競馬の世界にも影響を及ぼすロックダウン条件緩和の延期
ロイヤルアスコット開催は特例で1万2千人を動員
英国のボリス・ジョンソン首相は14日、6月21日に設定していたロックダウンの条件緩和を4週間延期し、7月19日とすることを発表した。
英国における14日の新規感染者は7742人で、1か月前の1日あたり千人から二千人の水準から大幅に増加。しかも、新規感染者の9割が、従来型より感染力が強いデルタ型(インド型)に感染していることが明らかになっており、現段階でロックダウンの基準を緩めるのは時期尚早との結論に至ったものだ。
ジョンソン首相が自ら「フリーダム・デー」と名付けているロックダウン緩和日の4週間延期は、当然のことながら、競馬の世界にも影響を及ぼす。
今週開催されている「英国競馬の華」ロイヤルアスコット(6月15日~19日)は、1日あたり1万2千人を動員して開催されているが、これは特例で、競馬に限らず屋外スポーツに関しては、「4千人」もしくは「キャパシティの25%」が集客の上限となっている。実際に、6月初めにエプソムダウンズで開催されたG1英オークスやG1英ダービーは、4千人のファンを動員しての開催だった。
6月21日に条件が緩和されれば、7月3日にサンダウンで行われるG1エクリプスS、7月8日から10日までニューマーケットで行われるジュライ開催などは、1日1万人を動員する予定だったのだが、残念ながら目論見は潰えることになった。
政府の決定に、統括団体のBHAは「規制緩和の延期は、理解できることではあるが、極めて残念である」との声明を発表。同時に「40億ポンドの規模を誇る競馬産業にとって、好ましくない状況が続いている」として、政府に対して助成金の上積みを働きかける方針を明らかにしている。
BHAは、緩和の4週間延期が競馬場の経営者に与える経済的損失を、1500万ポンド(約23億8365万円)から2000万ポンド(約31億7820万円)と試算。競馬産業は現在、政府のウィンター・サバイバル・ファンドから2100万ポンドの助成を受けるべく交渉中だが、今後は、スポーツ・サバイバル・ファンドからの資金援助を求めて、働きかけを強める予定だ。
「集客が制限される」というのは、競馬開催の運営はもとより、競走馬の流通を担うせり市場の運営にも、極めて大きな影を落としている。
14日(月曜日)には、現役馬が上場される「ゴフス・ロンドンセール」が開催されたが、ライヴでの実施は断念し、オンラインでの施行となった。昨年は中止に追い込まれたので、2年ぶりの開催となったわけだが、結果を記すと、カタログ記載が13頭で、このうち2頭が欠場。上場された11頭のうち、売買は成立したのは3頭のみという、極めて低調なマーケットに終わった。
ロンドンセールと言えば、ケンジントン・パレスの緑豊かな庭が開催場所であることが特徴であり、「売り」になっているセールである。オンライン開催では、マーケットとしての魅力を失ってしまうことを、如実に表す結果となった。
その一方で、ライヴで開催され、大盛況に終わったのが、6月9日から11日まで、北米フロリダ州のオカラで開催された、OBSジューン2歳セールだった。3日間で、560頭の2歳馬が総額2449万ドルで購買されたが、これは2015年にマークした2361万ドルを上回る、このセールとしての歴代最高額だったのだ。平均価格4万3737ドルも、2015年の3万9612ドルを大幅に上回る新記録で、中間価格の2万ドルも歴代最高タイであった。
北米では、7月に入るとイヤリングセールの季節を迎えるが、ここも好景気が予測されている。
欧州でも、8月に仏国のドーヴィルで開催されるアルカナ・オーガスト1歳セールを皮切りに、各国でイヤリングセールの開催が予定されているが、それまでに、渡航制限をはじめとした各種規制がどこまで緩和されるかが、大きな焦点となっている。