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【父の日】“俺が1番だぞ!” 種牡馬キズナはイケイケ父ちゃん!?

  • 2021年06月20日(日) 12時01分
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種牡馬生活を送るキズナ(提供:社台スタリオンステーション)


今日は父の日! 2013年のダービー馬キズナは現役を引退し現在は“お父さん”として活躍しています。初年度産駒が早々と重賞を制覇(ビアンフェ・19年函館2歳S)したかと思えば、その後もクラシックやGI戦線で活躍する様々なタイプの馬を多く送り出しています。今年でお父さん5年目を迎えたキズナの現在を社台スタリオンステーションの三輪圭祐さんにお話を伺いました。

(取材・文=佐々木祥恵)

※このインタビューは電話取材で行いました

スタッドイン当初から漂っていた王者の風格


 社台スタリオンステーションの三輪圭祐さんにインタビューする前日、キズナの子・ビアンフェが函館SSに優勝した。この馬のように短距離で良績を残すタイプだけではなく、長距離やダート戦で活躍する馬が登場するなど、キズナ産駒は実に多彩だ。

「初年度から2歳のダート重賞を勝つ馬も出ましたし、芝の王道路線を歩む馬もいます。牡牝、性別問わず走りますし、冬場でダート競馬が多い未勝利戦も結構勝ち上がっています。脚質を見ても、先行力のある馬が多くて、逃げて強い競馬をする馬もいますね」(三輪圭祐さん)

 この先行力やスピードは、北米2歳チャンピオンに輝いた母父ストームキャットから受け継いだと思われる。

「特に早い時期の2歳戦では、小回りコースでの先行力やスピードが求められますから」

 またファインルージュのように鋭く差してくる馬や、ディープインパクトらしい距離が延びてタフな末脚を生かす競馬をする馬もいる。

「いろいろなタイプの繁殖牝馬に配合したこともあり、相手の牝馬の特性に寄せつつ、自分の持っている良いところをうまく出す柔軟性のある種牡馬だと思います。馬場状態も問いませんし、馬群に包まれても問題ないですね。アタマ差、ハナ差で凌ぎ切る馬も多いですし、勝負根性もあります」

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キズナは柔軟性のある種牡馬(ユーザー提供:エリーさん)


 さらに日高地区の生産馬の活躍が目立つのも特徴だ。仕事柄、日高の生産牧場とも関わりの深い三輪さんにとってもそれは嬉しいことのようだ。 

 そのキズナは2016年シーズンから種牡馬生活を始めたが、当初から王者の風格が備わっていたという。

「はじめから、俺が1番だぞというオーラをまとっていました。ウチにいる他のいかつい種馬たちが顔を揃える中に入ってきても、動じないといいますか、自分というものをブレずにちゃんと持っていて、胸を張って歩くという感じがありました。キズナは、キングカメハメハやマンハッタンカフェなどリーディングサイアーも手掛けていた主任(筒井裕司さん)が担当なのですが、ウチに入場して1日、2日くらいで、“産駒がすごく走りそうだ、トップになるんじゃないか”という話をしていたんですよ。名種牡馬に接してきた人だけが感じる匂いというか感覚があったみたいですね」

 2年目になると、前年より風格がさらに増した。

「俺が1番だぞというのがより顕著になりました。例えば海外から視察に来た方にこの馬がウチの1番だと言っても、誰も否定しないと言いますか、多分そう見えるようなふるまいをします。日頃からそのくらいギラギラしたオーラがありますね。はじめはやはり子供っぽい感じで来る馬が多いので、普通はだんだん種牡馬らしくなっていくものなんです。でもキズナに関しては、最初から王様感がありました。黒くてかっこいいというのもありますけど、周りに対する威圧感が本当にあります。野生なら大きな群れをつくりそうな、そんな馬だと思います」

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ギラギラしたオーラで王様感がある(提供:社台スタリオンステーション)


 人間に対してもそれは同じだ。

「誰でも扱える馬ではないですね。種牡馬に関しては特にそれがありますし、“俺に見合った人”ではないですけど、キズナに関しては本当にそういうものを感じます。ただうまく懐に入って良い関係を作ると、すごく扱いやすい面はあるようです」

 父ディープインパクトと比べるとどうなのだろう。

「ちょっとした動作といいますか身のこなしには近いものを感じますけど、キズナの方がパワフルなので、そっくりというわけではないですね。顔立ちも似ているなと思うこともあるのですが、動いていない時はそんなに似ているとは感じないです。どちらかというと、写真で見るストームキャットの立ち姿にどんどん近づいている感じはしますね」

 ちなみにディープインパクトは、三輪さんの目には「好青年というイメージを保ち続けていて、おじさん化しなくて、ずっとシャープでかっこいい馬」というふうに映っていた。だがキズナは「自己主張が強く、イケイケ、ギラギラ」に見えるそうだ。 

“王様”キズナの1番の楽しみは…


 種付けシーズンも終盤の現在は、種付けの予定が入っていない日もある。だがシーズン中は早朝に放牧に出て、その間、スタッフが馬房の清掃をはじめひと通りの厩舎作業を行う。それが済んだら馬房に戻り、朝の種付けに備える。

「1日最大3頭の種付けを行いますが、あまり無理をしないように基本は2頭です。朝の種付けを終えると、馬房で休んで昼の2回目に備えます。それが終わると手入れをしたり、背腰に出た張りに対してのケアを獣医師にしてもらったりして、もし夕方に種付けがある場合はそれをこなします」

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競走馬のお父さんも忙しい日々を過ごしている(提供:社台スタリオンステーション)


 受胎率が良いのも、キズナの長所だ。

「ですから1回目不受胎で、2回目の種付けに来るという繁殖牝馬がとても少ないのです。繁殖能力や競争、喧嘩がとても強いのではないかと思いますし、野性味があって動物としても強く感じます」

 シーズンオフになると、また少しスケジュールが変わる。

「キズナに限らず、オフの夏場から秋口はシーズン中の疲れを癒す感じです。朝放牧して、放牧時間を長く取る場合もありますが、外にいるのが辛そうな時には、早々に馬房に引き上げて午後の飼い葉や手入れをするという期間を過ごします」

 加齢に対するケアもしている。

「年は取っていますから、加齢に負けないでいつまでも若く、体にウイークポイントが出ないよう様々なプログラムを組んで、次の年に向けた時間を過ごしています」
 
 最後にキズナが楽しみにしていると感じることについて質問してみた。

「やはりご飯の時間が1番の楽しみでしょうね。あとは種付けに向かう時は、かなり意欲的です。荒々しくて、キズナを連れてくるスタッフがなだめながらで大変そうですけど、本能には従順な感じがします。アプローチの仕方がうまく魅力もあるのか、キズナが来ると牝馬も発情の兆候を見せて、種付けもうまくいきますね」

 三輪さん曰く「繁殖牝馬の特性を引き出し、自らが持つマルチな才能を産駒に伝えている」というキズナ。今後もバラエティに富んだ子供たちを送り出し、ファンを楽しませてくれる偉大な父として君臨していきそうだ。

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