりを発揮している。

 前走後は休養に入っているミシュリフは、6月15日からのロイヤルアスコットには登録すらせず、復帰戦の矛先をG1エクリプスSに絞っている。

 エクリプスSの過去10年を振り返ると、15年のゴールデンホーン、16年のホークビル、18年のロアリングライオンと、3歳馬の優勝が3度ある。

 4歳以上の牡馬・セン馬の負担重量が9ストーン7ポンド(約60.3キロ)であるのに対し、3歳牡馬・セン馬の負担重量は8ストーン11ポンド(約55.8キロ)と、4.5キロの差があり、力のある3歳馬なら古馬と充分に戦えるのである。

 エクリプスSのスポンサーであるコーラルは現段階で、ミシュリフに3.75倍、セントマークスバシリカに4.5倍というオッズを提示している。7月3日のG1エクリプスSも、絶対に見逃せない戦いになりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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